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0314★白夜は混血児と誤解されたようです
しおりを挟むほとんど、御者台に座る神護の膝に縋るように蹲る白夜の背中で、その翼は今もミシミシという音をたてて成長していた。
傍目には、どんな風に見えているんだか?
……流石に、困ったなぁ……どうしたもんか………
困惑と動揺で揺れる神護の様子に同情した、アデルの弟・マデルが、恐る恐る声をかける。
「だんなぁ~………その、お子さん……
もしかして、飛翔族との混血なんですか?」
何を言ってイイか分からないという表情で、無意識に問うアデルの弟に、神護は苦笑して肩を竦める。
背中の肉を引き裂くようにして、ミシミシと成長する翼の根元に、治癒の呪文を唱えて、取り敢えず、痛みを抑えてやる。
ふむ………そういう風に見えるのか? なら、それで通しちまえ
どうせ、俺だって、白夜のことは、よく分からないんだからな
取り敢えず、それらしく答えればいいかな?
もしかしたら、何らかのイイ情報が入るかもしれないもんな
だから神護は、切り替えた内心を隠し、困ったような表情でマデルの問いかけに答える。
「ああ……見ての通りだよ………なんつぅーか…俺の息子は
こんな風に、得体の知れない成長のしかたをするんでな
誰か、イイ相談者を紹介してくれねぇーか?
こいつの母親はなぁ………無事に産んだのは良いが……
その産後の肥立ちが悪かったのか、儚くなっちまったんでよぉ
飛翔族のコト(成長)を聞くコトが出来ないんだよ
実は、それで困っていてなぁ……
この美里街に、飛翔族がいるって噂を聞いて
ここまで旅をして来たんだ」
もっともらしく、グレンの噂のコトを匂わせながら言う神護に、アデルの弟・マデルは困ってしまう。
流石に、混血児は短命だというコトを知らないらしい神護に向かって……。
『もう、お子さんの命も長くありませんね』
と、言うこともできずに、苦し紛れに答える。
「あっ…それでしたら、同じ飛翔族の者を見付けて
購入しては如何ですか?
もう、 飛翔族の里や国と呼ばれていたところは……
その…壊滅してますから……
飛翔族の者は捕らえられて、奴隷に堕ちた者しか
実は、生き残っていないって話しですから……
子供の成長については、成人している者に聞くのが一番でしょうしねぇ
たしかに、最近のコトですが、紅の将軍と呼ばれていた
飛翔族の王族の者を、奴隷として飼っている王様が
この美里街に、飛竜(=ワイバーン)を買う為に来ておりますよ
うまく、交渉すれば手に入れられかもしれませんよ
なんでしたら、だんなのお子さんのお友達として
飛翔族の者を購入してはどうでしょうかねぇ?
やはり別の国…と言っても、この国の隣国の波璃湖王国の将軍が
飼っているって噂の白銀の王子なんてモノも、イイかもしれません
こういう時の処置ってモンは、一刻を争いますからねぇ……
もし、だんながご要望でしたら、ここはあっしらが
先方さんと、交渉しますから…………」
自分でも、何を言ってるんだかと思いながら、アデルの弟・マデルは、混乱した頭で、神護に必死で提案する。
そこに、ようやく、神護が放り出してきた荷物と、獲物を回収し終えた男達が、城壁の門の中へと駆け込んで来る。
「どうしたぁ?……あっ……ヴッ……もしかしなくても…混血児?」
「うわぁぁぁ~……大変だぁ~……早く、何らかの治療をしないと
お子さんの命にかかわりますよ……えぇ~と……あっ…神官…いや……」
言葉を無くして、それぞれがなんともいえない反応をする男達に、神護は肩を竦めた。
「はははは………まっ…そう慌てなくてもイイぜ
こいつは、つい最近も、こうやって得体の知れない成長したんだ
取り敢えず、あんたらも落ち着けよ…大丈夫だからさ
ふむ…マデルの提案通りに飛翔族の者を買うのもイイかもな
そっか……飛翔族の国が滅んでいるのかぁ
そんじゃあ~……ここはひとつ、可愛い白夜の為にも
飛翔族の国を再生するってのも一興だなぁ
なに、国が無くなっちまったつぅーんなら
また、新しく作ればイイだけさ」
そう簡単に言いながら、神護は白夜の成長する翼の根元に触れる。
ぅん…やっと、翼の成長が落ち着いてきたようだな
ホッとするぜ
どうやら、翼の再構成が終わったのかな?
もう、触っても大丈夫そうだな
うぅ~ん……だが…なぜ…急に…爆発的な成長をしたんだぁ?
はっ…もしかして、今回の翼の急成長って、食い過ぎかぁ~?
マンドラゴラやベラドンナ、ラフレシアの果実って
確か、栄養価が高いって言ってたもんなぁ……
あぁ~……もしかして、盛大に失敗したかなぁ?
身体の方も成長したばかりで、まだそんなに安定していないから
翼の方に、余剰分のエネルギーが集約しちまったのかな?
もしかして…今回の急成長の真相ってソレだったりして……
白夜の急な変異の原因に思い当たり、神護は内心で頭を抱えるのだった。
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