召喚されたのに、スルーされた私

召喚されちゃいました

045★曾祖父との会話を思い出しました・前編

　「頼んだぞ
　　それと、ドレスの状態も
　　確認してくれ」

　「はい、お任せください」

　フレデリカとの会話をしながら、アラン様は、私を抱き上げて歩き始めています。
　意外とセッカチなアラン様でした。
　お風呂では、色々とえぇ～えされましたよ。
　乙女の…大切なモノは…守ってくれましたけどね。

　でも、私は、穢れない乙女ではなくなってるって思っています。
　なんて、意識をそらしておかないと色々と不味いんです。
　だって、恥ずかしいんですもの。

　まぁ～また、ガウンで、スープを飲んでお菓子をつまんで、アラン様と会話しました。
　マナーなんですが、アラン様は、私に魔法を掛けて、動かしてくれるって言いましたよ。

　「紫音………」

　甘い声でそう言って話しかけるアラン様の言葉を聞きながらも、先刻の話しの内容から、私は、ある会話を思い出しました。

　そう、戦後間もない頃の田舎に、教師として赴任した経験を持つ、この前大往生したひいお祖父ちゃんが、酔っ払ったときに言っていたコトを………。

　どうしてそんな話になったのかは不明なんですが………。
　印象的だったので、今でも鮮明に覚えています。
　そして、その内容が、この国の現状にある意味で、似ているなって思ったから………遺伝子の袋小路？に入っている？

　『閉鎖的な地域に
　　教師として赴任した時

　　クラスの生徒がどう見ても
　　姉妹や兄弟に見えるが

　　苗字が違うから
　　聞いてみたんだよ』

　『それって、親が離婚した
　　姉妹や兄弟だったの？』

　『いや、従兄弟（従姉妹、
　　従兄妹、従姉弟）だったよ
　　ちょっと問題のあるな』

　『仲が悪くてケンカ
　　ばかりしていたの？』

　『いや、そこは血族婚の
　　風習があってな

　　血が近い為に
　　遺伝子的欠陥が表に出て
　　難聴の子が多かったんだ』

　『どうして、欠陥があるって
　　わかっているのに
　　結婚するんだろう？』

　『家柄や家格、財産問題も
　　あったんだと思うし

　　純粋に閉じた地域で
　　婚姻相手が少なかった
　　というのもあったんだろう』

　『どの程度の婚姻関係だったの？』

　『足利尊氏の足利家と
　　北条家の婚姻関係を
　　知っているかな？』

　『えっ？　とぉ～
　　それって今の話しと
　　何か関係あるの？』

　『足利家の当主は
　　北条家の姫を代々
　　娶っていたんだよ

　　同盟の証みたいにね

　　尊氏とその弟の妻は
　　北条家の姉妹の姫
　　だったんだよ』

　『えっえー』

　『昔の婚姻と今の婚姻は
　　別物なんだ

　　一族と一族の契約や同盟の
　　証だからね

　　障害を持つ者が生まれようと
　　平気で婚姻するんだよ

　　確か、従兄妹婚が多い
　　地域だって聞いたなぁ～』

　『なんかアレな風習だね』

　『だから、従兄弟と言っても
　　タダの従兄弟と
　　マッカケの従兄弟って
　　区別があったんだよ』

　『マッカケ？　ってなに？』

　『真に交配するという意味の
　　言葉だと思うんだな

　　姉妹と兄弟が婚姻して
　　生まれた従兄弟って
　　意味らしい』

　『えぇ～……それって
　　兄弟って言うよりも

　　兄弟や姉妹に近い遺伝子を
　　持つと思うんだけどぉ～

　　それで結婚って不味く無い？』

　『だから、難聴が多いって
　　結果があったし

　　知能指数が低い子もいたし
　　他にも色々とあったなぁ～』

　『なんかそれだと
　　大切にしていた家が
　　滅びそうだね』

　『ああそうだよ、スペインの
　　ハプスブルグ王家は
　　血族婚が原因で滅びたと
　　言われているぞ』

　『えっ…ハプスブルグって
　　オーストラリアの
　　皇族でしょう？』

　『スペインもハプスブルグ
　　だったんだ

　　伯父と姪でな……確か息子と
　　結婚するはずだったんだが

　　息子が死んだんで急遽
　　父親と結婚したんだ

　　ちなみに、五十男と
　　１５才前後の姫でな………

　　だから、生まれた子は
　　ほとんど早世してしまって

　　唯一の王子は、知能の低い
　　顎が変形した子供だったんだ

　　その為に、子供を作るコトなく
　　早世してしまってな

　　スペインのハプスブルグは
　　終わったんだよ』

　そこまで思考が行った時に、ふっと意識が戻り、私はアラン様をジーっと見てしまう。
　もしかしたら、異世界召喚で花嫁を手に入れなければ、スペインのハプスブルグと同じ末路だったのかなぁ？
　でも、毎回、私とアラン様みたいに、相思相愛になれているのかな？
　だって、あの皇子様達は、私を完全にスルーしたし………。
　もし、アラン様に手を取ってもらえなかったら………。