召喚されたのに、スルーされた私

召喚されちゃいました

１６８★突き進む求愛給餌行為を回避しようとしたんですが………

　アラン様の求愛給餌を受けながら、恥ずかしさのあまり、私はまた、意識を飛ばしてしまいました。
　お陰で、アラン様に、濃厚なベロチューをされましたよ（号泣）。
　意識を取り戻した私に、アラン様が、漆黒のオーラを纏って言います。

　「やっと、私を見てくれましたね、静香

　　異世界からの花嫁は
　　私達の求愛給餌を恥ずかしがって

　　なかなか受け入れないと
　　本で読んでいたので

　　多少は嫌がって
　　食べたがらないというコトは
　　知っています

　　が、静香の場合は、食事に
　　意識が向いていないみたいですね

　　それならば、いっそのこと
　　私が口移しで食べさせましょうか？」

　うっきゃー…不味いですぅぅぅぅ～………ここは、なんとしてもごまかすしかありません。
　昨夜のネタは使えませんから………。

　考えろ…考えるんだ…死ぬ気で脳細胞を酷使しろ私………。
　あっ…そうだ…異世界召喚された時に持っていたというか、背負っていたリュックの中に、色々な種とその育て方をダウンロードしたメモリーが入ったままになっていたわ。

　無料小説サイトで、内政チートものを良く読んでいたから、私も書いてみたくなって、色々と調べていたのよねぇ～………。
　それをオタク友達に話したくて、入れたままにしていて忘れていたんだわ。
　うん、アレが使えるわ。

　まずは、アラン様に、謝ってから話してみればＯＫよね。

　「アラン様、ぼうーっとしていて
　　ごめんなさい

　　つい、お父様と会った時に
　　提案したいコトがあったから………」

　私の言い訳にアラン様は、眉を顰（ひそ）めて溜息をひとつ吐き出しました。
　憂いを帯びたアラン様………素敵です…本当に眼福です。
　なんて思っている私に、アラン様は切なげに言います。

　「静香、食事の時は
　　食事に集中して下さい

　　貴女は、か弱いんですよ
　　私達から見れば体力も無いんです

　　その上で、静香は
　　この世界に召喚されて

　　慣れない環境の為に
　　疲れやすくなっています

　　昨日、元の世界では使ったコトの無い
　　魔法を使ったりしているんですよ

　　睡眠はしっかりとっても
　　食事をきちんと摂らなかったら
　　体力や疲労の回復にはなりません

　　静香が儚くなったらと思うと
　　心配でたまりません………」

　私は、アラン様の愛情あふれるお説教を途中で遮りました。
　だって、早く、教えたかったんです。

　「アラン様、私
　　色々な穀物の種を持っています

　　辺境で、近隣に作付している
　　畑などが無い場所だったら

　　私の世界で品種改良されて
　　収穫高が滅茶苦茶多い上に

　　病害虫に対する耐性もある
　　穀物の種を育てても良いかな？

　　って思ったんです

　　この世界で、作付して生産出来れば
　　食糧事情も良くなると思いました

　　昨日、騎士様達がドラゴニアンとして
　　ハーフトランスした時

　　魔力と体力が足りなかったのは
　　ドラゴニアンとしての栄養が
　　足りなかった為じゃないか？

　　って思ったんです

　　だったら、おなじ面積でも
　　収穫高が確実に多い私の世界の穀物を
　　作って食べれば良いって………

　　昨日、アラン様と話した
　　開拓の話しに、新しい穀物を加えれば………」

　私の説明という名の言い訳を、アラン様は、途中で遮りました。

　「静香の世界の方が
　　穀物の品種改良が進んでいるコトは

　　召喚された花嫁達との会話が
　　記録された本で知っていました

　　でも、どうやって改良しているか
　　成人していない花嫁達は
　　知らなかったんです

　　また、種自体が無かった為に
　　実際に育てて確認するコトも
　　出来ませんでした

　　それなのに、静香は、種を持って
　　召喚されていたのですね」

　良かったぁ～アラン様は、そんなに怒っていない。　
　ここは、もっとアピールしてみますか。
　アラン様の意識や興味が、種に行くように………。

　ちょっと…いやかなり姑息な手段ですが、アラン様の役に立つ人間でいたいんです。
　容姿が優れていない、その上、単なる庶民な私には、誇れるものが無いんです。
　ここは、知識と持ってきた種で、ポイント（好感度）を稼ぎますよ。

