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0273★思っていた以上に、馬車旅は快適

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 微睡みに近いぼぉ~っとした時間が一刻ほど過ぎ去った頃、白夜がムクッと起き上がり、ペタンとベッドに座り込んで、目元を擦りながら挨拶する。
 その機嫌を現すように、背中の翼は軽くパタパタとしていた。

 「おはようございます 父上」

 起きた時に、自分と視線が合ったことで、嬉しそうに目覚めの挨拶をする白夜に、神護も優しく応える。

 クスクス……背中の翼が、まるで猫の尻尾のような表現をするな
 お陰で、白夜の機嫌の状態が一発で判るぜ
 やっぱり、馬車はいいな、気分的にゆっくりと出来るし

 「ああ、おはよう、白夜………ところで…起きれるか?
  身体と翼の根元の痛みは、どうだ?」

 見た限りじゃ、今は痛みはないようだが? はてさて、どうかな?

 神護にの状態を問われた白夜は、翼の生え際である根元が痛まないことを自覚する。

 「えっとぉ~……なんか、大丈夫みたいです
  こうしていても、痛みもありませんし………身体も痛みません
  肘や膝の方も大丈夫みたいです」

 首を傾げながら、そう答える白夜に、神護は柔らかく微笑する。

 「そっか、良かったな、白夜
  そんじゃとりあえず、俺達の朝食の前に馬達を馬車ン中から
  外に出してトイレをさせなきゃな

  その間に、あいつらにも朝食の飼葉をたっぷり食わせてやろう
  気は急くが、無理してガツガツ進まなきゃなんねぇ旅じゃねぇ~から
  食事や水の制限をしなくてイイもんな

  今日も、頑張って街道を走ってもらう為にも
  馬達にも、きっちりとメシを食わしてやろうな、白夜」

 そう言いながら神護が起き上がると、枕元に巣の状態したところで丸まっていたリンクが目を手でコシコシしながら挨拶する。

 『おはようございますぅ リンクも起きましたぁ 一緒に行きますぅ
  ここで ひとりで待つのはイヤですぅ リオウも行くんでしょ?』

 そうリンクが言えば、リオウも起きてくぅぅぅ~っと身体を伸ばして、ご機嫌で尻尾を揺らしていた。
 その様子を見ながら、神護はソッと抱き上げて床に降ろしてやる。

 勿論、神護もベッドから降りて、動きやすい服に着替える。
 当然、神護と行動を共にしたい白夜も、動きやすい服に着替えようと、ジタバタする。
 それを見て、神護は苦笑しながら言う。

 「慌てなくてイイぞ、白夜、ほら、手伝ってやるから………
  まだ、急成長したばかりで自分の身体の感覚に慣れてねぇ~んだから
  そんな風に慌てると、翼を痛めるぞ」

 神護に注意されて、白夜は素直におとなしくなる。

 あうぅ~……確かに 大きくなった身体に まだ感覚が慣れてなくて
 上手に服を脱ぐことすら出来ない…くっすん

 早くもっと大きくなって 私を護り 誕生させてくれた父上を
 私が護れるぐらいになりたいのに

 はぁ~…まだまだ 成人体への道のりは遠いな

 項垂れる白夜が、そんなことを考えているとは露とも思わない神護は、翼を痛めないように、着ていた服を脱がせやる。

 「ほら、この辺なんかどうだ?」

 室内にある衣装箱から、白夜のにちょうどイイ大きさの服を探し出した神護は、白夜に見せる。

 なんて言うか…自分の《力》ながら 本当に ちょうどイイものが
 入っているから助かるな

 「ええ ちょうど良さそうですね」

 少し前の気持ちが影響してか、やや大人びた口調でにっこりと笑っ言う白夜に、神護は頷く。

 そして、裁縫道具が入った箱を引き寄せ、神護はそこからハサミを取り出す。
 それは、白夜が服を身に付けた時に、翼が出る部分を考えのことだった。
 神護はおもむろに、ハサミを入れて、ざっくりと切る。








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