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0316★自走肉食植物の果実が美味しすぎたのが原因です

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 そんなことを考えながらも、神護はマデルの飛翔族ひしょうぞくの者を買ってはどうかという提案に頷く。

 「そんじゃぁ~……飛翔族ひしょうぞくの者を買うかな
 まずは、その紅の将軍とか白銀の王子とやらを買いあさるとするかぁ?
 他に、飛翔族ひしょうぞくの者はいるのか?

 いるんなら、買ってきてくれねぇーか?
 代金は、あのマンドラゴラ達でイイかぁ?

 もし、購入するのに代金が足りないようなら言ってくれ
 そしたら、また何か良さそうな獲物を獲るからさ」

 マデルにそう言ってから、神護は膝上に抱き上げて、翼の根元に痛みを和らげる治癒系の魔術を施していた白夜の様子を確認する。

 「…ぅん……なんとか…翼の成長はおさまったかな?
 そんじゃ、とりあえず、ゆっくりと白夜を休ませてやりたいから
 マデルさんの店に案内してくれよ」

 神護の言葉に、マデルはコクコクして案内する。

 「はいはい……そんじゃ~……とりあえずは、ウチに行きましょう
 こっちでさぁ~……」

 〔ふむ、紅の将軍にしろ、白銀の王子にしろ
 持て余しているという噂もあったし……

 だんなの息子が長生きするかもわかんねぇ~んだから
 その辺をごり押しして、できるだけ安く買い叩いてやりましょうか

 その分、たぁ~ぷりと手数料をもらいましょう
 ほんとぉ~に、兄上はイイだんなを紹介してくれましたねぇ~……

 ここは、だんなが欲しがるモノは、ぜぇ~んぶ我が一族で揃えて
 信用とたぁ~ぷりの極上の商品と手数料をもらいましょうかねぇ〕

 踊る心そのままに、ウホォウホォと無意識の嬌声を上げて、御者台で短めの尻尾を楽しそうに振りながら、前を行くマデルの馬車の後に、自分の馬車を引く馬が付いて行くように、神護は指示を出す。

 基本的に、馬と感合している為、意思力が強ければ、それに反応するので、手綱で軽く指示を出すだけで、意思疎通できるのだ。
 以心伝心で切るほど深く感合できる、そういう意味で、血統が優秀な馬達(飼い主の意思力と、相性と、適合率もかなり影響する)は、そう多く無い。

 その為、その場に居た門を警護する兵士達は、御者台で白夜を膝に抱いたまま、軽く手綱をさばいたきり、白夜の様子を心配そうに伺っている神護を、感嘆の視線で見ていたのだった。

 そんな視線に気付く余裕の無い神護は、もう、翼を隠すように覆うことが出来なくなった布を軽くたたんで、出入り口になっている棚の一つに放り込む。

 「とりあえず、マデルの家で休ませてもらうことにしたぞ
 もう少しだけ辛抱してくれな、白夜
 そしたら、ゆっくりできるから……」

 再び大きく成長した翼に嘆息しながらそう言う神護に、白夜は健気に微笑わらって頷く。

 「はい 父上 急に成長したんで 驚いたのと
 ちょっと…背中の…翼の付け根の皮膚が 両方同時に裂けた時は
 流石に痛かったけど
 今は もうそこまで痛くはありませんから 大丈夫です

 彩湖さいこ王国の東の端にある美里みさと街の防護壁の門を潜って
 街中に入ったコトで たぶんに気が抜けていたんだと思います

 翼の成長は 十分に予測できたコトなのに 気が抜けていたセイで
 成長の時の痛みを 意識から逃がしきれなかっただけですから……」

 白夜の言葉に、神護は少しだけ苦笑いする。

 「そうだなぁ……
 そんなに身長よりも大きく長大に、お前の翼が成長したのも
 栄養価がとびっきり高い果実を食べ過ぎたセイかもしれねぇ~しなぁ

 あの自走肉食植物達の果実が美味かったからって、結構食べただろう
 うん、白夜」

 神護がそう言うのももっともで、白夜は短時間の間に、マンドラゴラの果実を五つ、ラフレシアの果実を三つ、ベラドンナの果実を三つ、ペロッと食べていたのだ。
 神護に、ソレを指摘された白夜は、ペロリッと舌を出す。

 そして、白夜は姿に反映した子供っぽい口調で、神護に言う。
 神護がなんとなく、子供っぽい自分を好んでいるのを無意識に察知しての行動だった。

 「だって 本当に美味しかったんですもん……
 なんとなくでも お腹も空いて来たなぁ~って思っていたところに
 あんなに 甘くて美味しい果実を目にしたら食べたくなりますよ

 だって まだ私は成長期ですもん 身長だって伸びるはずですし
 少しぐらい食べ過ぎても ぜぇ~んぶ栄養になるから平気です」

 再び急成長したことによる背中の痛みを無視して、白夜は神護にそう言いながら、内心ではちょっと後悔していた。

 〔それに 早く大きくなって 父上を護れるようになりたいんです
 こんな風に 何時も心配ばかりかけているのは 心苦しいから……

 今の私は どう考えたって父上のお荷物でしかないから……
 父上に護られる者ではなく 対等の飛翔族ひしょうぞくの者として

 本音を言えば 求婚できるだけの力や身体を手に入れたいのだから
 その為にはたっぷりと食べて【転生】前の《力》や身体を手に入れたい

 何時になったら 完全な成人体へとなれるか判らないのが痛いな
 一族の口伝による伝承には 残念なコトに【転生】をした者の
 その後の話しなどは、無かったし……

 本当に 私は ちゃんと成人できるのだろうか?
 そういう記録が存在して無いだけに
 【転生】後に どういう風に成長するか判らないのが少し不安だな

 外敵という意味でなら 父上が 私を護ってくれるけど……
 できるかぎり たくさんの栄養のあるモノを食べて
 早く身体に《力》を溜めて成長したい

 本当は翼じゃなくて 身体が大きくなって欲しかったんですけどねぇ
 いや 祈願成就の《力》の大きさを現す純白の翼は
 確かに 大きいにこしたことはないが………

 どうせなら 今は 切実に 身体の方が大きくなって欲しい
 この小さな姿が父上のお気に入りだとしても 大きくなりたい〕

 そんな本人の願いもむなしく、白夜が食べた自走肉食植物の果実という、高エネルギーの栄養は、ほとんど、ぜぇ~んぶが翼の成長へと変換されていたのだった。











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