上 下
310 / 328

0310★自走植物にも、塩水は有効でした

しおりを挟む


 そんな中、神護は自分の持つ元の世界(日本)の植物達と、どの程度違うかを、白夜に聞いてみる。

 「白夜、自走と付こうと、肉食と付こうと、植物って言うからには、あいつ等って
 流石に、火炎系の魔法には弱いんだろう?」

 神護からの確認の言葉に、白夜は首を振る。

 「いいえ 残念ながら 移動できる 自走肉食植物は
 耐火性を持ってます 勿論 耐寒性も備わっています
 それに《魔力》への抵抗力もかなり強いんです

 生半可な 火炎魔法を放っても 効かないんんですよねぇ
 その上で 植物だから 根っこや葉っぱを含む触手を
 多少剣で切られたとしても 痛みを感じないようで……

 どんなに切っても 早々には 居なくなってくれません
 だから さっさと逃げるのが一番なんです

 あの自走植物達は ハンターギルドで 討伐対象になるぐらいには
 とても危険な生き物なんです」

 馬車を追いかけてくる自走肉食植物が、だんだんと増えてくることに焦る白夜は、自分に《力》が完全に戻っていないことを嘆く。

 〔くそぉ~……私の《力》が【転生】の前ぐらいあれば
 あの自走肉食植物を たやすく振り切れたものを……〕

 「魔力に強い抵抗力がある上に、耐火・耐寒なのか?
 白夜、あいつ等を退けるような、何かイイ手立てはあるのか?」

 緊迫感の無い口調で問い掛ける神護に、白夜は首を振る。

 「残念ですが はっきり言って 有効手段がありません……
 とにかく 遭遇したら 迷わず逃げるのが一番なんです

 もし あの自走肉食植物達の触手の一本にでも捕まったら
 あっという間に取り囲まれて 逃げられませんから……」

 悲愴感が漂い出した白夜の横顔を見ながら、神護は首を傾げる。

 「………ったく、自走する肉食植物か……迷惑なモンが居るんだなぁ
 うん? あれ? でも、結局、あいつ等って植物なんだよなぁ……」

 ふむ……耐火・耐寒の上に《魔力》にも抵抗力があるんじゃ……
 火炎系や氷雪系の攻撃魔法は、あまり意味は無いんだな

 なら、ちょっと考え方を変えて、塩水なんてモンは、どうかな?
 植物ってモンは、存外に塩害に弱いよなぁ?

 極少量の塩水は、野菜や果物の甘味を増やしてくれるが……
 一定以上の塩を被ると、植物は枯れるし……

 それ(人為的な塩害)で、都市を滅ぼしたってのもあるしな
 確か、塩土化して草木の生えない土地にしたんだよなぁ……

 ヨシ…とりあえず、試しに大量の塩水を撒いてみようかな?
 いや、馬車を追いかけて来ている自走肉食植物に直接散布してみるか

 「ふむ、たとえ自走肉食植物だったとしても、所詮は植物だからな
 植物は塩には弱い筈だから……

 とりあえず、濃厚な塩水を風の攻撃魔法で、大量に撒布してみるか?

 どうせ、ここはサバンナ通り越して、完全な砂漠だからな
 ものは試しって言うしだ、何にも抵抗しねぇーよりマシだろうからな」

 そう一人納得して、小さく呟いた神護は、転移の呪文を唱えて、馬車の中から、塩壷と水壷を、御者台の足元へと運ぶ。
 足元に水と塩を用意した神護は、半分ほど使った水壷に、たっぷりの塩を入れ、魔力を使って少し水温を上げて、ちょっとベタ付くような塩水を作る。

 舐めたらしょっぱいと感じる塩水となったソレを、神護は風系の攻撃魔法でもって、馬車を追い駆けるマンドラゴラ達に向かって霧状にして広範囲(馬車を追い駆けて来ている自走肉食植物の一群)に撒布してみた。

 そんなモノ(塩水)をかけられたことなど無いマンドラゴラ達は、それが自分の身にとって、有害なモノと知らないので、ざっぷりと被った。

 そして、渇いた土地に生きる植物の特性のまま、得た水分を即座に吸収しようとした。
 そう、溶け込んだ塩ごと、体内に取り入れたのだった。

 その直後に、聞くに耐えないような、すざまじい断末魔の叫びを上げて自走肉食植物達はのたうちまわる。
 悍ましく蠢く自走肉食植物達の姿を見て、神護はニヤッと嗤う。

 ヨシっ…塩水は効くな……だったら……あっちにも効くかな?
 どうも種類が違うみたいだけど…やっぱり自走肉食植物のようだからな

 神護は馬車に追い縋る、たった今退治した、マンドラゴラとは別種らしい自走肉食植物の出現に舌打ちする。

 ったく…美里みさと街の防護壁周辺に、別種がたかってたのかよ
 はぁ~……たっく……ワラワラと駆け寄ってきやがって……
 なんか…気分は売れっ子の芸能人みたいなモンかな?

 神護は、報道陣やファンという名のストーカー集団に追い縋られる芸能人の気持ちが理解わかるような気がした。
 なんせ、美里みさと街の防護壁の周辺をうろついて自走肉食植物達が、新たな獲物を見付けたとばかりに、次々と押し寄せて来るからだ。

 神護は、作った塩水を、馬車に向かって来る自走肉食植物へと撒布する。
 そちらの自走肉食植物も、マンドラゴラの時と同様に、絶叫?を上げて、苦しそうに?のたうち、あっという間に、シオシオと枯れていった。

 濃厚な食塩水を散布されたコトで、雑草駆除剤を撒かれて枯れた雑草を早回しで見るような光景を確認し、神護は声をかける。

 「白夜、大丈夫そうだから、とりあえず馬車を止めるぞ」

 そう言うと同時に、馬達は神護の意思に反応して、ゆっくりと足を止める。
 流石に、神護という主人の強さと、リンクによるシールドで恐怖心はかなり抑えられていたとは言え、本能に根差す恐怖は拭えるモノではなかった。
 が、それでも、恐慌状態に陥ることがなかったのは、その軍馬としての血統が故と言えよう。

 1台目の馬車が止まれば、後続の馬車もゆっくりと停車する。
 勿論、自走肉食植物達が神護の手によって、討伐されて無害となったコトを認識している馬達は、怖がることもなく落ち着いていた。
 
 神護は、停車した馬車の御者台からひょいっと飛び降りる。
 勿論、降りる時には、風系の魔法で、枯れた自走肉食植物達を一ヶ所に掻き集めている神護だった。
 この頃になると、流石の神護も経験がモノを言うで、魔法を呼吸するように難なく扱えるようになっていたりする。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

処理中です...