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0014★~夢の中~怪我が多すぎる*side彪煌+瑛煌*
しおりを挟むスッと、瑛煌から差し出された救急箱を、彪煌は無言で平然と受け取って蓋を開ける。
「彪煌、この子 切り傷より足首の方が酷いぞ」
何時の間に用意したのか、瑛煌は手に濡れタオルを待っている。
それで、顔や素肌の出ている手足を丁寧に拭いた瑛煌が、腫れあがった足首を冷やしつつ、救急箱の中を物色している彪煌に声をかける。
「ああ理解っている、今、それの用意してる
取り敢えず、それを退かせ、シップを貼るから………
俺は治癒系の《力》は使えないんでな
残念だけど、地道にコレしかない」
彪煌《あきら》に言われて、瑛煌は足首に冷やす為に巻いた濡れタオルを取る。
「あぁ~…俺も治癒系はちょぉ~っと苦手だなぁ~………
いや、出来ないわけじゃないけど、血族じゃないしなぁ~………
《力》がちゃんと浸透するなら、何とかなるけどさぁ~
他人相手は、やったコトないから無理なんだよねぇ………」
そう言いながら、瑛煌は乾いたタオルで軽く腫れた場所を拭う。
その上に彪煌がシップを貼り付け、丁寧に包帯を巻いて行く。
瑛煌は彪煌が包帯を巻くのを見ながらぼやく。
「実際の話し、ウチで治癒系の《力》が上手に使えるのって………
銀條ンところの双子……那由多と霞那多ぐらいじゃん」
そのセリフに、彪煌はものすごぉ~くイヤそうな顔をする。
「あんなムサ苦しい野郎になんて治癒されたくねぇ~………」
「だよねぇ~………」
「頼むのもイヤだ」
「うん、頭なんてさげたくないしね」
などと言い合いながら、腫れているのが、はた目にもわかる足首に真っ白な包帯が目に痛いほどだった。
その間に、ズボンの裾を捲り上げて膝の治療をしていた瑛煌が確認の為に声をかける。
「彪煌、膝の方はこれで良いよな」
「ああ、それより、俺はこいつの身体の方が気になるな
腹を蹴られていたしな」
瑛煌の確認の言葉に答えながら、彪煌は動いても外れないように、幾分きつめに巻いた包帯の最後を器用に縛る。
彪煌の心配の言葉に、屋上から一緒に観察していた瑛煌も頷く。
「そうだよなぁ…あいつ等、見境なしだった見たいだもんな
取り敢えず、確認する為に、制服とシャツを脱がせて見たら」
言外に『そういうコト、得意でしょ』と言って来る瑛煌に、彪煌は無言で悠虎の制服とシャツの前を開き、首から腕を回して、丁寧に上半身を躊躇なく裸に剥いた。
そして、現れた裸体の上半身は………。
「あっちゃ~…マジかよぉ~…予想よりも酷いなぁ………」
現れた悠虎の裸体に浮かぶ青痣などの数々の鬱血に、瑛煌が眉を顰める。
「そんなコトを感心してる暇あるなら、手当しろよ」
彪煌は脱がせた制服とシャツを瑛煌に投け付け、ボソッと言った時には、既に悠虎の上半身の治療にかかっていた。
…………マジで瑛煌じゃねぇ~けど、コレは酷いな…………
…………まだ、成長しきってない華箸な身体にはヤバい…………
…………これだけの怪我は、どうしたって負担になる…………
…………下手すっと、成長阻害もありうるぞ…………
…………なんで、俺はこんなにコイツのコトが気になるんだ?…………
…………書類で知っているだけの相手のはずなのに…………
内心の複雑な思いに、彪煌は我知らすに無表情になって思う。
そんな彪煌の心情に気付かない瑛煌は、カサカサと救急箱から薬を出して言う。
「はいはい、んじゃ、その子の為に、痛み止めも用意しとくな
起きた時にでも飲めるようにさ」
そう付け加えて、瑛煌は水も用意して机に置く。
…………あれれれ?なんかなぁ~彪煌に引きづられてんのかなぁ…………
…………俺ってば、女の子ならいっくらでも気付かうけどさぁ~…………
…………男の子は、守備範囲に入んないんだよなぁ~…………
…………いや、彪煌だって男は守備範囲外のはずだけど?…………
そう思いながらも、瑛煌も、何時になくいそいそと行動する自分に首を傾げた。
「あっ、彪煌、軟膏はこっちのがいいと思うぞ
流石に、そこまで酷いと………ほいっ」
そう言って、瑛煌は引き出しから無印のチューブを彪煌に向かって投げる。
それは、治癒系が出来ない&苦手な2人が、酷い打撲用に、わざわざ瑛煌自身が、自分達専用に作ったモノで、かなり特別な効果がある特製の軟膏だったりする。
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