上 下
317 / 328

0317★翼が大きくなり過ぎて大変です

しおりを挟む

 普通ならば、どの自走肉食植物の果実でも、その一つを食べた段階で、身体に保有するエネルギーがいっぱいいっぱになる。
 そうなると、このファンタジー世界のことわりによって、腹いっぱい食べて、エネルギーが完全に飽和した者は、自動的に寝てしまうのだ。

 このファンタジー世界の住人の大半が獣人の為、たくさん食べて、高エネルギーを得ると、眠って成長する性質を持っていたりする。

 ちなみに、獣相の無い人族は、現在希少価値な存在で、一部地域にしかいない状態だったりもする。
 神護に自覚は無いが、神護自身もかなぁ~の希少種なのだ。

 そして、それゆえに、人攫いを生業とする者達からは、飛翔族ひしょうぞくの白夜以上に、ある意味で垂涎のモノだった。
 神護は知らないコトだが、ただ単純に、今までは飛翔族ひしょうぞくの子供である白夜を狙ったやからとしか遭遇していなかっただけなのである。

 それはさておき、エネルギーが完全に飽和した者は、自動的に寝てしまうような習性は、飛翔族ひしょうぞくである白夜も該当するのだ。

 ただ禁断の秘術である【転生】などという荒業をした白夜は、本来持っていた《力》を取り戻すことを、無意識の底で心底望みながら、果実を食べていた。
 その為、その背に出現し、成長し始めた翼が秘めている祈願成就の《力》を無意識に発動させてしまっていたのだ。

 その発動された祈願成就の《力》によって、眠って成長するという本来の成長プロセスが選択肢から外れ、眠らずに済んだのだ。
 その代わりとして、祈願成就の《力》を内包する翼が、白夜の願望を反映して大きく成長してしまったのだ。

 まさしく卵が先かニワトリが先かを地でいく白夜だった。
 何と言っても、飛翔族ひしょうぞくの者が背負う翼の大きさは、祈願成就の《力》を左右する重要なファクターなのだから。

 勿論、色も白色であるコトは重要ではあるのだが、本来、飛翔族ひしょうぞくの者が背負う翼には、大なり小なり祈願成就の《力》を内包しているモノなのだ。

 だが、いかに飛翔族ひしょうぞくの者とは言え、清廉潔白な者達ばかりではない。
 そのこころが、欲望によってよどにごると、その翼に内包されている祈願成就の《力》を発揮できなくなるコトがままあるのだ。

 そして、その欲望によるよどみやにごりのセイで、寿命も損なわれて、短命になってしまうのだ。
 祈願成就の《力》は、その身に相応しい行いをしないと、反作用するある意味では怖い《力》なのだ。

 飛翔族ひしょうぞくの一角である茶羽根一族ちゃばねいちぞくの長であるロー・ブラン・カルンチャイは、そのことわり理解りかいしないがゆえに、自分の翼が秘めている祈願成就の《力》に気付くコトが出来なかったのだ。

 そして、茶羽根一族ちゃばねいちぞくは、欲望にくもった思考のまま間違った選択(強い《力》を持つ白翼はくよくの王族の血筋を奪う為の裏切り)をして、自分の一族を地獄へと落としたのだ。
 勿論、茶羽根一族ちゃばねいちぞく飛翔族ひしょうぞくであるがゆえに、黒き河の国の王ジャハード・ムハーリ・ハーリィアの配下達へと分け配られたのは確かな事実だった。

 ただし、そこまでの長き寿命や《力》を得られる血筋ではないので、下級士官などが主な褒賞先となっていた。
 それが、己の翼に内包されていた祈願成就の《力》の反作用によるモノかは、流石の女神サー・ラー・フローリアンでも預かり知らないコトだった。

 それはさておき、本来、白夜のような白翼はくよくを有する飛翔族ひしょうぞくの王族が行うコトが出来る秘術は、後世の為にと、魔石を練り込んだ宝珠に、それまで蓄えた知識や《魔力》を込めるコトぐらいだった。
 また、緊急時には、その宝珠を使って、空間転移などを行っていた。

 だが、長く続いた平和によって、その秘された秘術や宝珠は、何時の間にか消失していたのも、確かな事実だった。
 それゆえに、皇子である白夜達が、白翼はくよくを有する皇統の血筋の姫巫女達を、敵の手の届かない場所へと移す為の時間稼ぎをしたのだ。

 そして、白夜は禁忌とされた【転生術】に手を出したのだ。
 禁断の魔導書には、【転生術】を施すと、身体の全てか粒子となって嶺鳥れいちょうの卵へと吸い込まれると書かれていたのだ。

 白夜は、自分の身体のカケラの一部でも残ったりすれば、呪術などの形代にされる可能性があるコトを懸念していた。
 だが、自身に【転生術】を施すコトによって、自身の全てを嶺鳥れいちょうの卵へと入れ込むコトに成功したのである。

 確かに、知識や《魔力》などを神護に譲渡したが、白夜本人の知識が無くなるようなコトではなかった。
 だから、上手うまく【転生術】が成功したなら、【転生】前に持っていた《力》を取り戻すことが出来ると試算したのだ。

 自分は、完全な【転生】を果たすのだとこころに決めながら。
 だから、まっさらな新しい命として誕生しない為、大抵は【転生】前に持っていた《力》以上には、世界のことわりに従って成長しないともいう。

 そう【転生術】を行った時点で、完全に祈願成就の能力などの翼の大きさが関係する《力》のたぐいの成長は止まるので、それ以上は成長できないのだ……本来は。
 それまでの生きてきた経験などの影響で【転生】しても、そこから先に成長する為のキャパが存在しないらしい。

 だが【転生】する為の場所と【転生】期間(卵から孵り、成人体になるまで)の間を守護してくれる者を探していた白夜は、独り静かにたたずむ神護を見初めた瞬間に、流浪るろうによる疲労の為か、一目惚れの為かは判らないが、正式な守護者としての《契約けいやく》を結ぶ間も無く【転生術】を施した卵に、ズルリッと引き込まれてしまったのだ。

 卵の中に引き込まれる直前に、かろうじて、神護に口付けて《魔力》や知識の譲渡は果たせたものの【転生】期間の間、か弱い自分を護り育てる為の守護者としての正式な《契約けいやく》を結べていなかった。
 それゆえに、白夜と神護の間には、正式な《契約けいやく》が成立していない為、《契約けいやく》とも呼べないような関係になってしまっていたりする。

 そう、守護者の《契約けいやく》というならば、それ相応の対価が必要なのだが、報酬の話しをする間も無く、白夜は術を施した卵に引き込まれてしまったのだ。
 もっとも、そのお陰で、不完全な【転生】をした白夜は【転生】の後も成長する要素を残していたりする。
 ただし、本人はその事実を知らない。
 当然、神護もそんなコトはカケラも気にしてないし、気付いてもいなかったのは言うまでもない。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...