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0300★聖獣【レパルドフィン】の雛に《名付け》をしました

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 一生懸命にムグムグと口の中へと食べ物を嬉しそうに入れているリンクを見ながら、ちょっと首を傾げる。

 ふむ…もう少し用意した方が良いかな?

 見る見るうちに、リンク用に用意した朝ごはんが減って行くが、リオウと違って、まだまだ満ち足りていない様子で次々と食べ物を口の中へと運んで行く。
 そんなリンクの姿と残った朝ごはんの量を見比べ、食べ終わっても満足しないだろうことを見て取り、神護は更に追加で用意してやる。
 現在の体積の軽く五倍はある量だが、リンクはその身体の何処に入るのかという勢いで、ひたすら食べ続ける。

 「ふむ、リオウみたいに、ちょっと食べれば良いって状態になるには、まだまだ、かなりかかりそうだなぁ……ずっと飢餓うえていたセイだろうなぁ……」

 そう呟く神護に、リンクは頬袋をいっぱいにしてムグムグしながら、念話で答える。

 『そうなんですぅ~ 一生懸命にぃ~ お腹が空いたぁ~…って訴えても
  果物をちょびっととぉ~ お水がちょびっとだけだったんですぅ~…』

 半泣きのまま、必死でムグムクするリンクに、神護は溜め息を吐く。

 「まぁ…育て方を知らなければ、身体のサイズにあったぐらいの量しか、メシの用意しないだろうな。まして、いざという時は、薬にするつもりで購入したモノだしなぁ。更に言えば、砂漠をわたっている真っ最中だ。生命維持が出来そうな量しか餌箱に入れなかっただろうことは、想像がつくな」

 『あんな量じゃ…生命維持だって出来ないですぅ~……』

 見た目が神護のコブシほどもないチンチラのような姿のリンクが、とにかく一生懸命にムグムグと食べている微笑ましい姿に、どこかほっこりとしながら言う。

 「まだ取り返しがつく状態だとは思うが……リンク、お腹が空いたら、すぐに俺に言えな。とにかく、オヤツを美味しいねって、まったりと楽しめるくらいに満たされないと、本来の《ちから》を出すことが出来なくなるかもしれないからな。それじゃなくても、軍馬達と三台の馬車にシールドを掛けっぱなしにしているんだから、食べられるだけ食べて良いんだからな」

 神護からの甘い言葉、リンクは嬉しそうにコクコクしながら、ただひたすらに用意された朝ごはんを食べ続ける。
 そんな中、神護は聖獣【レパルドフィン】の様子を確認しようと、再び【ルシフェル】が作った触手の籠から取り出してみる。

 「んぅ~……だいぶ落ち着いたようだが……何時、目を覚ましてくれるかなぁ? 出来るなら、リンクみたいにご飯を食べさせてやりたいんだが……ここは、ホタルを呼んで聞いてみるかな? ホタル、出て来てくれるか?」

 神護の呼び掛けに、二の腕に嵌めた腕輪に入って居たホタルが現われる。
 〈ドラゴン・ソウル〉のホタルは、神護と契約したコトで、その存在維持を神護から供給される魔力に頼っているので、必要とされない時は腕輪の中に戻っているのだ。

 名前を呼ばれたホタルは、スイッと腕輪の中から現われて、テーブルの上に降り立つ。

 『マスター お呼びでしょうか?』

 「ああ…この聖獣【レパルドフィン】の雛を目覚めさせて、リンクみたいにメシを食べさせてやりたいんだが、どうしたら良いと思う?」

 神護の言葉に、小首を傾げたホタルは、ちょっと考えてから言う。

 『そうですね でしたら名付けをしたら良いのではないでしょうか
  その聖獣【レパルドフィン】の雛に《名付け》して《契約》をすれば
  マスターと繋がりますから 生命維持も容易くできますよ』

 「なるほどな、俺とラインが繋がれば、必要な魔素や生命力を供給ができるってわけだな。よし……白夜、ちょっとこの子を抱えていてくれるか?」

 そう言って神護は白夜の掌に聖獣【レパルドフィン】の雛を乗せて、その姿をマジマジと見詰めて首を傾げる。

 とは言え、名前かぁ……豹紋があるから…そっちから付けるかなぁ?
 呼び名は呼びやすいモノが良いよなぁ………ところで性別はどっちだぁ?
 名前を付けるにしても、オスメスが判らないからなぁ……

 まぁ…見た感じは、メスかなぁ? リンクもメスだったし………
 いや、こういう場合は【ルシフェル】かな?
 聖獣【レパルドフィン】の雛を傷付けずに、判定してくれるだろうからな

 [【ルシフェル】起きているか? もし起きているなら【レパルドフィン
】の性別を教えてくれないか? 名前を付けてやる参考にしたい]

 神護の呼び掛けに【ルシフェル】は、その思考を読んで答える。

 [マスター その子はどちらでも有り どちらでも無いです
  卵から孵った時 未熟で身に危険があった為 性別がありません

  同種体て出逢えば 相手にあわせて変異するものと思われます
  名付けるならば どちらでも良い名前にした方が良いかと思います]

 返って来た答えに、神護はちょっと考え込む。

 そっか…今は性別が無いのか……オスでもメスでも良い名前ねぇ……
 やっぱり【名被せ】の方がいいんだろうなぁ……ふむ

 音としては、アスカなんかどうかな? あすか…片仮名に平仮名に漢字
 漢字は、飛鳥? いや、朱鳥もあったな 他に阿須賀? 明日翔?

 取り敢えず思い付く漢字も思い浮かべつつの、メインは飛鳥にするかな?
 重ね掛けして置けば【名盗り】されないみたいだからな
 よし…呼び掛ける音は、アスカに決定で良いや

 「この聖獣【レパルドフィン】の雛の名前は、アスカにしよう」

 [マスター 庇護を与える意味で 血による《契約》がよろしいかと]

 同時に、人差し指に小さくピリッとした痛みとも呼べないモノを感じて、神護は【ルシフェル】の気遣いに感謝しつつ、聖獣【レパルドフィン】の雛の額に、その血をチョンっと付けながら命名する。

 「真城ましろ 神護しんごの名において
  この聖獣【レパルドフィン】の雛に【アスカ】の名を与えん」






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