上 下
319 / 328

0319★神護は手配書に首を傾げる

しおりを挟む


 神護の言葉に、白夜は内心で嘆息する。

 〔私の謎な成長ですかぁ……
 たぶん グレンやシレイに そういう情報は無いと思いますよ

 【転生術】という秘術は 飛翔族ひしょうぞくの王族の中でも
 秘術中の秘術で 存在自体を知っている者などほんの一握りなんだけど

 心配させたくないし…… 父上には 言わないでおこう
 仮に グレンやシレイが 多少のコトを知っていたとしてもねぇ
 私以上は知らないだろうから

 たぶん…【転生術】という禁断の秘術に一番詳しいのは 私だろう
 今は亡き父上 鳳皇ほうおうラー・シン・ビャクレイすら知らない

 そういう古書の存在自体が あの場所に隠蔽されていたモノだからねぇ
 私とて あの隠し部屋を見付けたのは偶然の産物だったのだから

 まぁ 隠匿された理由も今ならば よぉ~く理解りかいできる
 たとえ 【転生術】が成功したとしても 成人できなかったのだろう

 【守護者】の《契約けいやく》があっても 裏切られたのだろう
 だから 隠されたのだろう

 それでも 貴重な魔導書ゆえに 抹消するコトは出来なかったのだろう
 でも 父上にそんなこと言えないから これは黙っておこう〕

 希望観測を口にする神護の腕に抱え上げられた白夜の翼は、先端が抱き上げた神護の膝をゆうにこえていた。
 これ以上、翼が成長すると、神護でも手に負えないコトになるのは目に見えていた。

 う~ん…こりゃ~…困ったなぁ……いやマジで…どうしよう
 白夜を抱き上げていた最初の頃は、背中に飾りほどだったし……

 成長しても、せいぜいが腰ぐらいの位置に先端があったんだがなぁ……
 本当に、随分と大きくなったなぁ~……

 ぅん? いや…それでも…身体も少し大きくなったかな?
 翼の方が、如実に大きくなったから気付かなかったけど

 こうして抱き上げた時の視線の位置が、少し高くなってるな
 確実に、翼だけじゃなく、身体の方もきちんと大きくなってるな

 その白夜の事実に気付いた神護は、にっこりと笑って言う。

 「ほら、白夜、視線の位置が高くなってるの判るか?
 身体も、少しだけど、大きくなったようだぞ

 なに、ここでゆっくりと過ごせば身体も大きくなれるさ
 大きくなった翼に身体が追い付くのもそう遠くないだろう
 だから、少しの辛抱だな」

 神護の言葉に、落ち込んでいた白夜は、嬉しそうに微笑わらう。

 〔あっ…本当だ 父上の視線が 何時もより近い位置にある
 本当に 私の身体も成長しているのだな よかったぁ~…〕

 神護の言葉に納得した白夜は、無意識に翼をパタパタする。

 おっ…機嫌が直ったようだな
 ほんと、白夜って判りやすいなぁ……
 ……ぅん? 飛翔族ひしょうぞくの肖像画入りの張り紙?

 wanted…かな? ああウォンテッドって読めるな
 あんまり、こっちの文字はよく理解わからないけど
 譲渡された知識のお陰で、なんとか読めるな

 幸いなコトに、今回は頭痛や眩暈めまいを引き起こさなかったな
 少しは情報処理されて来ているってコトでいいのかな?
 じゃなくて……ようするに、あの張り紙は手配書なんだな

 手配書が壁に貼られているってコトは、探しているってコトだよな
 ふむ…この飛翔族ひしょうぞくの男ってどういうヤツなんだ?
 ああ……でも、やっぱり上手く読みとれねぇ~…

 後でマデルに、手配書が張られているか聞いてみるかな?
 でも、顔立ちや背格好とかを考えると……

 今の白夜が大きくなったら、ああいう感じになるのかなぁ?
 ふむ…結構、男前じゃん

 そう神護はそんなコトを思った。
 ちなみに、そこに張られていたモノは【転生】をする前の白夜だったりするが、神護はそんなコトに気付くことはなかった。

 雨風の汚れもあるが、手配書を書いた者の画力がかなり低かったセイも会ったりする。
 そして、たまたま目に入っただけで、そういう意味で興味がなかった為である。

 いや、白夜の話しをちゃんと聞いて、そこに張られている手配書の内容を深く考えて精査したなら、探されているのが【転生】前の白夜だと理解わかることだったのだが…………。

 なまじ一種のカメラアイに近い記憶力を持つ神護だけに、興味の無いことは余分な記憶となるので覚えない主義に徹していた為に、スルーしたのだ。
 だから、そこに神護の思考が行くことは無かった。
 そんな神護に、マデルが声をかける。

 「だんなぁ~…ここが、あっしの店でさぁ~…
 この裏が家になってますんで……

 翼が成長した坊ちゃんを、早く休ませる必要もありましょうから……
 とりあえず、ここで馬車を降りましょう

 その馬車は、ウチのモンが移動させますから………」

 そう言って馬車を停め、御者台から降りるマデルに、神護は肩をちょっとだけ竦めて頷く。

 「そうだな……っと、そうだ…マデル……悪いんだけど
 もう少し間口が広くて、室内の広い馬車を用意できるか?

 流石に、こいつの翼がこぉ~んなに大きくなっちまったんでな
 この馬車の出入口だと、出入りがきついんだよ

 なに、飛翔族ひしょうぞくの者が居たら買い取る予定だからな
 馬車は何台あっても困らないからな……
 とにかく、できるだけ出入りする為の間口が大きいのを頼むわ

 それと、あそこの壁に貼られている張り紙の男
 見た感じ飛翔族ひしょうぞくの男らしいけど
 どういうヤツなんだ?

 俺、こっちの文字ってよく判らないんだよなぁ
 一応、なんとか一部は読めるから、アレが手配書なのは判るけど
 その程度でさ……」







しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

クラス転移でハズレ職を押し付けられた『ガチャテイマー』、実は異世界最強 〜俺だけ同じ魔物を合成して超進化できる〜

蒼月浩二
ファンタジー
突然高校のクラス丸ごと異世界に召喚され、一人に一つ職業が与えられた。クラス会議の結果、旭川和也はハズレ職である『ガチャテイマー』を押し付けられてしまう。 当初は皆で協力して困難を乗り越えようとしていたクラスだったが、厳しい現実を目の当たりにすると、最弱の和也は裏切られ、捨てられてしまう。 しかし、実は最弱と思われていた『ガチャテイマー』は使役する魔物を《限界突破》することで際限なく強化することのできる最強職だった! 和也は、最強職を駆使して無限に強くなり、いずれ異世界最強に至る。 カクヨム・なろうで クラス転移でハズレ職を押し付けられた『ガチャテイマー』、《限界突破》で異世界最強 〜★1魔物しか召喚できない無能だと思われていたが、実は俺だけ同じ魔物を合成して超進化できる〜 というタイトルで連載しているものです

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...