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召喚されちゃいました

191★懐かしくも寂しい記憶

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 くすぐったいなぁ~………顔中、なんかくすぐったいって思っていたら………。
 今度は、首筋がチクッとした。
 なんだろうと思っていると、今度は耳がツキンと痛い気がする。

 あれぇ~…この感じって、何かに似ているわ。
 う~ん………これって、お祖母ちゃんが飼っていたタビーが、私を起こそうとしている時のやり方に似ているんだぁ~………。

 嗚呼、お祖母ちゃんが生きていた頃は………。

 朝食の用意が出来たってから、後の準備を手伝って欲しいって、タビーに私を起こして来るように言っていたのよねぇ~………。
 起きた私は、タビーにおはようって言って水と餌をあげてから、洗面所に行って顔を洗ったりしていたわねぇ………。

 ばっちりと目が覚めると家族の食器をテーブルに出して、朝刊を取って来てから、お祖父ちゃん以外を起こしに行ったっけなぁ………。
 お父さんやお母さん、お姉ちゃんに起きるように言ってから、私はテーブルに朝刊を置いたんだよねぇ~………。

 目ざましに、お祖父ちゃんが入れていたをコーヒーを砂糖無しのカフェオレにしてもらっていたんだけ………。
 父さん達が起きるまで、カフェオレを飲みながら、朝刊をお祖父ちゃんと読んでいたわねぇ………。

 その間、タビーのキャットフードを食べる、かりかりっていう音を聞いていたわ。
 はぁ~…懐かしいなぁ~……お祖父ちゃんが逝ったら、お祖母ちゃんが気力をなくしてぼんやりしていたから、朝食は私が用意するようになったのよねぇ~………。

 その為に、早起きするようになったら、目覚まし時計より早く私を起こしに来るようになったけっ………。
 顔を洗って身づくろいをした私は、お祖母ちゃんに声をかけて、お祖父ちゃんの仏壇のお水を換えて、お線香を付けて、手を合わせていたわね。
 その間にお祖母ちゃんは、庭で仏壇に添える花を庭で切っていたり、飾ってあった花の茎を切ったりしていたなぁ~………。

 ここに召喚されるその日も、私は朝食の用意と仏壇のお花やお線香など用意もやっていたわね。
 お祖母ちゃんが生きていた頃は、足元にタビーがいたけど………今はもういない。
 お祖母ちゃんが逝って四十九日が終わったら、タビーは消えていた。

 そのコトをお母さんに言ったら………

 『タビーは、お祖母ちゃんが
  可愛がっていた猫だから

  お祖母ちゃんの後を
  追いかけて逝ったの

  だからタビーを探す
  必要は無いのよ』

  って言われたんだっけ………珍しく良いコトを言うなぁ~って思ったのよねぇ………。
 そして、お母さんと一緒にタビーの食器やタオル、おもちゃやトイレ等を片付けたんだ。

 その時に、タビーはお母さんが、友達から貰ってきた猫だって初めて聞いた。
 だから、お母さんがタビーの餌やおやつを買ってきていたってわかったのよね。
 タビーにおやつを食べさせながら、私は、タビーの愛らしさについてお母さんやお祖母ちゃんと会話していたんだ。

 お祖母ちゃんが逝って、タビーが消えてから、めっきりお母さんと会話しなくなったんだわ………今更だけどねぇ………ちょっと寂しかった。
 そして、お姉ちゃんとの会話も、すっごく減ったわ。

 それで、私と家族を繋いでいたのは、タビーだってわかってがっくりしたんだっけなぁ~………。
 でも、あの家じゃ無くって、震災なんかで家族と離れ離れになっても、家族に未練は無いって思うようになっていたわ。

 タビーは、私を家族に繋ぐっていう役割も、果たしていたのねって感心したのよねぇ~………。
 それから私は、オタクな趣味にのめり込んで行ったんだわ。

 ここでは無い何処かに行きたくて、私は色々な知識を集めるようになって行ったわ。
 そうして、無理やりタビーを忘れていったんだ。

 タビーがいた頃は、お母さんと家族だって思える状態だったから………。
 でも、タビーのいない状態でのお母さんは、私に興味が無い人になっていたから哀しかったんだと思うわね。

 でも、今は、家族と離れているから、タビーを思い出したってトコかなぁ~………。
 だって、マジで嫉妬深くって、勘弁して欲しいって思うほどに暑苦しい愛情を、アラン様は注いでくれるから………。

 『別の何かを、ガッツリと
  注がれそうで怖いです』

 なんて、自虐ギャグをいれてしまうなんて、私は、もう清らかな乙女じゃ無いですね(号泣)。
 でも、タビーが私をあの家族と世界に繋ぎとめていたように、アラン様が私をこの世界に繋ぎとめる役割を持っているって思うなぁ~………。

 だったら、一緒に召喚された彼女達も、私と同じように家族との絆が切れたり切れかけていたんじゃないかな?
 なんて取りとめの無いコトを考えていた………。

 そして、顔中に降ってくるアラン様の口付けは、タビーのそれに良く似ているなって思った私の意識は浮上していく。







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