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0012★~夢の中~運命の子か確認したい*side彪煌*
しおりを挟む彪煌より、ほんの少し遅れて校庭の片隅にたどり着いた瑛煌が見たモノは、累々と横たわる者達の群れだった。
意識を残して呻めく者は稀で、殆どが完全に気絶していた。
瑛煌が遅れたほんの数分の間に、彪煌がここに集まった集団を全部一人でたいらげてしまったのだ。
で、唖然としている瑛煌の視線の先で、気丈にも最後まで意識を保っていた悠虎の頬を軽く叩き、彪煌が抱き上けていた。
悠虎は抱き上けられるのと同時くらいに、僅かに残っていた意識を手放した。
「あーあ、こいつら、何が起こったか理解って無いぜ、絶対
お前、どうせ一撃で伸したんだろ」
脱力した悠虎を腕に、瑛煌の前に来た彪煌が当たり前だと頷く。
…………これは当然の報いだ、申請してねぇーんだから…………
…………俺達の許可なく集団リンチなんてやらかしたんだから…………
…………まして、俺の運命かも知れない子に手を出したんだ…………
…………どうやら、瑛煌はこの子を見ても何も感じないようだな…………
「ああ、当然だろぉーが、誰に言っている
こんな輩、一撃で伸せなくてどうする
第一手応えも歯応えもなくて、軽い運動にもなねぇーよ
所詮、集団リンチしかできないようなこいつら程度じゃな」
華奢とはいえ、少年一人を腕に抱えているとは思えない足取りで彪煌が歩き出す。
「ああ…どこ行くんだぁ?」
瑛煌が不思議そうに問い掛ける。
なにせ、普段の行動パターンと違うのだから、瑛煌の疑問はもっともである。
実際、彪煌が自分の手で助けただけでも不思議なのに、腕に抱えて運ぶとは、かなぁ~り破格の扱いなのだ。
普段なら、こんな風に手を出した時でも、助けた?相手に手を貸すコトなどないのだから…………。
せいぜいが、良いとこつま先で軽く蹴って、チラッと状態を観察した後、興味なけに無視する程度である。
だから、瑛煌が彪煌に、どこに行くかと聞いても罪ではない。
「こういう時は、決まってるだろ」
短く言って、悠虎を抱き上げた彪煌は校舎の中に入って行く。
「待てよ、俺も一緒に行くって………」
そう言って瑛煌は、悠虎を腕に抱き、歩き始めた彪煌の後を追いかける。
『……?……んー……何かなぁー…彪煌ってばどうしたんだろう?』
そう不思議そうに呟いて、スタスタと揺ぎもしない足取りで前を行く彪煌に、瑛煌は走ってその背に追い付く。
その瑛煌に、彪煌は視線で好きにしろと答えた。
黙々と歩いて数分後、医務室の前に来て、彪煌は困ってしまった。
到着したのは良いのだが………医務室は役立たずだった。
保健医がいないのはまあ良いとして、医務室の鍵も閉まっていたのだ。
「あっ、そっかぁー、彬センセイ、今日休みだったんだっけ
どうする、その子?屋上から観察してたけど
かなり負傷していると思うんだよねぇ………」
その子どうする?と、悠虎を瑛煌が指さす。
…………ふ~ん…あのセンセイは居ないのか…………
…………どうするかって、勿論お持ち帰りしますけど…………
…………確かに、かなりヤバい感じに蹴り入ってたよなぁ…………
…………この子の身体の負傷も気になるけど…………
…………それよりも、この子が運命の子かどうか知りたい…………
…………見た感じ瑛煌は何も感じてねぇーようだな…………
…………ここは、もっともらしいコトを言って連れて行こう…………
…………じっくりと、俺にかかわる運命の子か確認したいしな…………
「フム、居ないなら仕様が無いな、生徒会長室の仮眠部屋にでも運ぶか
あそこなら、誰もこねえーし、奥にべットも有るからいいだろう」
一人納得し、彪煌はフッと軽い嘆息を吐いて、二階の隅に設備されている中等部の生徒会長室に向かう。
ちなみに、悠虎と彪煌はひとつ違いだったりする。
「えー、マジかよ、生徒会長室の仮眠部屋に入れるわけ
裏組織の側近でもない、生徒会役員という部下でも無い子を?
まして、女(=彪煌の、その日その日のお相手)でも無いのに?
いくら医務室が開いて無かったからって、マジかよ」
心底不思議そうに言う瑛煌に、軽く一瞥を与え、無言で静かな廊下を進むのだった。
時間はというと、まだ午前中で、二時限目の真っ最中だったりする。
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