　可愛くない私は、皇太子であるアラン様の隣りに立つには、ちょっとアレですからね。
　キラキラ皇子様にお持ち帰りされた２人の美少女達に、アラン様の気持ちが移ったりしないように………。
　と、いうことでアピールアピール。

　「はい、私達の国の主食のお米を数種類
　　小麦やライ麦を数種類、蕎麦も数種類

　　トウモロコシも数種類
　　他にジャガイモやサツマイモ

　　カボチャの種を１０数種類
　　豆類も数種類、持って来ました

　　変わり種という感じで
　　クリと、どんぐりを１０数種類
　　くるみも数種類入れていました

　　縄文時代の主食が
　　どんぐりとクリだったので
　　用意してみたんです

　　育て方もメモリーから呼び出して
　　調べるコトが出来ます

　　後、こっちの世界の作物の育て方と
　　私の世界の育て方を比べて
　　効率化も図れると思います

　　たしか、品種改良の方法も
　　書いてあったと思うので
　　資料として役に立つと思います

　　つい、色々と思いついたら
　　どんどん考えちゃって
　　ごめんなさい」

　私のマシンガントーク？に、アラン様は驚いたみたいです。
　でも、途中から何時もの甘いというか蕩けている顔になってくれました。
　はぁ～…ほっとします。

　あっそうだ葛の話しもしなくっちゃ………。
　根っこが、漢方薬系の風邪薬葛根湯の材料で、和菓子の葛切りや葛餅の材料でもある。
　とぉ～っても、繁殖力旺盛な植物なんです。

　別名は、緑の悪魔。
　切っても切っても再生するので、農家さん達とかに嫌われてそんな不名誉な異名を持っている葛。
　でも、肥料無しで大量に育つし、家畜の飼料にも使える優れモノなんです。


　
　※家のヤギ達の大好物です。
　夏の間は、葉と茎を食べさせます。
　緑の悪魔と言われるだけあって、刈り取っても直ぐに復元します。

　その為、何度でも刈り取ってヤギに食べさせられるので、とぉ～っても助かります。
　葉が枯れる冬になったら、茎と根を食べさせます。
　茎や根に、でんぷん質を大量に含んでいるので、喜んで食べてくれます。

　牧草に飽きた時のブースト用の食べ物という感じです。
　それと、どんぐりの木の枝や葉っぱもヤギの飼料になります。
　勿論、どんぐりやクリはヤギの大好物です。

　スペインのイベリコ豚って、どんぐりをメインで食べさせられて育つんですよ。
　デンプン質をたっぷり食べるから、お肉が美味しくなるのでしょうね。
　閑話休題。



　葛の説明なんてコトを考えていたら、アラン様に優しく口付けされちゃいました。
　ただし、それは、求愛給餌でした（イケメン滅びろ）。

　私が、話しに夢中になると周りが見えなくなるコトを知っているアラン様は、甘いイチゴを口に含んで、私に口移しで食べさせてくれました（号泣）。
　もちろん、イチゴはしっかりと食べましたよ。

　イチゴに罪は無いし、食べ物を粗末にしたらバチがあたりますから………。
　でも、私は、恥ずかしさで真っ赤になったうえに涙目で、アラン様を恨みがましく見つめます。
　だからってアラン様に、文句なんて言いませんよ。

　美味しいも、イケメンも、正義だから………いや、尊いの方が良いのかな？。
　じゃなくて、藪を突いて蛇が出るって、言葉は、身に染みて理解（わか）っていますからね。

　そんな私に、アラン様は悪戯っぽい表情で笑ってくれました。
　はぅわぁ～…大人の男の子供っぽい表情って、胸にズキュンってきます。
　このスチルは、こころのシャッターをガンガンきらせてくれます。

　眼福です…ご馳走さまです…アラン様ありがとう。
　なんて思っていたら、アラン様がにっこり笑います。
　何だろう？背中がぞくぞくします。