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026★勇者や聖女が居ても、どこまでも傲岸です

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 属性を表す色は、彼女達と同じように出なかったので、ちょっといやかなり残念だったのよねぇ~。
 だって、RPGが好きな人間で、ちょっと厨二病気味な私としては、火水風土無のどれかの属性の究極魔法が欲しいって思っていたんだもん。
 それが無いってコトを確認した私は、すっと水晶球から手を離した。

 そして、詰めていた息を、ほっとして吐き出した。
 気が抜けた私に、ハルト君とジーク君が近づいてきた。
 今度は、ハルト君が私をお姫様抱っこしてくれた。

 ………慣れてきたけど…やっぱり恥ずかしいです………。
 羞恥プレイはもうお腹いっぱいですって言えない私は小心者です。

 そして、黒いオーラを纏っているのに、笑顔は爽やかなハルト君が言う。

 「アリア、緊張しすぎて立っていられないほど、足ががくがくしているだろう?」

 「……ありがとう……」

 ハルト君の言う通りだったので、私はこくっと頷いてからお礼を言う。

 もう、開き直るっきゃないもん。
 ハルト君もジーク君も、お姫様抱っこが好きみたいだから………。
 たぶん、妹さん達を抱っこしていたセイだろうなぁ~………。

 絵になる美少女な妹さん達と違って、チンクシャな私には、拷問とも言える羞恥プレイな行為なんですけどぉぉぉ~………。
 諦めろ私………慣れるんだ私………。
 ハルト君もジーク君も止めてくれないんだから………。
 頑張れ私………ファイトだ私………。

 なんて自分に言い聞かせていた私は、神官様の評価を途中まで、右から左に聞き流してしまう。
 だって、周りが相変わらず、ざわざわしたままだったから………。
 ハルト君に抱き上げられている私を無視して、神官様が言う。

 「アリアンロッド殿、貴女の浄化の能力はちょっと不安定ですが、その質は歴代の聖女の中でも始めてのレベルです。それは、聖女として初めて放った黄金の光りが十分に表しています。それにときおり走った虹のような光は、究極の治癒魔法を内在している証しです。アリアリンロッド殿、貴女は、勇者殿達と魔法の修行をしてください。内在している魔力の質も量も、他の聖女殿達とは比べ物になりませんから………同等の魔力を持つ勇者殿達と修行するしか無いとも言いますが………よろしいですね?」

 「………」

 聖女なのに、勇者と一緒に修行することになったという部分を聞いて、私はほっとして頷いてしまう。

 神官様の評価を聞いた後、誰一人として返事をしていなかったので、私も無言でいた。
 いや、評価の内容をまともに聞いていなかったので、下手に口を開くのは不味いと思ったからなんだけどね………。

 でも、これで、彼女達と一緒に修行するモノは無いとわかってほっとしたわぁ~。
 きっと、私はにこにこと笑っているわね。
 何時の間にか、謁見の間に流れていた張り詰めていた雰囲気は消えて、穏やかな空気が流れている空間になっていた。

 貴族様達や騎士様達の視線は、私達から外れて、王様のいる玉座に向かっていた。
 ラノベのテンプレでいくなら、私達に対して色々と言うんだけどぉ~。
 ここでは、テンプレと違い過ぎて予想が付かないわ………。

 判定が終わると、神官様は、水晶珠を持ってきたまま、ずっと側で控えて待っていた神官様達、に目配せする。
 すると、神官達は王様に一礼して、水晶珠やそれを置く台座を持って、次々と謁見の間から出て行った。

 テーブルの方は、そのまま放置されていた。
 それを見て、水晶珠は大切なモノだから、すぐに仕舞う必要があったんだろうなぁ~と思った。
 気が抜けている私達を無視して、神官様は王様に話しかける。

 「陛下、この場を借りて行った判定は、無事終わりました。つきましては、勇者殿と聖女殿の処遇をお決め戴きたくお願い致します」
 
 水晶珠が片付けられたから、それと一緒に出て行けるかな?なんて、淡い期待はうらぎられる。
 やれやれ面倒くさいコトを言われなきゃイイけどという私達の視線の先で、侍従長らしき人が言う。

 「今回、召喚した勇者殿も聖女殿も、魔王と戦う能力があるコトを確認しましので、この城に滞在する許可が出ました。詳しい説明は控えの間にて、侍従と神官に聞くように………」

 「「「「「「「「…………」」」」」」」」








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