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0253★白夜が望むだけ………

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 ほんと、足触りなんて気にする余裕なんか、まるっきりなかったもんな
 せっかくだから、馬車の中に敷き込まれている、ジュータン?
 いや、織物かな? が、どんな柄なのかよく見たいし………

 そう思いながら、神護は視界を明るくする為に、光珠を呪文で作り出す。
 いや、別に光珠が無くても、暗視も仕えるので、室内が見えないわけではないのだが、やはりこういうモノは気分なのだ。

 確かに、このファンタジーな世界では、随分と俺も夜目が利くけどさ
 薄暗いけど、見える程度の光量はあるけど………それでもなぁ

 やっぱり、きちんと明るい光の下で生活したいもんな
 俺としても、生活水準が落ちるのは嫌だし………

 そんなコトを考えながら、光珠で周囲を照らし馬車の天井部分を確認する。
 そして、神護はソコで気付く。

 馬車の天井に張り付いている平べったい白い石のようなモノが、ほんのりとだが発光しているコトに………。

 なるほど、アレが馬車ン中の光源のモトだったわけね
 なら、純粋に《魔力》注げば良いのかな?

 そう思いついた神護は、作り出した光珠をそのまま天井へと押し上げる。

 光珠が天井の半分くらいを占める白く平たい石のようなモノに触れると、そのままスゥーと吸い込まれた。
 途端に、夕暮れ時の室内で、蛍光灯を点けたような明るさを帯びる。

 なるほど、あれがこの世界の電灯代わりなわけね
 電気の代わりに、光魔法の《魔力》が動力源ってコトか

 そんなことを考えながら、神護は柔らかい足触りの絨毯を見下ろす。
 基調が色鮮やかな赤とオレンジで、幻想的な花が咲き乱れ、そこに新緑や深緑などで複雑な唐草模様が描かれていた。

 神護は、素足になった足裏に感じるジュータンもどきを見詰める。

 うわぁ~……改めて実感………すっげぇ~足触りイイ~……
 男子高校生として生きる、現実の世界でなんて………ぜってーに
 こんな足触りの良い、綺麗な絨毯を踏む機会なんてねーよなぁ……

 いっくら、親父が給料の良い外科の勤務医だったとしても
 こういうモンとは、どうやったって縁なんてねぇ~もんなぁ~……

 クスクス………現実世界だったら、夢のまた夢なことも
 このファンタジーな世界だと努力次第で、結構簡単に手に入るみたいだな

 また、あの虹色オオトカゲを見付けたら、絶対にゲットしよぉ~と

 そんなことを考えながら、神護はベットの置かれている広い空間へと入り、そこで愛らしくうつ伏せで眠る白夜に、優しい視線を向ける。

 ふっ……白夜のヤツ…やっぱり…よく眠っているなぁ
 急激な翼の成長は、身体にも負担だったんだろうな
 まして、今回は身体もだもんな

 神護はいたわるように、ソッと白夜の黒髪を撫でてやる。
 本来の皇太子としての色から【守護者】の色を纏ったソレが擬態であることを、神護は知らない。

 また、白夜も自分の髪の色まで、気が回っていないのも確かな事実だった。
 いや、自分自身の姿を見る為の等身大の姿身らしい鏡が存在していなかったセイもあるが………。

 頭を優しく撫でられる感触に、白夜はピクッと身体を震わせ、背中の翼をパタパタと無意識に羽ばたかせ、その瞳を開く。

 「ああ、わりぃ~な…起こしちまったか? 白夜」

 ちょっと困ったような表情でそういう神護に、白夜は両手をベットに付いて、上半身を起こし、にこっと笑う。
 馬車の中に置いていかれたことが寂しかった白夜は、もぞもぞとを全部身体を起こして、神護に抱っこをねだる為に、両手を伸ばす。

 そのおねだりに、少しだけ苦笑して白夜を抱き上げ、神護は自分がベットに座って、抱き上げた白夜を膝に降ろして抱えなおした。

 こうやって、何時まで、白夜を抱っこしてやれるかなぁ?
 ああいう急成長を、段階的にするんじゃ……短いだろうなぁ

 何時まで、こうして抱っこしてやれるかなぁ?
 本当に、判らないからなぁ……

 だから、望んだ分だけ、白夜を抱っこしてやろう
 少しでも、それが白夜のこころの慰めになるなら

 白夜の急成長を何度も目の当たりにした神護は、白夜を長く抱き上げてやれないだろうことを感じていたので、できるだけ、その望みを叶えてやろうと思うのだった。










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