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0317★翼が大きくなり過ぎて大変です
しおりを挟む普通ならば、どの自走肉食植物の果実でも、その一つを食べた段階で、身体に保有するエネルギーがいっぱいいっぱになる。
そうなると、このファンタジー世界の理によって、腹いっぱい食べて、エネルギーが完全に飽和した者は、自動的に寝てしまうのだ。
このファンタジー世界の住人の大半が獣人の為、たくさん食べて、高エネルギーを得ると、眠って成長する性質を持っていたりする。
ちなみに、獣相の無い人族は、現在希少価値な存在で、一部地域にしかいない状態だったりもする。
神護に自覚は無いが、神護自身もかなぁ~の希少種なのだ。
そして、それゆえに、人攫いを生業とする者達からは、飛翔族の白夜以上に、ある意味で垂涎のモノだった。
神護は知らないコトだが、ただ単純に、今までは飛翔族の子供である白夜を狙った輩としか遭遇していなかっただけなのである。
それはさておき、エネルギーが完全に飽和した者は、自動的に寝てしまうような習性は、飛翔族である白夜も該当するのだ。
ただ禁断の秘術である【転生】などという荒業をした白夜は、本来持っていた《力》を取り戻すことを、無意識の底で心底望みながら、果実を食べていた。
その為、その背に出現し、成長し始めた翼が秘めている祈願成就の《力》を無意識に発動させてしまっていたのだ。
その発動された祈願成就の《力》によって、眠って成長するという本来の成長プロセスが選択肢から外れ、眠らずに済んだのだ。
その代わりとして、祈願成就の《力》を内包する翼が、白夜の願望を反映して大きく成長してしまったのだ。
まさしく卵が先かニワトリが先かを地でいく白夜だった。
何と言っても、飛翔族の者が背負う翼の大きさは、祈願成就の《力》を左右する重要なファクターなのだから。
勿論、色も白色であるコトは重要ではあるのだが、本来、飛翔族の者が背負う翼には、大なり小なり祈願成就の《力》を内包しているモノなのだ。
だが、いかに飛翔族の者とは言え、清廉潔白な者達ばかりではない。
そのこころが、欲望によって澱み濁ると、その翼に内包されている祈願成就の《力》を発揮できなくなるコトがままあるのだ。
そして、その欲望による澱みや濁りのセイで、寿命も損なわれて、短命になってしまうのだ。
祈願成就の《力》は、その身に相応しい行いをしないと、反作用するある意味では怖い《力》なのだ。
飛翔族の一角である茶羽根一族の長であるロー・ブラン・カルンチャイは、その理を理解しないがゆえに、自分の翼が秘めている祈願成就の《力》に気付くコトが出来なかったのだ。
そして、茶羽根一族は、欲望にくもった思考のまま間違った選択(強い《力》を持つ白翼の王族の血筋を奪う為の裏切り)をして、自分の一族を地獄へと落としたのだ。
勿論、茶羽根一族も飛翔族であるがゆえに、黒き河の国の王ジャハード・ムハーリ・ハーリィアの配下達へと分け配られたのは確かな事実だった。
ただし、そこまでの長き寿命や《力》を得られる血筋ではないので、下級士官などが主な褒賞先となっていた。
それが、己の翼に内包されていた祈願成就の《力》の反作用によるモノかは、流石の女神サー・ラー・フローリアンでも預かり知らないコトだった。
それはさておき、本来、白夜のような白翼を有する飛翔族の王族が行うコトが出来る秘術は、後世の為にと、魔石を練り込んだ宝珠に、それまで蓄えた知識や《魔力》を込めるコトぐらいだった。
また、緊急時には、その宝珠を使って、空間転移などを行っていた。
だが、長く続いた平和によって、その秘された秘術や宝珠は、何時の間にか消失していたのも、確かな事実だった。
それゆえに、皇子である白夜達が、白翼を有する皇統の血筋の姫巫女達を、敵の手の届かない場所へと移す為の時間稼ぎをしたのだ。
そして、白夜は禁忌とされた【転生術】に手を出したのだ。
禁断の魔導書には、【転生術】を施すと、身体の全てか粒子となって嶺鳥の卵へと吸い込まれると書かれていたのだ。
白夜は、自分の身体のカケラの一部でも残ったりすれば、呪術などの形代にされる可能性があるコトを懸念していた。
だが、自身に【転生術】を施すコトによって、自身の全てを嶺鳥の卵へと入れ込むコトに成功したのである。
確かに、知識や《魔力》などを神護に譲渡したが、白夜本人の知識が無くなるようなコトではなかった。
だから、上手く【転生術】が成功したなら、【転生】前に持っていた《力》を取り戻すことが出来ると試算したのだ。
自分は、完全な【転生】を果たすのだとこころに決めながら。
だから、まっさらな新しい命として誕生しない為、大抵は【転生】前に持っていた《力》以上には、世界の理に従って成長しないともいう。
そう【転生術】を行った時点で、完全に祈願成就の能力などの翼の大きさが関係する《力》のたぐいの成長は止まるので、それ以上は成長できないのだ……本来は。
それまでの生きてきた経験などの影響で【転生】しても、そこから先に成長する為のキャパが存在しないらしい。
だが【転生】する為の場所と【転生】期間(卵から孵り、成人体になるまで)の間を守護してくれる者を探していた白夜は、独り静かにたたずむ神護を見初めた瞬間に、流浪による疲労の為か、一目惚れの為かは判らないが、正式な守護者としての《契約》を結ぶ間も無く【転生術】を施した卵に、ズルリッと引き込まれてしまったのだ。
卵の中に引き込まれる直前に、かろうじて、神護に口付けて《魔力》や知識の譲渡は果たせたものの【転生】期間の間、か弱い自分を護り育てる為の守護者としての正式な《契約》を結べていなかった。
それゆえに、白夜と神護の間には、正式な《契約》が成立していない為、《契約》とも呼べないような関係になってしまっていたりする。
そう、守護者の《契約》というならば、それ相応の対価が必要なのだが、報酬の話しをする間も無く、白夜は術を施した卵に引き込まれてしまったのだ。
もっとも、そのお陰で、不完全な【転生】をした白夜は【転生】の後も成長する要素を残していたりする。
ただし、本人はその事実を知らない。
当然、神護もそんなコトはカケラも気にしてないし、気付いてもいなかったのは言うまでもない。
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