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167★ロ・シェールの街30 履歴書を書いてもらおう

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 「確かに、魔法が使えるか? 属性は?
 なんて、いちいち説明するより

 紙に書いて手渡した方が、アレックス様に
 良くわかってもらえるしな…書くよ」

 「ここに線を引いただけの用紙もありますので
 ざっとした経歴を、こちらに書いて下さい

 貴方達も一緒に書いて下さい
 アレックス様は、人探しの為に
 1年は雇いたいと言っていましたので…………」

 エルリックの説明に、ちょっといやかなり面倒臭いと思っていた彼らだったが、1年は雇ってくれると聞いて、さっさと書こうという気になった。
 誰だって、確実に雇ってもらい、お給料を定期的にもらいたいと思っているから。

 目を期待できらきらさせている男達に、エルリックから用紙の束を受け取ったレオが各自に手渡して歩いた。
 全員に用紙を渡し終わった頃に、浅黄の声が聞こえる。

 「エルリック、レオ達を連れて入って……」
 
 浅黄の言葉に頷いたエルリックは、扉を開けて部屋に入る。
 その後、レオ達が続いた。
 ソコには、揃いの軍服を着た男女が居た。
 会議室なので、全員が座れるテーブルとイスがあったので、和也は座るように声を掛ける。

 「レオ、それと君達も、ここに座って欲しい」

 和也の言葉に従って、レオを筆頭に全員が座った。
 その目の前に、ユリアとリリアが、お茶を置いていった。
 それは、落ち着いて、記入して欲しいと思った和也が、命じたことだった。
 全員が、お茶を飲みほっとひといきついたのをみはからって、浅黄が声を掛ける。

 「お茶は飲み終わったようだね…
 さっそくで悪いけど…

 用紙に記入して欲しい
 …その後に……………」

 「今日の報酬を出します」

 浅黄の言葉を途中でさえぎり和也は、さらりと言う。

 今日の仕事の対価をもらえるとわかった男達は、嬉しそうに用紙を書き込んだ文字で黒くしていった。
 その様子を見て、浅黄が和也に話し掛ける。

 「アレックス、良かったね…
 全員が文字を書ける人間で……

 これは幸運だと思うよ
 それに、全員、思っていたより優秀で……」

 「文字が、書けるのは助かりますね
 定期報告とか業務内容とかを

 口頭で伝えられるより
 文章で提出してもらう方が便利ですから」

 和也と浅黄が機嫌よく会話している間にも、レオ達はせっせと用紙に記入して行く。
 それを、エリカ達はじーっと見ていた。
 どうやら、座っている席と容姿を元に、名前を名乗られたら人物として覚える予定らしかった。
 そして、一番に書き終えたレオが立ち上がり和也に声を掛ける。

 「アレックス様、記入か終わりました」

 エリカは、この世界の文字を書けないし読めない和也の為に提案する。
 その為に角が立たない(=和也の機嫌が悪くならないように気を使った言い方をする)ように、言葉を選んでいた。

 「アレックス様、私とエルリックで
 分類しても宜しいですか?」

 レオ達を分類するってどういう風にするのか?と思った和也は質問する。

 「どういう分類をするんですか?」

 「レオみたいな、渡りの戦士とハンターと
 傭兵とかに分類します」

 「渡りの戦士と傭兵って違うの?」

 「戦士と名乗っている者達は
 独りで行動します

 傭兵と名乗っている者達は
 独りで行動することはありません」

 「戦士と傭兵とハンターの仕事の違いは?」

 「戦士は、個人の好みで、剣や槍や弓を使い分け
 キャラバンの警護や個人の警護をします

 たまに、都市の兵士になったりしますが
 個人で契約することが多いです

 傭兵はそれぞれ得意な武器を扱う集団で動きます
 基本は戦争で戦う為に、槍を使う集団

 弓を使う集団、剣を使う集団
 盾と剣を使う集団などと

 戦う方法によって別々の集団を作ります
 このように違いがあります

 ハンターは色々なモノを獲物として狩ります
 その豊富な経験と知識で、キャラバンや
 個人の警護をします

 独りまたは、チームで仕事を請け負います
 人数はその時によって違います

 世慣れているというのは
 戦士やハンターだと私は思います」

 エリカの説明に、コクコクと頷く和也と浅黄だった。
 が、ふと、浅黄は、最初の頃の説明を思い出して質問する。

 「戦士、傭兵、ハンターの他に
 魔法使いとかって分けるのかな?」

 「ハンターのチームの中に
 魔法使いも入りますが
 個人で魔法使いとして行動する者もいますので…」

 「そうですか…それで…
 魔法使いって、そんなに大勢いるんですか?」

 「魔法使いと名乗れる程の《力》ある者は
 非常に少ないので
 この中に居るかどうかはわかりませんが………」






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