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0304★馬車旅は順調です
しおりを挟むレパルドフィンの子供を拾って早2日目。
何時も通り安全そうな場所で停止し、ゆっくりと休んだ神護達は、夜明けと共に再び馬車を走らせていた。
軍馬達は、神護に大事にされているので、何時でも機嫌良く走っている。
水やごはんをギリギリまで減らされた状態で、キツイ砂漠の街道を走って来た軍馬達にとって、神護は神様のような飼い主だった。
だから、今日も今日とて、楽しく馬車を曳く軍馬達である。
神護は馬車の御者台に座って、周囲を警戒しつつ街道をひたすら走らせていた。
白夜はというと、アスカと名付けたレパルドフィンのごはん担当をしていた。
どうしても、誕生したばかりの為に、お腹が一杯になるまでお乳替わりの生き血を飲ませるのは、時間がかかってしまうので、走らせた馬車の中で飲ませるコトになってしまっていた。
白夜としても、弟達が心配なので、自分が出来るコトは積極的にして、神護に先を急いでもらっているのだ。
白夜は、馬車の中で、アスカに生き血を飲み終わらせると、神護へと手渡す。
アスカを受け取った神護は、やはりまだまだ存在自体が脆弱な為に、【ルシフェル】が作ってくれた触手のカゴへと入れて抱えていた。
あと何日、この【ルシフェル】の作ったカゴに入れてないどダメかなぁ?
流石に、生息環境がまるっきり違うからなぁ~……
ここって砂漠だから…下手に出したっぱなしに出来ないんだよなぁ
ホタルの卵達のいくつかは、そろそろ孵化の兆候が見えて来たしなぁ
昨日も、寝る前に白夜にも、卵達に魔力の補給を手伝ってもらったけど
本気で、人手が欲しいぞ……これ以上ちみっこが増えると、流石にキツイ
そんなコトを考えながら、御者台に座る神護は隣りに座る白夜へと視線を向ける。
隣りには、相変わらず神護に張り付くようにして白夜が座っている。
勿論、再び大きくなった翼を隠す為に、モコモコの姿になっているのは確かな事実だった。
いくらリンクがシールドを掛けていても、敵に見られる可能性が無くならないので、常に翼を隠すようにしているのだ。
勿論、暑さ避けという意味もある。
そんな中、馬車を走らせつつも、チラリと隣りに座る白夜を見て、神護は内心で溜め息を吐く。
流石に、ああも翼が大きくなるとなぁ……はぁ~……
もうローブだけで隠すのは無理だよなぁ
一応は、頭から大きな布を被せているけど……
どう考えても、背中の翼の存在を隠せてないよなぁ……
でも、まだまだ身体も翼も成長中のようだからなぁ
あまり負担を掛けられないよなぁ……
それに、ホタルが拾ったレパルドフィンの雛も
どうやら、かなり昔に絶滅している種らしいからなぁ……
彩湖王国に着けば、絡まれる要素が満載の状態であることは神護も判ってはいたが…………。
まっ…白夜の弟…確か…名前は、グレンだっけか?
そのグレンを、手段を選ばずに、取り返す予定だからな
隠密行動なんて無理だし、もう今更か……
しかし…こうなぁ~んにもイベントが無いと飽きるなぁ……はぁ~……
とりあえず、今のところ何事も無く順調に馬車は進んでいるが……
馬車を売ってくれた旅商人・アデルは
3日から4日ぐらいで、彩湖王国に着くって言ったが……
あれは、高速で動く旅商人の移動速度での日数なのかなぁ?
馬車を譲り受けた日から数えて、今日で6日目だもんなぁ……はぁ~……
行けども行けども、変わりばえしない乾いたサバンナばかりで……
緑の帯も何時の間にか消えちまったし……
3台の馬車と虹色オオトカゲの肉と交換してから、魔植物・カエスや、ドードー狩りをして、レパルドフィンのアスカを拾ったことは、神護の中ではたいしたイベントという感覚が無かったので、退屈感にアクビが零れる。
「いい加減、彩湖王国の東の端美里街の影ぐらい見えても………ぅん?」
そう無意識に呟いた神護は、前方遥か彼方に、防護壁と王宮?らしい建物の影を捉えた。
ぅんん? …あれは………もしかして彩湖王国の東の端にあるって言われている美里街の防護壁かなにかかな?
壁のずっと奥向こうに、微かに見える高い建築物は、城かなぁ?
いや、王国だから王宮か? ってコトは無いか
彩湖王国の東の端っこの街だから、せいぜいが離宮かな?
なんにしても、やぁ~っと…人工的な建築物が見えたぜ
神護が気付いたように、アスカを腕に抱いて同じ方向を見ていた白夜が、ガバッと勢いよく御者台で立ち上がり、嬉しそうに指さして言う。
「父上ぇ~………やっと、彩湖王国の東の端美里街の影が見えましたねぇ~……」
その声には、やはり砂漠での馬車旅に飽きていたと判るモノが含まれていた。
神護は、白夜のセリフに、ちょっと感慨深げに頷く。
「ああ……ようやく、最初の目的の街が見えて来たようだなぁ
あのアデルの言った、だいたい3日から4日で着くってぇーのは
旅商人の移動速度のことだったようだな
俺達が、比較的ゆっくりと移動していたってのもあるけどな
結局、6日…ほぼ倍の時間、かかっちまったな」
とは言っても、まだその防護壁にすらたどりついてはいないのだが…………。
神護はもとより、白夜も王城からあまり出で行動していなかったので、砂漠の距離感が判らなかった。
それでも、一応はテレビでのエジプトモノなどの砂漠を移動するドキュメントを多数見ていた神護は小首を傾げて考えた。
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