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0310★自走植物にも、塩水は有効でした
しおりを挟むそんな中、神護は自分の持つ元の世界(日本)の植物達と、どの程度違うかを、白夜に聞いてみる。
「白夜、自走と付こうと、肉食と付こうと、植物って言うからには、あいつ等って
流石に、火炎系の魔法には弱いんだろう?」
神護からの確認の言葉に、白夜は首を振る。
「いいえ 残念ながら 移動できる 自走肉食植物は
耐火性を持ってます 勿論 耐寒性も備わっています
それに《魔力》への抵抗力もかなり強いんです
生半可な 火炎魔法を放っても 効かないんんですよねぇ
その上で 植物だから 根っこや葉っぱを含む触手を
多少剣で切られたとしても 痛みを感じないようで……
どんなに切っても 早々には 居なくなってくれません
だから さっさと逃げるのが一番なんです
あの自走植物達は ハンターギルドで 討伐対象になるぐらいには
とても危険な生き物なんです」
馬車を追いかけてくる自走肉食植物が、だんだんと増えてくることに焦る白夜は、自分に《力》が完全に戻っていないことを嘆く。
〔くそぉ~……私の《力》が【転生】の前ぐらいあれば
あの自走肉食植物を たやすく振り切れたものを……〕
「魔力に強い抵抗力がある上に、耐火・耐寒なのか?
白夜、あいつ等を退けるような、何かイイ手立てはあるのか?」
緊迫感の無い口調で問い掛ける神護に、白夜は首を振る。
「残念ですが はっきり言って 有効手段がありません……
とにかく 遭遇したら 迷わず逃げるのが一番なんです
もし あの自走肉食植物達の触手の一本にでも捕まったら
あっという間に取り囲まれて 逃げられませんから……」
悲愴感が漂い出した白夜の横顔を見ながら、神護は首を傾げる。
「………ったく、自走する肉食植物か……迷惑なモンが居るんだなぁ
うん? あれ? でも、結局、あいつ等って植物なんだよなぁ……」
ふむ……耐火・耐寒の上に《魔力》にも抵抗力があるんじゃ……
火炎系や氷雪系の攻撃魔法は、あまり意味は無いんだな
なら、ちょっと考え方を変えて、塩水なんてモンは、どうかな?
植物ってモンは、存外に塩害に弱いよなぁ?
極少量の塩水は、野菜や果物の甘味を増やしてくれるが……
一定以上の塩を被ると、植物は枯れるし……
それ(人為的な塩害)で、都市を滅ぼしたってのもあるしな
確か、塩土化して草木の生えない土地にしたんだよなぁ……
ヨシ…とりあえず、試しに大量の塩水を撒いてみようかな?
いや、馬車を追いかけて来ている自走肉食植物に直接散布してみるか
「ふむ、たとえ自走肉食植物だったとしても、所詮は植物だからな
植物は塩には弱い筈だから……
とりあえず、濃厚な塩水を風の攻撃魔法で、大量に撒布してみるか?
どうせ、ここはサバンナ通り越して、完全な砂漠だからな
ものは試しって言うしだ、何にも抵抗しねぇーよりマシだろうからな」
そう一人納得して、小さく呟いた神護は、転移の呪文を唱えて、馬車の中から、塩壷と水壷を、御者台の足元へと運ぶ。
足元に水と塩を用意した神護は、半分ほど使った水壷に、たっぷりの塩を入れ、魔力を使って少し水温を上げて、ちょっとベタ付くような塩水を作る。
舐めたらしょっぱいと感じる塩水となったソレを、神護は風系の攻撃魔法でもって、馬車を追い駆けるマンドラゴラ達に向かって霧状にして広範囲(馬車を追い駆けて来ている自走肉食植物の一群)に撒布してみた。
そんなモノ(塩水)をかけられたことなど無いマンドラゴラ達は、それが自分の身にとって、有害なモノと知らないので、ざっぷりと被った。
そして、渇いた土地に生きる植物の特性のまま、得た水分を即座に吸収しようとした。
そう、溶け込んだ塩ごと、体内に取り入れたのだった。
その直後に、聞くに耐えないような、すざまじい断末魔の叫びを上げて自走肉食植物達はのたうちまわる。
悍ましく蠢く自走肉食植物達の姿を見て、神護はニヤッと嗤う。
ヨシっ…塩水は効くな……だったら……あっちにも効くかな?
どうも種類が違うみたいだけど…やっぱり自走肉食植物のようだからな
神護は馬車に追い縋る、たった今退治した、マンドラゴラとは別種らしい自走肉食植物の出現に舌打ちする。
ったく…美里街の防護壁周辺に、別種が集ってたのかよ
はぁ~……たっく……ワラワラと駆け寄ってきやがって……
なんか…気分は売れっ子の芸能人みたいなモンかな?
神護は、報道陣やファンという名のストーカー集団に追い縋られる芸能人の気持ちが理解るような気がした。
なんせ、美里街の防護壁の周辺をうろついて自走肉食植物達が、新たな獲物を見付けたとばかりに、次々と押し寄せて来るからだ。
神護は、作った塩水を、馬車に向かって来る自走肉食植物へと撒布する。
そちらの自走肉食植物も、マンドラゴラの時と同様に、絶叫?を上げて、苦しそうに?のたうち、あっという間に、シオシオと枯れていった。
濃厚な食塩水を散布されたコトで、雑草駆除剤を撒かれて枯れた雑草を早回しで見るような光景を確認し、神護は声をかける。
「白夜、大丈夫そうだから、とりあえず馬車を止めるぞ」
そう言うと同時に、馬達は神護の意思に反応して、ゆっくりと足を止める。
流石に、神護という主人の強さと、リンクによるシールドで恐怖心はかなり抑えられていたとは言え、本能に根差す恐怖は拭えるモノではなかった。
が、それでも、恐慌状態に陥ることがなかったのは、その軍馬としての血統が故と言えよう。
1台目の馬車が止まれば、後続の馬車もゆっくりと停車する。
勿論、自走肉食植物達が神護の手によって、討伐されて無害となったコトを認識している馬達は、怖がることもなく落ち着いていた。
神護は、停車した馬車の御者台からひょいっと飛び降りる。
勿論、降りる時には、風系の魔法で、枯れた自走肉食植物達を一ヶ所に掻き集めている神護だった。
この頃になると、流石の神護も経験がモノを言うで、魔法を呼吸するように難なく扱えるようになっていたりする。
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