42 / 173
040★昔は人間、今は幽霊、との対話
しおりを挟むその、一応無理はないいけどぉー‥な設定に、和也は思わずはふっと嘆息する。
うっわぁー‥‥うさんくさぁー‥‥
いや、ファンタジー系のRPGだったら‥確かに、ありですけどね
でも、つまらないから、ボクはちょっとひねた感じに答えましょう‥‥
どんな答えを言うんでしょうか?
楽しみです‥‥‥‥これが、緑川くんだったら‥‥‥‥
いや、緋崎くんでもおもしろい答えが聞けたでしょうねぇ‥‥‥‥
これが、浅黄くんでも‥‥‥はぁ~‥‥‥‥‥
どうして、今、彼らが側に居ないんてしょう?
同じ時に、同じアルバイトで、このRPGにいる筈なのに‥‥‥‥
えぇ~い‥‥ちょっとぐらいイイですよね‥‥
「ほほぅ~占いねぇ‥‥‥‥」
ガラムの答えに、和也は眉をひそめて言う。
和也のボクはとぉーっても疑ってますという答えに、ガラムは、ちょっと哀しそうな表情で答える。
「信じて頂けないのは、重々承知しております。が、我がキャラバンには、幼子や女、年老いた者もおります。どうか、水を分けて頂きたいのです」
また、頭を下げながらガラムは、水が欲しくて必死なんですという感じを濃厚なまでに醸し出していた。
う~ん‥‥パターン通りで‥‥なんか‥‥つまんないなぁ~‥‥‥‥
もっとこう‥‥映画みたいに‥‥‥おもしろい‥答えが‥‥欲しいなぁ~
「‥‥‥‥」
それに対して、和也はあえて無言で答える。
りっぱに、かなぁ~り酔っている和也は、普段の人を思いやるという感情が、ほとんど眠り、何でもおもしろがるし、我がままという性格に、支配されている。
普段、人を思いやるとか、人の考えを尊重するという、自重がかなぁーり入った状態を維持していたので、その分、反動が大きく出ているようだった。
だから、和也の表情は、なまじ整っているだけに、支配者?の傲岸で冷たい性格が滲んでいるように見える。
無言で圧力をかけてくる?和也に、ガラムは心底困ったという顔をする。
そんなガラムに、側近らしい男が、何か耳打ちする。
「長、水が無ければ旅は出来ません。ここは、思い切って、商品の奴隷を見せて気に入った者を、差し上げるというのは‥‥‥‥」
男の提案に、ガラムはあっさりと頷く。
「サウル、その手があったな‥‥そうだな‥‥ロ・シェールの都に着く期限も迫っている‥この際、奴隷の一人で、水が手に入るのなら‥‥」
自分の持つ常識(平和な日本の学生の一般的な常識)を、遥か彼方に捨て去るような非道な提案に、和也は驚いてしまう。
‥‥‥‥えっ‥‥えっとぉ~‥‥‥‥
いや‥確かに、映画みたいに、劇的なことが起きて欲しいと思いましたが‥‥‥‥
水を手に入れるために、奴隷をボクに差し出すって‥‥‥‥
黙っていたセイでしょうか?
そんなにボクは、強欲に見えたんでしょうか?
こんな時は、物知りなエンにちょっと聞いてみよう‥‥‥‥
ありえない‥‥‥水と人間の命いや人生の交換って‥‥‥‥
でも、ちょっとズレた空間に居るようだから‥‥‥‥
風の精霊のハナに、声だけのやり取りになるようにしてもらいましょうか‥‥‥
だって、エンの存在が、バレたら、即、逃げられてしまいますからね
あまりの非道な発言に酔いがばっちりと冷めた和也は、対処に困って風の精霊のフウカに声をかける。
「ハナ、ボクとの会話を彼らに聞こえないように出来ますか?」
『ますたー‥‥ハナ‥‥出来ますよぉ‥今から‥ますたーの周りの‥空気を‥こっちの空気と繋ぎますぅ‥‥‥』
「大丈夫?」
『出来ましたぁ~ますたーが、誰と喋ってもアレらには聞こえませんよぉ』
「ありがとう‥‥エン‥ガラムとサウルの会話を聞いていたよね?」
『はい』
「ここの水が欲しいからって、奴隷をボクに差し出すって‥‥おかしくない?」
『ますたー‥‥砂漠で‥1番大切なのは‥命の水です‥‥当然でしょう‥‥』
「エン‥だって‥‥人間をボクに差し出すって‥」
『人間にとって、奴隷はモノです‥‥単なる‥物々交換ですよ‥』
「でもね‥‥あーもう‥なんて‥‥言ってイイか‥」
『ますたー‥‥奴隷と言っても‥‥ピンキリです‥あの程度のキャラバンが‥扱っている奴隷は、二流品ですから‥そこまで‥高く無いですよ』
所詮は、この世界の精霊なので、やはり常識が違う。
だから、和也が何に困っているかわからないのは当然のことだった。
人の命の価値が、かなりどころではなく違うことを理解出来ていない和也は、更に困惑を深くする。
「いや‥‥だからね‥‥」
和也が盛大に困惑しているのに、エンキは自分の考え(この世界の常識を基にした)をヘロッと言う。
『ますたー‥‥奴隷も人間ですから‥‥人間と喋りたいときに‥役にたちますよ‥‥‥とりあえず‥人間ですから‥‥‥』
その言葉を隣りで聞いていたホノカが、注意する。
『エン‥アイツらは‥‥幽霊だってば‥』
ホノカの注意にハッとしたエンキが、短絡的に言う。
『‥‥ああ‥‥そうだった‥では‥‥焼くか?‥』
不浄なモノが嫌いなホノカは、和也に同意を求める。
『そうしましょう‥‥ねっ‥ますたー‥』
和也はそんなホノカとエンキに肩を竦めて首を振る。
「もう少し様子を見ます」
和也が精霊達と不毛な会話をしている間に、ガラムはサウルと会話していた。
「サウル、奴隷は全員出しなさい」
「‥‥‥?‥」
「あの豪華な天幕を見ましたね?」
「はい‥‥でも‥‥お付きの者の姿がみえませんが‥‥‥‥」
「たぶんに、精霊を使役しているのでしょう」
「精霊ですか」
「見てごらん、サウル‥‥‥テーブルには、出来立ての見たことも無い料理の山が、黄金の食器に盛られています」
その言葉にハッとしたサウルは、改めてテーブルの上を見て頷き答える。
「確かに‥‥‥それに、かなり高価そうな‥クリスタルの器もありますね」
「だから、奴隷は全員だしなさい。それとロ・シェールで、売る予定の商品も出しなさい」
「‥‥?‥‥」
「もしかしたら、気にいって、お買い上げしてくれるかもしれません」
どこまでいっても、商人なので、商売になりそうだと判断すると直ぐに商談したくなる彼らだった。
サウルはすぐに準備(商品陳列)にかかるために頷く。
「はい、用意致します」
和也が精霊と会話している間に、サウルは、奴隷や商品を入れていた馬車?を馬?に引かせて、和也の前に移動させていた。
1
お気に入りに追加
363
あなたにおすすめの小説
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる