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062★冒険者ギルドで、冒険者登録しました

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 深紅の髪の青年に、藍白の髪の獣人の男の子をグランツ団長に買ってもらったシアは、どちらとも隷属の誓約という呪術が成立した為、その足で冒険者ギルドへと向かった。

 「これから行くのは冒険者ギルドだ
  そこで、嬢ちゃんは冒険者登録する
  もちろん、この2人も一緒にだ」

 前をイリスと共に歩くグランツ団長の言葉に、シアは嬉しそうに笑って言う。

 「はい、ありがとうございます」  

 そんなシアに、イリスが端的に言う。

 「とりあえず、冒険者登録したら
  シアが奴隷従者2人を連れて
  安心安全で泊まれる宿屋までは
  連れてってやる」

 すっかり男言葉が身に付いてしまったイリスは、ワンピース姿を気恥ずかしいと思いながらも、グランツ団長と連れ立って歩ける嬉しさにウキウキしていたりする。

 (なんか、本当に歳の離れた
  お兄ちゃん達や従兄弟達を
  思い出すなぁ‥‥‥)

 かなり奥手な従兄弟の初デートに、何故か付き合わされた前世の時の記憶を思い出して、シアは袈裟懸けに掛けた上で抱っこしている繭を見て囁く。

 「もう少しだけ待っていてね
  2人と別れたら‥‥‥
  どこか静かなところで‥‥‥
  藍白の子と合体させてあげる

  だって、この子には‥‥‥
  もう個というこころを現す
  魂が存在していないから‥‥‥」

 {うん‥‥まま‥‥待っている‥}

 脳裏の中に響く小さな声に、シアはクスッと笑ってから、斜め後ろにびったりと付いて歩く、深紅の髪の青年を見上げる。
 そして、シアを先導しながら、何かを話しつつ歩いている2人から半歩だけ下がって、小声で言う。

 「ねぇ‥‥‥間違いじゃなければ
  ジオン・ヘザーよね

  貴方のコトを、これからジオンって
  呼んでも良いかしら?」

 シアの問い掛けに、ジオンと呼び掛けられた深紅の髪の青年は微かに頷く。

 (ジオン呼びの了承はもらったけど
  彼って喋れないのかな?

  あの水晶柱の中にあった幻影?って
  彼の精神とか力とかその他モロモロを

  身体から強制的に分離して
  閉じ込めるモノだったのかなぁ?

  あの、頭の天辺からつま先まで
  全身を覆う透ける呪文の鎖って
  どうやったら外せるのかな?

  アレが、ジオンの全てを
  拘束しているのかな?

  もし外れたら、ジオンは何かを
  喋ってくれるかな?

  どんな声なんだろう?

  確か、ジオン・ヘザーって
  本編のレイパレと外伝共通の
  幻の攻略対象者だったわよね)

 などと思っている間に、どうやら冒険者ギルドに到着したようだった。

 「シア、ここが冒険者ギルドだ」

 イリスに言われて、コクコクと頷く。

 「ほら、さっさと入って手続きするぞ」

 グランツ団長にそう呼び掛けられて、シアはその後に付いて行く。

 (冒険者ギルドは、ゲーム内通りね)

 キョロキョロするシアに、イリスは溜息を付いてその手を引く。
 一瞬だけ、深紅の髪の青年がピクッとしたが、それ以上の反応が無いコトにホッとしつつ、イリスはシアの手を引いて、グランツ団長の後にに続き、新人冒険者の登録場へと向かう。

 本来は、一応冒険者になる為の試験があるのだが‥‥‥。

 深紅の髪の青年と、藍白の髪の獣人の少年が、とてつもなく強かったので、そのまま新人冒険者として登録できたのだ。

 そう、シアが隷属の輪を持つ2人の奴隷の主人だから‥‥‥。

 ちなみに、深紅の髪の青年をジオンで登録し、藍白の獣人の少年をフリードという名前で登録したのだった。
 もちろん、実際のフリードという名は、繭の中のモノに名付けたモノではあったけれど、融合させた時のコトを考えて、ソレで登録したのだった。

 シアと奴隷2人の登録を、冒険者ギルドですませた後、グランツ団長は3人を宿屋へと連れてきていた。

 「んじゃ、嬢ちゃんここで‥‥‥
  なんかあったら、来いよ」

 「そうだぞ、シア
  困ったコトがあったら言いに来い
  これも何かの縁だからな

  あと、冒険者ギルドで登録した時に
  手渡された腕輪で、買い物ができる

  教えた通り、それで当座の生活に
  必要なモノを買えるはずだ」

 そう言って、当座の宿屋代1ヵ月分を支払い、グランツ団長はイリスを伴って、街中へと消えたのだった。

 ちなみに、もらった皮袋に入っていた金貨は、冒険者ギルドでランク表示される冒険者証明の腕輪の中へと入金されていた。
 そのお蔭で、シアはこの世界の貨幣のレートは、全然わからないままだったりする。










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