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079★バケモノの正体?
しおりを挟む完全にバケモノが食べきられたのを視認し、ジオンは裂けた空間に手の平を向けて、ほんの少し前に呪縛から解放されて、いまだほとんど魔力や神力の戻らない状態に舌打ちしながら、空間の補修を大急ぎで行う。
「ジオン?」
疑問符付きの呼び掛けに、ジオンは振り返らずに答える。
「シア、そのまま少しの間
神殿の中で待っていてくれ
今、ここを閉じるから………
きっちり補修しておかないと
ああいう彷徨いしバケモノ達が
世界の空間の狭間を見付けて………
次々と出現してくるからな
アレはこの世界のモンじゃない
その魂魄が穢れ堕ち過ぎて
それぞれの世界の許容から外れ
数多ある世界の全てから外れ
異物として、はじき出されたモノの
なれの果ての姿だ
アレは、異界のどこにも属さない
数多の世界の狭間を彷徨うモンだ
こういう世界の亀裂を見付けては
侵入してくる
アレが大量に、世界に雪崩れ込むと
その世界の境界が破壊されて
侵入された世界は崩壊する
そうすると、その世界の魂魄を含む
ありとあらゆるモノが吸収されつくし
魂魄達は、転生すら叶わず
あのバケモノと同化して
数多の世界の狭間を
あいつらと一緒に彷徨うコトになる
ただ、今回のバケモノは
解体した神子から誕生した
そいつらに喰らわれたから
一時的にでも
この世界に同化するだろう
その間に転生できるのは………
侵入したバケモノに呑まれた
他の世界の魂魄達だけだ
世界の全てからはじき出された
バケモノ本体は、侵入した先で
いままで同化吸収したモノが
全て消えれば
再び、数多の世界の狭間へと
強制的に除還(じょかん)される
指針を失ったバケモノには
どんな世界も見えないようだからな」
そう言う間に、空間に出来た歪みと空間の裂け目はジオンの手によって修復されていた。
それを見て、ライムはジオンに問いかける。
「ジオン、力の強い貴方が
素直に他のやつらに易々と
封印されていた理由って
ソレ?」
ライムの問いかけに、ジオンは剣を鞘に納め、シアの元へと戻りながらに頷く。
「ああ……俺達はやり過ぎたんだ
まさか、世界の境界が捻じれ裂け
穢れしバケモノが彷徨っている
虚無の狭間が覗けるほどになるとは
誰も予想していなかったからな
あいつらも、さぞ胆(きも)を
冷やしきっただろうよ
俺だって、アレを見た瞬間
勘弁してくれって思ったぞ
だから、神子から誕生した神獣を
大慌てで封印に使ったんだ
勿論、あいつらは俺を陥れて
力と声の全てを封印し
俺本体の力を使って
狭間を彷徨うバケモノから
亀裂を見えなくする盾とした
それでも足りない分を補い
修復材料にする為に
一定以上の力や能力を持つ
冒険者やハンターを呼び寄せる
ダンジョンを幾つか作ったんだろうよ
この世界に走らせてしまった
時空間の亀裂の修復に使う為にな
また、本来ならば
あの時空間の亀裂が
完全に消失しなければ
俺の解放はあり得なかった
ただ、1番力のある俺を
封印して盾にするには
対価の条件が必要だった
あいつらの力では
格上の俺を封印して使うには
対価の条件を込めなければ
俺を空間補修の道具(盾)として
使えなかったんだろうな
ただ、全ての条件が揃わなければ
俺の解放はされない呪術だった
はずなんだけどなぁ………
まさか、全部揃うなんてなぁ………
流石のあいつらも
想像すらしてなかっただろうな
自分で言うのもなんだが
俺の持っていた力は
あいつら全員より上だったからな
相応の対価を誓約したはずだ
何を対価にしたかは知らないけどな
だから、今頃、あいつらは対価を
毟(むし)られているだろうよ
たとえあいつらがどこにいても
どのような状態でも
かならず対価はとられる
あいつらに、誓約なしでの封印は
とうてい無理だったからな」
そう言いながら、ジオンは嘆息する。
「ただし、俺を呪縛する呪術は
あのバケモノを呼び込むほど
おぞましい禁忌なモノだった
世界の境界をたやすく踏み越える
淀みと穢れを生むような………
だから、魔晶石(=凝縮)にした途端
その匂い?に惹(ひ)かれて
その黒き淀みを指針として
微かに歪んだ空間の狭間を
力づくで捻じ曲げて
認識できたこの世界の境界を
引き裂いて現れたんだ
そのおぞましい力を秘めた
淀みを含んだ魔晶石を喰らう為にな
もっとも、もうおぞましいほどの
淀みは浄化されたから
それを道標(みちしるべ)に
この世界を見付けて
干渉するコトはできないだろうがな」
ジオンの言葉に、シアは小首を傾げて聞く。
「どうして干渉できないって
ジオンは断言できるの?」
シアの純粋な質問に、ジオンは肩を再び竦めて答える。
「数多の世界の狭間を彷徨う
あのバケモノ達は
世界からはじき出された時から
世界というモノが見えないんだ
そういう呪いのようなモノを
穢れ堕ちた魂に刻印されている
その〔呪印〕から解放される術は無い
と、言われていたが………」
神殿内にいるシアとライムの隣りに到着したジオンは、ひとつ大きく嘆息する。
「言われていたって過去形ってコトは
あのバケモノに対して、なにか
新たな事実が出てきたってコトかしら?」
ジオンの隣りをトテトテと歩いて付いて来たコウちゃんとガッちゃんを抱き上げながらそう言うライムに、ジオンは生真面目な表情で頷く。
「ああ、微かなモノでも
自分達と同質に近い
おぞましい穢れを
あいつらは敏感に感知する
俺を呪縛していた呪鎖(じゅさ)は
かなり質が近かったんだろうな
封印の水晶柱から出て
俺から引っぺがして固めたら
バケモノが出現したからな
他に、あのバケモノが世界に
干渉できる術は………
あのバケモノの全てを許し
世界へと還元する存在が
どこかの世界に誕生すると
救いが出現した世界へと
侵入出来るようだな
その存在(救い)が
どの世界に現れるかは
流石に、俺達にも判らないがな
ふむ……俺を封印したあいつらは
どうやら、もうこの世界には
居ないようだ
こうして、呪縛から解放されても
俺の感覚に、ひとカケラも
あいつらを感じないからな
ただ、それは……下手したら……
禁忌に触れたが故に………
穢れ堕ちてバケモノになって
世界の狭間を彷徨っているって
可能性もなきしにもあらずだけどな
まぁ…この神殿を創ったやつらは
穢れ堕ちては居ないと思うがな……
そういうモノを感じないからな」
そう言いながら、神殿内に入り、周囲を見回すジオンは、さりげなくシアの腰を抱いていたりする。
勿論、その動作は全て無意識である。
また抱き寄せられるように腰を抱かれたシア自身も、不自然を感じさせないジオンの行動に、なんの疑問も持たずにいる。
当然、シアの安全としあわせしか興味のないフリードも気にしていない。
ただ、それを外から見るコトになったライムと、その肩に飛び乗ったコウちゃんとガッちゃんコンビが、呆れていたのは確かなコトだったりする。
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