召喚されたのに、スルーされた私

召喚されちゃいました

１８４★ちょっと現実逃避してしまいました

　私の問い掛けに、アラン様はにっこり笑って答えてくれた。

　「侍女達は、身近に使える者達ですが
　　執事や侍従、従者や騎士は
　　そこまで親しくする存在ではありません

　　私が、彼らに挨拶するように命令しますよ」

　アラン様って、やっぱり優しいなぁ～………私にだけ、優しい男って感じがしてすっごく嬉しいわ………。

　そう思いつつ、下の者となった人達への挨拶をどうしようという無意識の逃避から、向こうの世界のコトをついつい………。

　お母さん達は、何でもお姉ちゃんが優先で、私にはそんなに優しく無かったから………。
　お祖母ちゃん達がいなかったら、私って家族にもスルーされた存在になっていたかも知れないわねぇ………今思うとね。

　お祖父ちゃんは、小学校卒業した春休みにガンで逝っちゃったんだよね。
　夫婦仲が良かったから、お祖母ちゃんもあっけなく逝っちゃったんだよねぇ（涙）。
　でも、こっちに来ちゃったから、２人にお別れをきちんと出来ていて良かったなぁ～って思う。

　寂しいのは、オタク友達に何も言わずに、こっちに来ちゃったコト。
　いや、こっちに呼ばれたから、私にはどうしようも無いってわかっているけど………。

　まぁ～こっちに来なかったら、私の寿命はあと少しだったんだんだろうし、どっちにしてもみんなとお別れただったんだよねぇ～………たぶんきっと。
　ラノベの定番だと、私は、存在していなかったっていうパターンと、事故や病気で死んだっていう、偽の記憶を作られて終わりだったよね。

　Ｒ１８のイケナイ本は、コピーしてＰＤＦやＪＰＤＦにしてスマホに入れていたし、電子書籍は、もとからスマホに入れていたから、本の処分は気にしなくて良いっていうのはほっとするわね。
　コピーした本は、知り合いのお姉さん達に処分を頼んでいたから………。

　この方法を思い付いたのは、何かっていうと勝手に私の部屋に入るお姉ちゃんへの対策だったんだよね。
　部屋に置いてあるノートＰＣもプロテクトはかけているし、Ｒ１８ぽくってヤバイかも？ってＴＬやラノベは買った場所の本棚に入っているから、ちょっと細工すれば覗けないしね。

　ＤＬ（ダウンロードサイトで買った）同人誌は、全部スマホに入れているから………。
　無料で読める小説のＤＬした小説は、スマホだと文字化けするから、全部タブレットに入れているしね。

　お姉ちゃんが、私のノートＰＣをいじっても、見れるのは普通のマンガと小説だけだしね。
　家族に、私のオタク趣味がばれる心配は無いわ。

　お金が無かったから、グッズの類はいっさい買っていなかったし、ゲームはお母さんやお父さんがやっていたレトロなゲームか、オンラインゲームしかやっていなかったから安心だしね。

　もっとも、私の部屋にお姉ちゃんが勝手に置いているお姉ちゃんのエロっぽすぎる下着やコスプレなの？って服は、どうやっても私が着れないから、なんの心配もないし………。

　お祖母ちゃんやお祖父ちゃん達が、逝ってからはお小遣いが５０００円しか無かったから………新しい服はそんなに無いもんね。
　だから、クローゼットに吊るしているのは、制服と学校指定のコートの類と外出用のコートと上着、ジャケットだけだしね。

　残りの部分は、お姉ちゃんの洋服だし………引き出しには学校指定のジャージやブラウス、Ｔシャツや色々な柄のレギンズ、チェニックとカーディガンに、トレーナーとかがちょっとあるだけ………。
　あと、下着と靴下、バスタオルやタオル、ハンカチで一段ぐらいだったから………。

　こうして考えてみると、私って洋服を持っていないんだぁ～………って実感するわ。
　でも、お母さん達が、私の部屋を片付けるんだったら、簡単に済むんだから、かえって良かったかな？

