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004★ちょっと待ってよ‥‥‥
しおりを挟む着替えを済ませて、お父様の執務室へと来た私は、ひとつ深呼吸してからノックをする。
中から入室許可があり、私は冷めたこころのまま執務室へと入った。
「階段から落ちたそうだな
まったく、第1王子との
婚約パーティーを3日後に
控えているというのに‥‥‥」
と、開口一番の叱責に、私の中にあったセシリアのお父様への思慕が淡雪のように消え、嵐吹き荒ぶ氷原がパキパキと広がって行く。
いたわりというモノひとつ無い、ただのひと言『身体は大丈夫か?』の言葉も無い、目の前の男を、私はこの瞬間、家族という概念から完全に排除した。
そして、記憶の中から、父親という項目が削除され、血統上の繋がりがあるだけの者という定義へと、放り込まれる。
(やっぱり、正確な報告は
されていなかったようね
いや、それをわかっていて
あの性悪女狐は、この私を
階段から突き落としたのね
お前の連れて来た性悪な
最低最悪なクズ女が
私を階段の最上段から
突き飛ばしたんだよ)
こころの中でそう呟きながら、私は無表情のまま謝る。
「すみません、お父様
私の不注意です
少し殿下との正式な婚約に
浮かれていたようです」
今までの、ヒューズ殿下をただただ一方的に慕う私を演じながら、私は自分の立場を改めて思い知る。
(‥‥‥じゃなくて
こころン中で、あのクズ女と
このゴミ男をディスっている
場合じゃないわね
3日後に婚約パーティーって
コトは、私は4日も気絶‥‥‥
もとい昏睡していたって
コトじゃないの‥‥‥
どうりで、喉が渇いて
お腹がきゅうきゅうなわけね
じゃなくて、本当にこいつら
ゴミクズ夫婦だわ
これだと、主治医すらまともに
呼んでないんじゃないの?
そういえば、身体に治療らしい
治療された痕跡も無かったわね
もしかしなくても
こいつら究極の馬鹿じゃない?
仮にも、私は第1王子の婚約者よ
それとも、もう私を必要としない
何かがあるのかしら?
このくだらない叱責が終わったら
現在の私の立ち位置を
きちんと確認しないと
なんか、マジにヤバ~イことに
なりそうね‥‥‥ふぅ~‥‥‥)
私は、血縁上の父親にあたる男の叱責を、頭を少し下げて視線を伏せながら、黙って終わるのを待ちながら聞き流す。
(しかし、もう3日後なのねぇ‥‥‥
あれだけ、ヒューズ殿下と
正式な婚約を望んでいた私は
もうカケラも居ない
はぁ~こうして考えてみたら
仮の婚約者って立場を利用して
私の方が、ただただ一方的に
ヒョーズ殿下に恋焦がれて
付き纏っていたのよねぇ‥‥‥
恋は盲目って言うけど
アレは私的にないわぁ‥‥マジで‥
あのキンキラ金の隣りになんて
ぜぇ~ったいに立ちたくないわ
確かに、アニメのスチルなら
あれでもアリかもだけど‥‥‥
それは、絵空事の他人事だから
ベル○ラの男装の麗人様や
旧作の銀河の若き皇帝様みたいな
アニメやラノベに出てくる
キラッキラしたテンプレ王子様
ってヤツ、私、もとから
メッチャ苦手なのよねぇ~‥‥‥
前世で遊んでいた乙女ゲームでも
ラストに攻略まわしてたし‥‥‥
いや、おとっときじゃなく
マジで仕方が無くラストに
攻略していたなぁ‥‥‥
とりあえず、コンプの為にって
本来なら、王道の攻略対象者
金色王子様は、本当に最後の
最後だったなぁ‥‥‥ぅん?
って‥‥‥あれっ‥もしかして
コレってダメなヤツじゃん
うわぁ~この乙女ゲームの名前
思い出ししゃったよぉ‥‥‥)
私は、しおらしくうつむきながら、この無意味な叱責が終わるのをただただ黙って待っていた。
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