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召喚されちゃいました

183★立場と挨拶の関係

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 私が呼ばれた人達を確認しようと、そちらへと視線を向けようとした、戸の時、堂々とした口調でアラン様へと声を掛ける人がいた。
 
 「若君、それでは、私から
  挨拶してもよろしいでしょか?」

 燃えるような赤毛と緑の瞳の美女(美魔女かもしれない)が、アラン様に話しかける………が、はい、アラン様はスルーしました。
 それはものの見事に、掛けられた声が聞こえないかのように………。

 それを見て、この時思いました。
 あぁ…半分とはいえ同じ血がアラン様にも流れているって………。
 そう、あの6人の皇子様(仮)と同じ部分があると………理解しましたよ。

 だって、スルーの仕方がそっくりだったから………ちょっと、あの時のコトを思い出して、胸がズキンッと痛みました。
 そして、私は思います。
 きっと、お父様やお祖父様も一緒だろうと………。

 なぜならば、6人の皇子様(仮)の母君は他国の方々ですが、父親はお父様(皇帝陛下)なんですから………似なくて良いところが似ているんですね。
 いや、私だって理解(わか)っていますよ………地位が違うから、あえてスルーしたって………。
 下の者から声を掛けるのは不敬罪だってコトは………。

 そんな中、アラン様はその美女の問いかけには一切答えず、甘い表情と声で私に向かって言うのです。

 「紫音、これはローズクオーツ伯爵夫人
  エレイン・アリス

  貴女の侍女長になる
  フレデリカと同じ役割をしますよ」

 「ローズクオーツ伯爵夫人エレイン………」

 私は、アラン様の言った名前を、復唱するように口にしてしまう。
 だって、名前を覚えようって思っていたから………。 
 すると、赤毛の美人さんじゃなくて、エレインさんが私達に向かって淑女の礼を優雅にとってくれる。

 そして、その後ろにも、綺麗な人達が淑女の礼をとっていたりする。
 もしかして、全員が侍女になるのかな?結構な人数だけどぉ~………。
 なんか、アラン様の宮にいる侍女さん達よりも、確実に多いよね?

 色々と考えてぐるぐるしている私と違って、もともとが皇子様なアラン様が、私の代わりに、エレインさん達に話しかける。

 「面(おもて)をあげよ」

 うっわぁ~い…どこの時代劇ぃ~………苦しゅうないって言葉がついていないのが不思議な感じがするわ。
 わたしってば、本当にお姫様っていうか、皇女なのねぇ………あまり実感ないけどね。

 だって、アラン様が常に側に居てアレコレ指示して、この世界の人達を極力、私に近付けないようにしていたから………。
 でも、これからは、庶民っていう意識を持っていても、それを見せても良いのは、アラン様の前だけでなんだなぁ~…って改めて思ったわ。

 うわっ…やっばっ…エレンさん達からの視線が、すっごく痛いわ。
 ここは、根性で私も話しかけるしかないわね。
 立場を示さないといけないって、理解(わか)るもの………はぁ~きついわぁ(涙)。

 だって、日本人で一般小市民な私なのに、年上の女性を呼び捨てにするコトも、敬語を使うコトも、謙遜するコトも、ぜぇ~んぶ封印するしかないのよ。
 目上を敬うって文化で育った私には、尊大(上位者として)に上から目線的な状態で言葉を掛けるのは、もっのすごく辛いんですよね………けど、立場上、やるしか無いのよね。
 ガンバレ私、ファイトだ私、私は皇女(女優)よ(泣)。

 内心を奮い立たせて、アラン様やお父様の対応の仕方を思い浮かべながら、私は精いっぱい頑張って声を掛ける。

 「フローライト公爵家より
  私の宮に移ってくれてありがとう

  私は、貴方達も知っているように
  陛下の養女になったとはいえ
  異世界より召喚された人間です

  こちらの常識は、わかりません
  が、ランドール様と共にある為に
  必要な知識とマナーを覚える予定です

  エレイン、フレデリカ
  私の皇女としての日常生活を
  支えてくれるコトを期待しています」

 はぁぁぁ~…なんとか言いきったわよ………精いっぱい、尊大な感じて喋ってみたわよ………ぜいぜい(大汗)。
 そんな私に、アラン様は、もう蕩けるような甘い顔で、優しい声で囁いてくれました。
 どうやら、魔法で遮音壁を作っているみたいですね。

 「ふふふふ………静香、良い挨拶でしたよ

  マナーや常識は、私の祖母
  フローライト公爵夫人が教えると
  はりきっていますからね

  フレデリカは、侍女などの
  身近に使える者達に対する
  接し方を中心に教える予定です

  エレインは静香に仕える者ですから
  その辺りに気を付けて下さいね

  フレデリカが教える通りに行動すれば
  大丈夫ですから………」

 ふむ、やはり立ち位置の都合で、エレイン…の声掛けを、スルーしたんですね。
 順位てきに言っても、フレデリカより下として扱わなければいけないんですね………言っちゃなんですが、メンドイですよ(涙)。
 コミュ障の私には、ハードルがメッチャ高いですよ………いや、アラン様やお父様の名誉のためにも、頑張りますけどね。
 っと、そうだ聞いておきたいコトがあったのよね、どうせだから、今聞いてしまいましょう。
 遮音壁はっているんですから………。

 「アラン様、フレデリカは
  降下した皇女なのでしょう

  どうせなら常識やマナーも
  教えてもらいたいです」

 私がそう言うと、ちょっと困った表情で、アラン様は言います。

 「残念ながら、それは出来ないんですよ
  なぜなら、今、現在の彼女は
  伯爵夫人でしかないですからね

  皇女に物事を教えるには
  身分が足りないのですよ

  また、フローライト公爵家は
  臣下に降りた皇族が祖となった
  家なので………」

 そうアラン様は立場というモノを、実地で教えてくれます。
 言外に、だから私はエレインの言葉を無視したんだよ………と、マジで面倒くさいです(疲)。
 でも、既に私の立場は確定しているので、その地位に見合った対応をするしかないんですよね………いいや、アラン様にここで聞いてしまおう。

 「そうですか………身分って
  本当に、面倒なモノですね

  では、他の人達の挨拶は
  どうしたらよいのですか?」











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