　そういえば、お祖母ちゃんに貰った装飾品やお祖父ちゃん貰った懐中時計とかって、何処に仕舞っていたっけ………。
　ああそうだ………北海道の地震をテレビで見て、慌ててリュックに二重底を付けて、その中に貴重品や大事な物と一緒に入れていたんだ。
　なんで、こんな大事なコトを私は忘れていたんだろう？

　これで行くと私の異世界召喚って、マジで運命だって思えるわ。
　ついでに、ちょっと…いや、かなり違法かもって感じがするけど、オタク仲間みんなで、持っているマンガ本を全部、読みとりを掛けてもらって、ＵＳＢメモリに入れて貰っただっけ………。

　お互いにちょっとずつジャンルが違っていたし、古い作品もけっこうあったから、読み応えあるよねって言っていたわね。
　そう、知り合いの同人サークルのお姉さん達のお友達に、みんなでお金出して頼んだから物凄い量になっていたっけ………。

　全然読まないジャンルのマンガや小説も………。
　あれぇ～…こっちでの娯楽に、私ってば困んないかも………。

　音楽はアニソンのＣＤとか、お互いに家の中にあった色々なＣＤを持ち寄ってＵＳＢメモリと、共同で借りてるサーバーの中に入れていたわ。
　なんでだかわからないけど、あの時は、とにかく盛り上がったんだよね。

　お姉さん達は春から社会人になるし、高校を卒業して進学する人達と就職するお姉さん達、中学卒業して高校生になる私達が、なんか記念にって、コレクションを保存しようって話になったんだわ………。

　あの時、冬コミ後のハイテンションと、みんなが狙っていたサークルさんの本が落ちていたり、完売していたりでお金が残っていたのも原因の一つだと思う。
　冬コミ後に、みんなでゾロゾロと歩いていたら、ＵＳＢメモリの大安売りにあたったから、ついつい大量に買ってしまったのよね。

　小さいから場所とらないし、冬コミで買った同人誌を保存するのにも使うからって………。
　欲しかった本が買えなかった悔しさを、みんなの手元にある読んだことのない本を読んで夏コミまで我慢しようって話になったのよ。

　３月や５月のイベントでも、新刊は発行されるけど、夏コミと冬コミでしか新刊を出さないっていうサークルさんも多いから………。

　それに、進路が決まっている人間達しかいなかったセイで、冬休み中にやってしまおうってなったんだよね。
　確か、お勧めアニメとか映画、同人サークルのお姉さん達が収集していた資料としての能や歌舞伎、日本舞踊や宝塚、バレエやストリートダンス、ソシアルダンスやラテンダンス、タップダンスやジャズダンス、お祭りの映像ももらっていたような気がする。

　あれって、みんなであの作品のオンリーイベントで手渡されて………。
　もしかしなくても、リュックの二重底に入れたままだわ。
　ラッキー………この世界でも、娯楽に苦労しないわ。

　でも、活字中毒の私が、このＵＳＢメモリの中身を読まなかったのはどうしてなんだろう？
　まして、今まですっかり忘れていたのは………ちょっと疑問だけど。
　まっこの世界でも、娯楽に苦労しないって思えば良いわ。

　このＵＳＢメモリがあれば………私の暮らした日本のような娯楽が無いこの世界で、彼女達も私と一緒に、読んだことの無い小説やマンガ、映画とかを見て、それを元に二次を書いたり萌えを会話したりできるかもしれない。
　なんとなく希望が出て来たわ。

　まさかの異世界召喚、それもあり得ない花嫁召喚だもの………私って、デブス………いやいや、モブのぽっちゃり子なのよ、ないでしょ普通。
　まるで乙女ゲームに出て来る攻略対象のような、超絶美形の皇子様………いや、皇太子で帝都騎士団の団長様が、私の婚約者とかって信じられないわ。

　オタク友達に、アラン様のスチル見せたいって思う。
　実際には、出来ないけどね。

　はぁ～…現実逃避しても、挨拶はしなきゃならないんだよねぇ～気が重いわぁ～………。