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召喚されちゃいました

120★やってみたいじゃないですか

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 私を抱き締めた状態から、立て抱っこに変えて、アラン様は振り返りました。
 チャンスです‥‥‥ラノベの完全治癒(パーフェクトヒール)を試してみたかったんです。

 中二病が、まだ完全に治っていないオタクな私は、こころの中で思いついた呪文を詠唱します。
 アラン様や周りにいる警護の騎士様達に、失敗したら恥ずかしいから聞かれたくないから‥‥‥。

 『光と時の精霊達よ
  我が声に集いて応えよ

  我が猛き騎士達を
  健やかなる状態に還元せよ
 
  その対価として
  我が魔力の一部を捧げん
  
  リターンヒール』
 
 我ながら、見事に中二臭い呪文だなぁ~って、思いながら試してみました。
 そしたら、フォンフォ~ン~という聞き慣れない音と共に、身体から魔力が抜けるのを感じました。
 どうやら、うまくいったみたいです。

 目の前に大量の血塗れ騎士様達が、居たんですが‥‥‥。
 時の精霊に、呼びかけた結果でしょうか?
 私の目の前には、綺麗に血が消えてピカピカの甲冑を着た騎士様達が、首を傾げて横になっています。

 その周りには、不思議そうに首を傾げている魔法使い達が‥‥‥。
 中二病臭い、黒いフード付きローブを身に着けているので、そう思います。

 でも、なんで騎士様達の周りに、担架を持っている白い制服?を着て担架を持った人達と、謎な茶色いビンが幾つも転がっているんでしょうか?
 思わず首を傾げてしまいます。

 そんな私に、アラン様が、瞳を細めて見詰めてきます。
 なんでしょうか?アラン様から、漆黒のオーラが滲んできています。
 雰囲気が魔王様モードになってきていますけどぉ~‥‥‥私、なんかアラン様を怒らせるようなコトをしましたか?

 「あっ‥えっ‥と‥‥ランドール様‥
  私‥何か‥‥ランドール様を
  怒らせるようなコトを
  しましたか?」

 私の問い掛けに、アラン様は、ふぅ~っとひとつ深い息を吐き出します。
 それから、私を見詰めて、困ったなぁ~という表情で話し掛けてきます。

 「静香、今、私が教えていない
  魔法を使いましたね」

 あはははぁ~‥‥‥バレましたか‥怒ってないの‥‥かな?
 でも、色々と注意する気なんですよね‥だって‥‥詠唱破棄で、遮音壁張ってますもんね。
 はぁ~どれくらい怒られるのかなぁ~‥‥‥。

 それよりも、アラン様や騎士様達と一緒の魔法攻撃の訓練は‥‥‥ダメですよね。
 今回は‥あの1回の‥詠唱で終わりですか‥‥‥残念です。

 泣きたくなりました‥‥‥泣いてやるもん‥‥アラン様の馬鹿‥。
 でも、好きだから、ここは、素直に謝ります。

 「勝手に治癒魔法を掛けて
  ごめんなさい」

 「泣かないで下さい

  静香は、怪我をした騎士達を
  なんとかしたかった

  ただそれだけでしょう?」

 「血塗れの騎士様なんて
  見たこと無かったから‥‥‥

  ううん‥‥‥あんなに
  大量に怪我をして
  血を流している人なんて‥‥

  見たこと無いの‥‥だから
  治したいって思ったの」

 その言葉に、アラン様は微かに舌打ちしまう。
 ついでに、やりすぎたか‥‥‥あんなモノ日常茶飯事なのに‥‥‥と呟いたのを、しっかり耳にしました。
 が、そんな素振りを隠して、アラン様は問いかけてきます。

 「そうですか‥‥‥‥
  静香は、治癒魔法も
  使えるんですね‥‥」

 確認の言葉に、私もアラン様に返します。
 うふふふ‥‥‥確認確認、アラン様って使えそうだもん。

 「アラン様も治癒魔法
  使えるんでしょう?」

 「ええ使えますよ
  でも、今回のように

  流れた血までもとの状態に
  治す治癒魔法は使えません

  どうやったのですか?」

 あれ?もしかして、魔法の仕様が違うの?
 ラノベとかの定番を参考にして、呪文を構成したつもりだったんだけど‥‥‥あれ?
 とりあえず、確認の為にも、今治癒魔法として使った魔法を説明します。

 「えぇーとぉー‥‥光りの精霊と
  時の精霊の力を使いましたけど」

 「複合魔法ですか?」

 「はい、たぶん‥
  そうだと‥思います」

 「どうして、複合魔法を
  使おうとしたんですか?」

 「単なる肉体の治癒魔法だけだと
  失った血は戻らないから
  貧血状態になると思ったんです

  そうなると、激しい動き‥‥‥
  魔物討伐や魔族と戦ったりは
  出来なくなるって思ったんです

  私は、アラン様が危険に
  さらされないように
  騎士様達を治したんです

  アラン様が1番大切だから‥‥‥」

 「静香は、私を殺す気ですか?」

 「えっ?」

 「そんな涙の溜まった瞳で
  私を見詰めて‥‥‥

  ああ‥‥‥人前で無かったら‥‥‥‥
  トロトロに蕩けるほど愛して
  抱き潰してしまいたくなります

  愛していますよ、静香
  愛しい私の唯一の妃

  私の為に異界から
  降りてきた‥花嫁」









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