上 下
276 / 328

0276★編み上げ革靴は苦手です

しおりを挟む

 白夜やリオウが付いて来る前提で、神護は馬車の出入り口へと向かい、寝る前に施した簡易《障壁》の為の《魔石》をひょいひょいと拾い、ポケットへとしまう。

 旅商人と名乗ったアデルからもらったモノの中にあったので、一応ということで馬車の出入り口に置いてみたのだ。

 この簡易《障壁》とは、2個一対で壁の役割をするモノらしい。
 説明書があったので、説明書通りの手順で置いて、《魔力》を流したのだ。

 他にも《結界》を敷ける4個で一対のモノなどもあった。
 が、本来そういうモノを必要としない神護なので、興味本位で置いただけだったりする。

 それはさておき、馬車の出入り口に着いた神護は出入り口に設置されている棚から、自分用の革靴を取り出す。
 これも旅商人のアデルから購入したモノである。

 気が付いたら、もうこちらの装〈よそお〉いだったので、元の世界のシューズとかが恋しいと思う神護だった。
 が、無いモノはしょうがないのである。

 神護は、履くのに手間のかかる、革紐を膝下まで編み上げる革靴を溜息混じりに履いて、革紐をきっちりと膝下まで編んでから、ちゃんと結ぶ。

  はぁ~……革靴のなにが嫌いって
  コレが一番面倒臭くて嫌いだ

  あうぅ~…俺は、履きやすい靴が欲しいぞ
  っても、この程度のことを
  白夜に望むつもりなんてねぇ~けどな

  いや、それ以前に、あっちみたいな靴
  そう運動に適したシューズとかあるのか?

  まぁ……井馬は無いモノねだりだな
  あとで、もう少し履きやすい靴を探すか?

  街とかに行けばあるかもしれないし………
  いや、動物の皮があるんだから作るか?

  いちいち、靴を履いたり脱いだりするのに
  こんなに手間がかかるのはいただけない

  今後、靴の制作も検討しないとな
  取り敢えず、今は馬達の世話だな

 内心をよそに、きっちり編み上げた革靴を履き終えた神護は、背後で同じように靴を履いている白夜を振り返って言う。

 「ああ、白夜………暑苦しいと思うが
  一応、これを上から羽織っておけ

  動きづらいかもしんねぇーけど
  警戒するにこしたことはねぇーからな

  どこに不埒な輩がいるか判らないからな
  人間は、欲に弱い生き物だ」

 そう言って、神護は棚に整然と入れられているフード付きの方のマントを手に取り、白夜に手渡してやる。
 まだ、白夜の身長では、その高さにあるマントを軽く取るということができないのだ。

 白夜の頭からすっぽりとフード付きマントを被らせた神護は、自分もマントのフードを被る。
 勿論、肩に乗ったリンクにも被せた。

 「まっ…強い日差しの日よけも兼ねて
  俺もマント羽織っているし、フードも被しるな

  流石に、荒涼として砂漠だけあって
  影になるようなモンがほとんどないからなぁ

  太陽からの日差しが思ったよりもキツイ
  暑いかも知んねーが肌を焼かれるよりマシだ

  ……んじゃ、用意はイイか?」

 神護に聞かれた白夜は、被せられたフード付きマントを飾り紐で留めて、頷く。

 「はい 父上……準備は終わりました」

 『ますたーに被せてもらったから
  りんくも大丈夫です』

 嬉しそうにそう言う白夜と肩でうきうき感を醸し出すリンク。

 「よし、んじゃ出るぞ
  リオウも大丈夫か?」

 神護そう言ってリオウへと視線を落す。
 リオウも嬉しそうに喉をキュルルと鳴らして見せる。

  クスクス………相変わらずだな
  ほんとリオウはガタイに合わない声だよなぁ~
  まっ…まだ、種族的いったら、幼体だもんな

 そんなコトを考えながら、神護は馬車の外へと出る為に、出入り口を抜ける。
 そして、御者台へと神護(肩にリンク)、白夜、リオウの順で出た。

 「おぉ~……良い天気だなぁ………
  軽い風も……ぅん? …追い風になってるな

  さて、さっさと馬達を後ろの馬車から出して
  トイレをさせて、飯を食わせちまおう

  そうすりゃ、俺達が飯を食い終わった頃には
  馬達の腹も少しはこなれて
  走りやすくなるだろうからな

  そこまで急ぐ旅じゃねぇーからな
  馬車旅を楽しもうな、白夜」

  白夜の弟のことは気になるが………
  できれば、もう少し転生したての
  白夜の身体が成長してくれて

  俺の環境適応がすんでからにしたいな

  一応は、この世界の感覚にもだいぶ慣れたし
  日常的に魔法や魔術を使うことも違和感無く
  こなせるようにはなったが…………

  やっぱり魔法と魔術の違いがわからないな
  どちらも違和感無く使えるもんだから

  そういう意味で意識していないセイかな?
  まっいっか、困ってないから…………

 そんな神護の内心になど気付かず、白夜はにこにこしながら優等生なお返事をする。

 「はい 父上 馬車旅って
  なんかワクワクします」

 そんな白夜に、クスッと神護は笑い、リオウも外に出ていることを確認してから、出入り口に自分達以外は出入りできない《結界》を改めて張り直す。
 そして、まずは馬達の居る馬車へと向かうのだった。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

『絶対に許さないわ』 嵌められた公爵令嬢は自らの力を使って陰湿に復讐を遂げる

黒木  鳴
ファンタジー
タイトルそのまんまです。殿下の婚約者だった公爵令嬢がありがち展開で冤罪での断罪を受けたところからお話しスタート。将来王族の一員となる者として清く正しく生きてきたのに悪役令嬢呼ばわりされ、復讐を決意して行動した結果悲劇の令嬢扱いされるお話し。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

処理中です...