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★0009 プロローグ◆無知だった私は、そうとうやらかしてました

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 到着早々、別邸に付属する辺境騎士団の騎士達も、とにかく私にからんでくれました。
 自分達が、ここに居る存在意義を実感できると言って………。

 「オウマ様、公爵家の御曹司で
  この辺境の地にいらしたのは
  あなた様が、初めてでございます」

 「この辺境の様子を
  ぜひご確認下さるように
  お願いいたします」

 「神殿へ赴任の挨拶をしたら
  領地見回りに付き合おう」

 「はっ、ありがとうございます」

 「我ら一同、オウマ様の安全に………」

 なんか色々と言っていたが、面倒くさいから聞いているふりしてスルーした。

 私は、この地に住む領民達の為に、存在しているんだろう?と言いたい気持ちを抑えるのに苦労した。
 本当に苦労したよ。

 騎士ってかまってちゃんの大型犬の群れなの?って思いながら………。
 だって、めっちゃ暑苦しいんだよ。

 でも、主人である公爵家の人間達が誰も来ないから、さびしかったんだろうなぁ~………とも思った。
 まさに、遊びたいさかりの大型犬が群れで、私を取り囲んで『かまってぇ~』という感じで、わっほわっほしてるんだよ。

 主権在民って言葉は、この世界に存在しない。
 主権は皇帝や王、その地に住む貴族にある。

 これがこの世界の常識。

 私が、この辺境に赴任してくれたから、嬉しいと何度も言われた。
 勿論、その辺境に住む領民達も喜んでいた。

 だから、私は、騎士団の騎士達や別邸に勤める者達に、それなりの量の薬酒や霊酒や薬を与えた。

 単なるモブをきらきらとした瞳で、まるで憧れのアイドルを見詰めるような視線でじっと見られるコトに、いたたまれなくなったから………。

 お陰で、どこに居ても視線があって、プライバシーって食べれるの?状態になったしまった。
 それでも、小心者のモブな私は、領地見回りまでしてしまう。

 残念なコトに、廃村寸前な開拓村が幾つもあった。
 原因は、疫病とも言えない病………たんなる、風邪による人口激減。

 マジかよって思ったよ。

 ろくな灌漑設備が無い為に、乾いて痩せきったぱさぱさの土地。
 井戸は水量が少なく、濁っていても、新しい井戸を掘る余力が無い貧しい暮らし。

 一見すると豊かな森は、魔物が居る為に利用できない。
 武器の性能が………だから、討伐できない。

 お陰で、煮炊きや、暖をとる為の薪にも困窮している現実。

 私は、すぐさま騎士団の騎士達と領地内に、河か泉か沼が無いか確認させた。

 要するに、騎士団の騎士達と神殿の神官達や神官戦士達をこき使って、開墾と灌漑と井戸の掘削を目論んだ。

 対価は、まず上位貴族でも手に入らない、金の霊酒と言って………いや、自分で造るんで、懐の痛みがほとんどないんですよ。

 騎士達は、嬉しそうに探索に行ってくれたし、神官も神官戦士達もにこにこ笑って協力すると言ってくれた。

 マジ?と思うほど簡単に、私のやりたかった開墾も灌漑も井戸の掘削も進んで行く。

 水鏡が作れない私は、父に通信の魔法のかかった鏡を貰っていたので一応は、領地で色々なコトをしたいと言って許可はとっていた。

 井戸の掘削場所は、私がダウジングで場所を決めた。
 日本人の前世を持つ私ならできる………という、なんの根拠もない自信をもとに、やりました。

 実は、水の女神の神官達でも、井戸を掘る場所を見つけるのは、千三〈せんみ〉つ(=千回探査して三つ見付かる程度という低い確率)という状態に限りなく近いというのが常識だったんですよ(マジで?)。

 これは、日本人の持つ特性。
 転生しても、持っているようです………もしや、転生チートでしょうか。

 前世の日本では、水道局に勤める人間達は、ダウジングで漏水部分を簡単に見つける。
 微かな水音でも見つけるという能力を持つのが当たり前でした。

 その探知能力を持ってない方が、珍しいと言われていました。
 男性アイドル達が、色々なスローライフをするあの大震災で終わったテレビ番組でも、簡単に水源を見付けていたしね。

 でも、他国ではそんな簡単なモノではないらしいと知って驚いたコトを覚えています。

 だから、水源を簡単に見つけるコトに、私は何とも思っていなかった。

 ここで、得意げにしていれば、もう少し私の評価は変わっていたと思う。
 ………けど、当時はそんな大変なコトだとは思ってなかったから………。








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