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0296★馬車旅四日目の野営です

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 寝息が深くなったコトを確認し、当分のあいだは起きないだろうと思った神護は、室内を片付けつつ、こちらの馬車に持ち込んだ食料品を確認する。
 勿論、寝ている白夜を起こさないように極力音を立てないようにしながら。
 そして、袋に入れた《ちかご》の残りを見付け、神護は首を傾げる。

 フム…まだ残っていたんだ……軽くボイルして、皮を剥いてドードー鳥と炒めるかな
 あとは何が残ってたかなぁ~……
 馬車が停止したら、後の馬車に乗せた食料庫からもう少しこっちに持って来て置くかなぁ

 そんなコトを考えながら、衣装を出したままだったモノなどを片付け終わった頃、クンッと馬車のスピードが落ちて来たので、そこで片付けを終了する。
 そして、神護は御者台へと戻り、軍馬達が速度を落として街道の側に設置された馬車溜まりようの場所へと入って行く。

 幸いなコトに、他に誰も居なかった。
 神護は、周囲を警戒しなくて良いコトにホッとする。

 これなら、白夜の翼を隠さなくても平気かな?
 一応、結界みたいなモノは張っておいた方が良いよな
 なんか、絶滅危惧種っぽいモノばかり集まって来ちまったからな、警戒するにこしたコトねぇ~もんな

 軍馬達がゆっくりと歩き、後続の馬車も泊まりやすい位置で足をピタリと停める。
 神護は、停止した軍馬達の汗を書いた身体を、すぐさま風魔法で乾かしていく。
 御者台から降りた神護は、後続の二台目の軍馬達の身体を乾かし、直ぐに三台目にまで歩いて行き、軍馬達の身体を乾かしてやる。

 「よしっ…今日はここで野営するからなぁ……」

 そう言いながら、神護は横着をして、各馬車のリーダー馬達だけ外し、後をまかせる。

 「あまり馬車から離れるなよ……お前達も落ち着いたら、メシの準備してやるからな………んじゃ、お前達の部下(軍馬)達のハーネスを外してやれな」

 そう言って、首筋をポンポンして、三頭のリーダー馬達に後を任せ、神護は馬車の中へと戻る。

 さてと……白夜達を起こすかなぁ~……

 「白夜ぁ~……起きられるか?」

 ソッと頭に手をやり、ナデナデしながら声を掛ければ、白夜はビクッとしてから目を覚ます。

 「んぅ~……父上ぇ~……あっふ……」

 白夜は馬車が停止しているコトに気付き、両手をついてガバッと起き上がる。
 その拍子に、腕に力を入れたコトで、背中の翼の根元に痛みが走る。

 「……っ………」

 小さな苦鳴だが、神護にはしっかりと聞こえていた。

 「大丈夫か? そんな風に急に起きるからだぞ。充分に注意して行動しろよ。今は翼が成長している最中だから、特にな」

 そう言う神護は、白夜の背後に回り、チョイッと背中の布を避けて、翼の根元を確認する。

 うん……血は出ていないな……痛みがあっただけのようだな

 背中を確認する神護に、白夜は聞く。

 「うぅ~…はい…それで…父上…その…出血してますか?」

 「いや、大丈夫だったぞ……だけど、本当に動きには充分注意するんだぞ…痛い思いをするのは、白夜なんだからな………起きたなら、取り敢えず軍馬達のご飯を先にやってしまおうか? 幸い、誰もいなさそうだから、フード付きマントはかぶらなくて良いぞ。リンクが〈遠見〉とかからも視えないいようにしてくれているようだからな。イヤな視線のようなモノを感じなくて助かるぜ」

 神護の言葉に、あまり外に出られない白夜は嬉しそうな表情になって頷く。

 「はい……みんな、ご飯を待っているでしょうから、手早く分けてあげましょう」

 楽しそうな白夜と一緒に、神護は馬車と軍馬を手に入れてから、ここしばらくのルーティーンとかしている作業をするのだった。
 勿論、ちゃんとお風呂も浴びていたりする。

 軍馬達にすれば、白夜と神護がお風呂に入れば、余分にお水をもらえるので、ちょっとぐらいのご飯の遅れなど気にもせず、まったりと待っていたのは確かなコトだった。

 そして、楽しいドードー鳥をメインにしたご飯を満喫した白夜は、就寝前のひと時、神護に聖獣【レパルドフィン】を見せて欲しいと強請ねだるのだった。

 神護としても、気にはなっていたので、ソッと胸元に手を入れて【ルシフェル】が作ってくれた触手の籠から取り出して膝の上へと降ろす。
 勿論、神護の膝の上には、厚地の柔らかい布を幾重にも折りたたんだモノを乗せていた。

 その柔らかい布の上へと聖獣【レパルドフィン】の雛を乗せる。
 ちなみに、何故、雛と言うかというと、卵から孵る種族だからである。
 【ルシフェル】から聞いた育て方などから、神護の中では雛という認識になっているのだった。

 「ふわぁ~……もこもこしてますねぇ……ところで、父上、コレはなんですか?」

 と、雛の身体に装備したハーネスを指さして、白夜は神護に聞く。

 「ああ、コレはハーネスって言うモンだ……この雛は、育てるのに高濃度な魔素と水分が必要なんだそうだ。このハーネスに《魔石》を装備して、そこに常に魔力を注ぎ込んで、魔素が発生して身体を包み、足りない分を補うようにしたんだ……そうしないと、直ぐに死んでしまうようだからな。勿論、水気と冷気で包まれるようにもちゃんとしてあるぞ。リンクが入っていた飾り籠に組み込まれていたモノに近いかな」

 「ふ~ん…そういうモノなんですか……それにしても、気持ち良さそうに眠っていますねぇ」

 神護の説明に、白夜はそう呟き、触りたいのを我慢しつつ、スヨスヨと気持ちよさそうに眠って居る聖獣【レパルドフィン】の雛を見詰めるのだった。









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