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0276★編み上げ革靴は苦手です
しおりを挟む白夜やリオウが付いて来る前提で、神護は馬車の出入り口へと向かい、寝る前に施した簡易《障壁》の為の《魔石》をひょいひょいと拾い、ポケットへとしまう。
旅商人と名乗ったアデルからもらったモノの中にあったので、一応ということで馬車の出入り口に置いてみたのだ。
この簡易《障壁》とは、2個一対で壁の役割をするモノらしい。
説明書があったので、説明書通りの手順で置いて、《魔力》を流したのだ。
他にも《結界》を敷ける4個で一対のモノなどもあった。
が、本来そういうモノを必要としない神護なので、興味本位で置いただけだったりする。
それはさておき、馬車の出入り口に着いた神護は出入り口に設置されている棚から、自分用の革靴を取り出す。
これも旅商人のアデルから購入したモノである。
気が付いたら、もうこちらの装〈よそお〉いだったので、元の世界のシューズとかが恋しいと思う神護だった。
が、無いモノはしょうがないのである。
神護は、履くのに手間のかかる、革紐を膝下まで編み上げる革靴を溜息混じりに履いて、革紐をきっちりと膝下まで編んでから、ちゃんと結ぶ。
はぁ~……革靴のなにが嫌いって
コレが一番面倒臭くて嫌いだ
あうぅ~…俺は、履きやすい靴が欲しいぞ
っても、この程度のことを
白夜に望むつもりなんてねぇ~けどな
いや、それ以前に、あっちみたいな靴
そう運動に適したシューズとかあるのか?
まぁ……井馬は無いモノねだりだな
あとで、もう少し履きやすい靴を探すか?
街とかに行けばあるかもしれないし………
いや、動物の皮があるんだから作るか?
いちいち、靴を履いたり脱いだりするのに
こんなに手間がかかるのはいただけない
今後、靴の制作も検討しないとな
取り敢えず、今は馬達の世話だな
内心をよそに、きっちり編み上げた革靴を履き終えた神護は、背後で同じように靴を履いている白夜を振り返って言う。
「ああ、白夜………暑苦しいと思うが
一応、これを上から羽織っておけ
動きづらいかもしんねぇーけど
警戒するにこしたことはねぇーからな
どこに不埒な輩がいるか判らないからな
人間は、欲に弱い生き物だ」
そう言って、神護は棚に整然と入れられているフード付きの方のマントを手に取り、白夜に手渡してやる。
まだ、白夜の身長では、その高さにあるマントを軽く取るということができないのだ。
白夜の頭からすっぽりとフード付きマントを被らせた神護は、自分もマントのフードを被る。
勿論、肩に乗ったリンクにも被せた。
「まっ…強い日差しの日よけも兼ねて
俺もマント羽織っているし、フードも被しるな
流石に、荒涼として砂漠だけあって
影になるようなモンがほとんどないからなぁ
太陽からの日差しが思ったよりもキツイ
暑いかも知んねーが肌を焼かれるよりマシだ
……んじゃ、用意はイイか?」
神護に聞かれた白夜は、被せられたフード付きマントを飾り紐で留めて、頷く。
「はい 父上……準備は終わりました」
『ますたーに被せてもらったから
りんくも大丈夫です』
嬉しそうにそう言う白夜と肩でうきうき感を醸し出すリンク。
「よし、んじゃ出るぞ
リオウも大丈夫か?」
神護そう言ってリオウへと視線を落す。
リオウも嬉しそうに喉をキュルルと鳴らして見せる。
クスクス………相変わらずだな
ほんとリオウはガタイに合わない声だよなぁ~
まっ…まだ、種族的いったら、幼体だもんな
そんなコトを考えながら、神護は馬車の外へと出る為に、出入り口を抜ける。
そして、御者台へと神護(肩にリンク)、白夜、リオウの順で出た。
「おぉ~……良い天気だなぁ………
軽い風も……ぅん? …追い風になってるな
さて、さっさと馬達を後ろの馬車から出して
トイレをさせて、飯を食わせちまおう
そうすりゃ、俺達が飯を食い終わった頃には
馬達の腹も少しはこなれて
走りやすくなるだろうからな
そこまで急ぐ旅じゃねぇーからな
馬車旅を楽しもうな、白夜」
白夜の弟のことは気になるが………
できれば、もう少し転生したての
白夜の身体が成長してくれて
俺の環境適応がすんでからにしたいな
一応は、この世界の感覚にもだいぶ慣れたし
日常的に魔法や魔術を使うことも違和感無く
こなせるようにはなったが…………
やっぱり魔法と魔術の違いがわからないな
どちらも違和感無く使えるもんだから
そういう意味で意識していないセイかな?
まっいっか、困ってないから…………
そんな神護の内心になど気付かず、白夜はにこにこしながら優等生なお返事をする。
「はい 父上 馬車旅って
なんかワクワクします」
そんな白夜に、クスッと神護は笑い、リオウも外に出ていることを確認してから、出入り口に自分達以外は出入りできない《結界》を改めて張り直す。
そして、まずは馬達の居る馬車へと向かうのだった。
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