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0274★神護は白夜の憂いに気付かない

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 裾から背中まで二本の切り開きをした神護は、裾に紐を縫い付けて縛れるようにする。

 「ほら、これで簡単に脱ぎ着ができるぞ
  脱いだり着たりする時は
  ここの紐をきちんと外せよ

  その為に、この紐を付けたんだからな
  こうすれば、動きに支障は無いだろう」

 そう言って、上着を着せかけてくれる袖に腕を通しながら、白夜はコクコクと頷く。

 「はい 父上
  これだと すごく着替えが楽です」

 嬉しそうに、そう答える白夜だったが、内心ではまるっきり別のことを考えていた。

 〔はぁ~……父上の手が無いと
  私は 着替えすらも まっとうにできない…
  今の私って…… やっぱりお荷物ですよね

  あと どのぐらいしたら 私は
  父上の手を煩わせず………いや

  父上を護れるぐらいになるのだろうか?

  自らの意志でもって転生などしたのは
  初めてのことだし………

  過去に 私と同じように
  転生した者達の成長記録的な
  記述は なんど探しても見付からなかったし

  嗚呼 どれくらいの期間で
  もとの成人体になれるか判らない………

  だが転生者は 普通に誕生した者のように
  ゆっくりと成長するわけではないことは
  確かだな

  この様子なら 通常の成長期間よりも
  短い時間で 自由に《力》が使える
  成人体に成長するのも………

  うふっ さほどかからないかもしれない

  ただ まだ 本当のところは判らない
  というのが 本音かな?

  転生をなす為の術を記したモノは
  それこそ いくつかあったが

  その後の記述というモノが
  どうしても見付からなかった

  【理】に反する行為として
  禁忌とされた秘術の一つ【転生術】

  だが その転生を行ったという者達の
  転生を成功させるまでの

  自伝という名の記録は
  数例存在してはいたが…………

  完全に成功させた者の記録は
  どんなに書庫を調べても
  残念ながら 存在しなかった

  成人体になったという記録も
  自伝も無いから

  自分がどういう風な成長するか
  見当がつかないので困るな

  色々調べた結果
  どうも…転生自体は成功しても

  何らかの理由で 幼少期に
  ほとんどの者が死ぬのは
  ほぼ確かなようだが

  転生を果たした先達が
  成長期の間を護ってくれる

  【守護者】を得られたかどうかまでは
  記録されていなかった

  もしかしたら 欲望に狂った者に
  殺されたのかもしれないな

  私は きっと とてつもない幸運に
  恵まれたのだろうな

  父上は 私の望みを叶えられるという
  夢のような《力》を知っても
  何も望まないのだから…………〕

 そんなことを白夜が考えているなど知らない神護は、成長した白夜のにあうズボンを衣装箱から探していた。
 神護はちょうど良さそうなモノを引き出して、白夜に見せながら言う。

 「ほら白夜、これならどうだ?
  長さもちょうどイイんじゃねぇ~か?

  別に、尻に尻尾とかが
  生えてるわけじゃねぇ~からな

  ズボンの方は
  なんの細工も必要ないだろうし………
  どうだ?」

 神護からズボンを受け取った白夜は、首を傾げる。

 「あのぉ~ 父上は
  私に尻尾があった方が
  良かったのですか?」

 困惑する白夜に、神護は首を振る。

 「いや、別にそうは言ってないぞ………
  ただ、尻尾があっても可愛かったかな?
  ……とは、思うけどな」

 クスクスと笑う神護に、白夜は首を傾げ傾げしながらも、手渡されたズボンをはく。






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