煉獄の中の溺愛

ブラックベリィ

文字の大きさ
上 下
1 / 57

0001★始まりは………

しおりを挟む


 それは、悠虎ゆうとが七歳の時のに起きた、突然の出来事だった。
 まるで物語ものがたりに出て来るような、夜叉やしゃのような嫉妬と怒りに狂った表情を浮かべ、父に向かって叫ぶ母。

 そんな母に対して、父はその状況がおかしいとでもいうように、口端に笑みすら浮かべていた。

 そして、見知らない髪の長い女性が、父の腕に絡みついて、母に向かって嘲笑わらっていた。

 記憶に残るような、赤い…紅い…わらう真っ赤な唇。
 酷く張り出た胸とお尻を持つ、まるでモデルのような女性。

 まだ幼い悠虎ゆうとでも、その状況が何を意味するか、理解わかった。
 その認識が正しいかどうかは別として、幼い悠虎ゆうとには、そう見えた。

 そう、世間一般で言うところの、不倫というモノで、目の前でのやり取りが痴情のもつれだと………。
 最初は、そう思った悠虎ゆうとだった。

 そして、そんな状況にもかかわらず、父は酷く残念なモノを見る、いっそ哀れみすら帯びた、不似合いな微笑ほほえみを浮かべて、自分の妻であり、悠虎ゆうと達の母・明音あかねを見詰めていた。

『クスクス…うふふふ…残念だったわねぇ~……明音あかねさん
 その子、七つになったのになぁ~んの能力も顕現けんげんしなかったのね

 悠一郎ゆういちろうさんの子なのにねぇ~……最初の子が能無し 
 というコトは、残りの子達も期待できないわねぇ~…………』
 
 そうあざる真っ赤な唇の女は、チラリと悠虎ゆうとを見て首を振る。

『その子と半年違いの私の子、悠護ゆうごはね
 たった三つで、能力が顕現化けんげんかしたわよ

 妊娠した明音あかねさんとの駆け落ちを許す代わりに
 私と子供を作るっていう交換条件でね

 今まで悠一郎ゆういちろうさんは、自由でいられたの
 そう、その子が七つになるまでという期限付きでね

 でも、その子……悠虎ゆうと君は、能力が何も発現しなかった
 そう、大概の者は七つの誕生日までに、何らかの能力が発現するから

 もしも、類い稀な能力が、七つまでに顕現化けんげんかしていたなら
 悠一郎ゆういちろうさんは、この先も自由なままだったのよ

 くすくす…でも残念なコトに、何も発現しなかった
 だから、悠一郎ゆういちろうさんは一族に帰るコトになるの

 そして、私と次の子を作るのよ……それが一族の望みだから
 いくら明音あかねさんがすがったって、これは変わらないわ

 だって、貴女の産んだ子供達に、能力が発現する可能性はほぼ無いもの
 好き合っての駆け落ちだから期待していたのよ

 きっと、高い能力の子が生まれるかも…………ってね
 だけど、実際にはなぁ~んの能力も無い無能者

 貴女は、悠一郎ゆういちろうさんに優秀な子供を提供できなかった
 だから、これ以上を悠一郎ゆういちろうさんに縋るのは諦めなさい

 さぁ~帰りましょう悠一郎ゆういちろうさん、皆が待っているわ
 ちゃんと能力のある子が産める私が、何人も産んであげるわ

 勿論、貴方を狙っている女達からも、ちゃぁ~んと護ってあげるわ
 だから、貴方が抱くのは私だけよ

 さぁー…もう、ここには未練なんて無いでしょう…ね』

 そう言って、悠一郎ゆういちろうは腕を取られるまま、真っ赤な唇の女と共に玄関を出て行った。
 一度も、悠虎ゆうとを振り返らないまま…………。

 そして、二度とその姿を見せるコトは無かった。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

優等生の弟に引きこもりのダメ兄の俺が毎日レイプされている

匿名希望ショタ
BL
優等生の弟に引きこもりのダメ兄が毎日レイプされる。 いじめで引きこもりになってしまった兄は義父の海外出張により弟とマンションで二人暮しを始めることになる。中学1年生から3年外に触れてなかった兄は外の変化に驚きつつも弟との二人暮しが平和に進んでいく...はずだった。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

官能を暴き、屈辱を貢ぐ

クズ惚れつ
BL
物腰柔らかなサディスト有能編集者(24)×プライド高い人間嫌い性欲強め官能小説家(27) 「エロはファンタジーだからリアルではしたくない」主義の処女童貞官能小説家、蜘蛛野糸一(くものいといち)と、「作品にリアリティを持たせるため小説家に性的行為を強要する」サディスティックな担当編集者、一ノ瀬貢(いちのせみつぐ)。 蜘蛛野が執筆した小説の濡れ場のワンシーンを模したエロを強要する。嫌悪してやまないリアルの性的行為を、男、さらに年下の担当編集に強要される辱め。そして、自分が執筆した性描写を自身で再現させられ、同時に自分の作品にダメ出しをされる屈辱に、蜘蛛野のプライドはズタズタに引き裂かれる。 「至極の官能小説を執筆させる」ために一ノ瀬はアブノーマルなセクハラを繰り返すが、それは建前で、彼の嗜虐心を満たすための玩具に過ぎないのかもしれない。 ※単話でも読めます ※ほぼずっと濡れ場 ※不定期更新

処理中です...