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0207★《転移》でもとの場所から

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 「白夜…その…翼が大きくなったことが嬉しいのは理解わかるが…
  ちょっとの間、翼を動かさないでくれ」

 神護のセリフに、ハッとした白夜は、ぴたっと翼を動かすのを止める。
 その間に、神護は【ルシフェル】の樹液を手のひらに出し、唱える。

 「……《清浄》……《治癒》……」

 翼の根元の裂けた傷口を洗浄し、癒しの魔法をかけてから、いまだにジクジクしている傷口の上に、樹液をたっぷりと塗り付ける。
 一応の処置が終わった神護は、白夜の翼の根元とドレスの背中の空間を考えて、白夜に言う。

 「はぁ~…白夜……流石に、今回は翼…というか、その根元部分が
  だぁ~いぶ育ったからなぁ……ドレスの背中部分を切り取るしか
  無さそうだが、良いか? このままだと少々窮屈だろうし………

  次に翼が成長する時は、まず間違いなく、大きくなった根元の
  付加に負けて、大きく広がるだろう傷口を擦るのは確実だな
 
  そうなると、すれた時にかなりの激痛になると思うから………
  今の内に、少し大きめに背中部分を切り取っちまうか?」

 ドレスの背中部分の布を切り取ったら切り取ったで、かなぁ~り
 スカスカするかもしれないけど、翼の根元への負担は減るだろう

 神護のセリフに、翼の成長痛に悩まされている白夜は素直に頷く。

 「お願いします 父上 流石に 翼の成長する痛みはつらいです
  傷口を擦ったらと思うと………」

 と、言って無意識に身体と共に翼を震わせる白夜に、神護は苦笑いを浮かべる。

 「そうだな……んじゃ…切り取るぞ…」

 そう言い放って、神護は白夜に着せたドレスの背中部分の布を大きめに、短剣で切り取った。
 そして、神護は今まで肩で留めていたマントを手に悩む。
 
 「はぁ~…マントを肩に止めるても、翼が出て目立つからなぁ……
  もう、これは肩に止められないから、いっそのこと頭から被るか?
  それなら、翼の存在は隠せるし………」

 神護のセリフに、白夜は素直に頷くのだった。

 そして、白夜の翼の治療を済ませた神護は、ちょっと悩んだが、もう一度神殿から《転移》して、礫砂漠れきさばくと樹海の稜線を歩くことにした。

 この《転移》ってモノはとても便利なのだが、行ったことのある場所にしか行けない上、どの程度の距離が移動できるか判らないので、とにかく未知の領域を歩くしかないのだ。

 白夜は、素直に神護の腕に抱っこされている。
 流石に、成長音が聞こえるほどだっただけに、痛みも強かった為に、今は動く気力もないのだ。

 それでも、眠気というモノは来なかったので、神護の中からキョロキョロと辺りを見回していた。
 勿論、神護は白夜を左手1本で抱き上げて歩いていたりする。

 常に片腕は空けておかないと、何時、何処から、どんな者に狙われるか分からないから………。
 白夜が、抱っこされての移動に不平不満が無いのは、神護の腕に抱き上げられるのが、ことのほか大好きな為だった。











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