上 下
192 / 328

0192★白夜は甘い物が好きらしい

しおりを挟む


 神護は、李紅りくの樹にたどり着き、自分の手の届く辺りに垂れ下がって来ている果実をもぐ。
 それを、腕の中からキラキラした瞳で果実を見ている白夜に手渡す。

 「これで良いか? 白夜 見た目てきに熟れていそうなの選んだが
  とりあえず、食べてみたらどうだ?」

 「はい 父上 嬉しいですぅ~……」

 神護に手渡された李紅りくの果実を、自分のマントの内側で軽く拭いてから、白夜は躊躇ためらうことなくカプッと齧り付く。

 そんな愛らしい姿に双眸を細めた神護は、自分の分とリオウの分と、2つもぎ取り、白夜と同じようにマントの内側で軽く拭く。
 1つはリオウに与え、もう1つを口に運び、果実を齧ってみた。

 ふ~ん…見た目てきには、大きめのリンゴだが、中身は………
 果汁たっぷりのスモモに似ているかな?

 この李紅りくの果実、意外と美味しい……この酸味がたまんないな
 そして、食べて思ったのは、見かけより糖度が高いことだな

 ふむ……李紅りくの果実を、美味しそうに食べている
 白夜の様子からして、かなり甘いモノが大好きなようだな

 そういえば………あの風糖ふうとうの大房をペロッと食べて
 コップいっぱいに入っていたハチミツを、ぜぇ~んぶ食べても

 甘すぎてつらい………なんてこと、ひと言も言わなかったっけ

 白夜に、まだろくなモノを食べさせてやれて居ないが
 食べ物の好き嫌いはあるのかな?

 一応、イワウオ火熊に、風糖ふうとう李紅りく
 2種類の果物くらいしか食べさせてないが………

 あぁ…本気で…まっとうな食生活したいな…いくら《転移》で
 いにしえの女神の神殿に移動できることがわかって
 安全が確保されても、あそこには、生活に必要なモノはないし

 ふむ…思っていたよりも、李紅《りく》の種は小さいんだな
 可食部分が多いのは嬉しいな
 さて、李紅《りく》の種…植えておいたら芽が出るかな?

 内心が零れ落ちないように、溜め息を飲み込み、神護は李紅りくの果実を食べ、その種を地面に落とし、つま先でクイッと地面の中へと沈める。

 「白夜、もう少しいるか? 今日はこのまま、いにしえの女神の神殿に
  《転移》して休もうと思うんだが………」

 太陽が砂漠の稜線へと沈みかけているのをチラリッと確認し、完全に没する前に、女神の神殿へと《転移》することを告げる。

 「父上 白夜はもう少し食べたいです せっかくですから 巾着に
  熟れているのを採取していきましょうよ」

 キラキラの瞳でそう言う白夜に、神護にとって、とりたて急ぐ旅ではないので頷く。

 美里みさと街と蝦蟇野がまや街に捕まっている、弟達は気になるだろうが……
 白夜自身が、もう少しで良いから育たないとどうしようもないな

 それに、長距離の移動は身体の負担になるかもしれないし……
 って…頻繁な《転移》も負担になるのかな?

 白夜の成長に悪影響とかあるかな?本人に確認してみるか?







しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?

ノデミチ
ファンタジー
ゲームをしていたと思われる者達が数十名変死を遂げ、そのゲームは運営諸共消滅する。 彼等は、そのゲーム世界に召喚或いは転生していた。 ゲームの中でもトップ級の実力を持つ騎団『地上の星』。 勇者マーズ。 盾騎士プルート。 魔法戦士ジュピター。 義賊マーキュリー。 大賢者サターン。 精霊使いガイア。 聖女ビーナス。 何者かに勇者召喚の形で、パーティ毎ベルン王国に転送される筈だった。 だが、何か違和感を感じたジュピターは召喚を拒み転生を選択する。 ゲーム内で最弱となっていたテイマー。 魔物が戦う事もあって自身のステータスは転職後軒並みダウンする不遇の存在。 ジュピターはロディと名乗り敢えてテイマーに転職して転生する。最弱職となったロディが連れていたのは、愛玩用と言っても良い魔物=ピクシー。 冒険者ギルドでも嘲笑され、パーティも組めないロディ。その彼がクエストをこなしていく事をギルドは訝しむ。 ロディには秘密がある。 転生者というだけでは無く…。 テイマー物第2弾。 ファンタジーカップ参加の為の新作。 応募に間に合いませんでしたが…。 今迄の作品と似た様な名前や同じ名前がありますが、根本的に違う世界の物語です。 カクヨムでも公開しました。

ただひたすら剣を振る、そして俺は剣聖を継ぐ

ゲンシチ
ファンタジー
剣の魅力に取り憑かれたギルバート・アーサーは、物心ついた時から剣の素振りを始めた。 雨の日も風の日も、幼馴染――『ケイ・ファウストゥス』からの遊びの誘いも断って、剣を振り続けた。 そして十五歳になった頃には、魔力付与なしで大岩を斬れるようになっていた。 翌年、特待生として王立ルヴリーゼ騎士学院に入学したギルバートだったが、試験の結果を受けて《Eクラス》に振り分けられた。成績的には一番下のクラスである。 剣の実力は申し分なかったが、魔法の才能と学力が平均を大きく下回っていたからだ。 しかし、ギルバートの受難はそれだけではなかった。 入学早々、剣の名門ローズブラッド家の天才剣士にして学年首席の金髪縦ロール――『リリアン・ローズブラッド』に決闘を申し込まれたり。 生徒会長にして三大貴族筆頭シルバーゴート家ご令嬢の銀髪ショートボブ――『リディエ・シルバーゴート』にストーキングされたり。 帝国の魔剣士学園から留学生としてやってきた炎髪ポニーテール――『フレア・イグニスハート』に因縁をつけられたり。 三年間の目まぐるしい学院生活で、数え切れぬほどの面倒ごとに見舞われることになる。 だが、それでもギルバートは剣を振り続け、学院を卒業すると同時に剣の師匠ハウゼンから【剣聖】の名を継いだ―― ※カクヨム様でも連載してます。

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

引きこもりが乙女ゲームに転生したら

おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ すっかり引きこもりになってしまった 女子高生マナ ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎ 心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥ 転生したキャラが思いもよらぬ人物で-- 「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで 男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む これは人を信じることを諦めた少女 の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...