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002★前世を思い出しました

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 目覚めと共に全身に痛みが走り、私は呻いた。

 「‥‥っ‥ぅ‥‥くぅ‥‥‥‥」

 (っ‥いったぁ~‥‥うぅ~‥‥
  なんで? こんなに痛いの?)

 そう全身に走る痛みに涙を滲ませて、現状を認識しようとゆっくりと瞼を開く。

 (何時もの私の部屋よね)

 見慣れた天蓋付きベッドの天井や無駄に豪勢なカーテン?を見て、ひとつ溜息を付く‥‥‥そう、現状に至ったコトを思い出して‥‥‥。

 (あぁ‥そうだったわ‥‥
  油断したわ‥いやぁ~本当に

  私は、あの意地悪な義母に
  階段から突き落とされたんだ

  いやぁ~な予感はしていたけど
  まさか突き落とされるとは‥‥‥)

 義母のソフィアに、階段の最上段から突き落とされたコトを明確に思い出した私は、自分の迂闊さに嘆息する。

 (じゃなくて、今は何日?

  あと1週間後に
  第1王子のヒューズ殿下と
  婚約発表があるのに‥‥‥

  私はどのくらい寝てたの?
  ほんの数刻だと良いのだけど

  なんか時間感覚がおかしいわ
  それに、妙にお腹が減っているわ)

 自分自身の中の違和感に、無意識の小首を傾げれば、あちこちに痛みが走る。

 (やだわぁ~‥ちょっとなに気に
  小首を少し傾げただけで
  こんなに全身に痛みが走るなんて‥‥‥‥

  じゃなくて、私は‥‥‥
  クリスタリア王国4公爵家のひとつ
  ラグーナ公爵家の長女セシリア

  そう私の名は
  セシリア・ファウス・ラグーナ)

 そう口の中で呟くと、自分のコトなのに、妙な違和感を覚えた。
 セシリアは大きく溜息を吐き、痛む身体をゆっくりと起き上がらせる。

 (うわぁ~‥‥勘弁して欲しいわ
  マジで身体がガッタガタッだわ)

 上半身を起こした途端に、クラリとした眩暈を感じて、片手を付いてグラリと揺れた身体を支える。

 「うっ‥っー‥‥マジに
  あちこち痛いわ」

 (じゃなくて‥‥‥
  私セシリアは3歳の時
  5歳のヒューズ殿下と
  仮婚約したんだわ

  そして、1週間後には
  正式に婚約のお披露目パーティー
  その後、半年間の婚約期間を経て
  成婚式‥‥‥って‥‥あれ?

  ぜぇ~んぜんワクワクも
  ドキドキもしないのは
  何ででしょう?

  いっそ見事に‥‥‥
  なぁ~んにも感じない

  それどころか‥‥‥
  嫌悪感とか感じるのは何故?

  あれだけ、ヒューズ殿下と
  結婚して王子妃になるコトを
  望んでいたはずなのに‥‥‥)

 それこそ、嫉妬にとち狂って色々とやらかしたコトを思い出して、痛みも忘れて無意識に首をふり、痛みに呻く。

 (いやいや‥アレと結婚‥‥
  ないわぁ~‥‥‥て‥‥‥
  私って誰?)

 自分の感じている違和感を、改めて突き詰める。

 (このクリスタリア王国の
  4公爵家のひとつ
  ラグーナ公爵家長女
  それが、私

  3歳でヒューズ殿下と仮婚約し
  5歳の時に義母が義弟を連れて
  お父様の後妻に‥‥‥

  お母様が生きていらした時から
  あの女を囲っていたのよね)

 義弟を腕に抱いて、新しい母親だというソフィアを連れて来た時に、自分は愛されていないことを、改めて実感したコトを思い出し、セシリアは肩を竦める。
 同時に、別の記憶がスルリと脳裏を優しくよぎる。

 
 『『『『『僕達は、何時でも
  君を愛しているよ、華絵』』』』』

 優しく笑う5人の兄達の優しい声と、自分の頭を撫でるその手を思い出す。

 (‥‥‥っ‥‥お兄様‥‥‥)

 途端に、怒涛のように記憶が溢れ返る。
 今まで孤独が嘘のように、癒されていくのを感じてセシリアは自分が前世、誰であったかを思い出して、泣き笑いを浮かべる。

  












  
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