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0181★決まる時には決まるモノである

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 勿論、藤原明宏の弟・明仁を捕らえているコトもちゃんと聞き出していた。
 そして、衰弱しきった身体を癒す為に、聖樹は精神の中へと再び降り立ち、やっと迎え入れることが出来た我が子・紫皇(しおう)を腕にしばしの微睡みに入った。

 衰弱した身体が微睡みに沈み込むと、俺は抱き締めた我が子・紫皇(しおう)がきちんと腕の中に居ることを確認する。
 腕の中では、紫皇(しおう)が人型のまま縋りついたまま眠っていた。

 〔良かった、紫皇(しおう)は
  あのまま眠りに入ったんだな

  俺自身の魔力器官も目覚めたし
  朱螺が俺に注いだ魔力もあるから
  今は大丈夫だけど

  早いところ衰弱した身体をなんとかして
  あっちの世界に渡る方法を考えないとな
  せっかく、紫皇(しおう)を腹に
  呼び込めたんだから〕

 聖樹は、優しい気持ちで精神世界でも微睡みへと緩やかに落ちていき、安息へと浸り始めた。

 聖樹が話し終えて睡魔に呑まれるまま眠りに落ちたのを確認し、母・悠美と父・聖、妹・聖子で、これからのコトを話し合っていた。

 最初に口火を切ったのは、聖子だった。

 「とりあえず、お父様はさっさと
  あの女(ひと)と離婚しないとね
  あっ……その時は、きちんと私を
  引き取って下さいね

  私だって、聖樹お兄様のお母様を
  きちんとお母様って呼びたいんですから
  何時、聖樹お兄様があちらに渡るか
  全然わからないんですから

  少しでも一緒に居る時間を増やしたいわ
  それに、ウチにある文献も調べたいし
  何か、お兄様の役に立つようなモノが
  書庫に眠っているかも知れないわ」

 ハキハキと自分の意見と希望を言う自分の娘に、聖は勝手に精子を採取して作られた娘の存在を感謝した。

 〔ほんのひと時、この残り少ない寿命を
  愛する女と一緒に居たい
  彼女が私の存在を否定しないなら………
  望んでも良いだろうか?〕

 「そうだな、それが聖樹の望みなら……
  いや、本音で……偽らず言おう

  私は、神無月聖と申します

  あの時、貴女に抱き締められて
  私の中に巣食った邪神が
  何かの強力な力によって
  祓われたコトを覚えています

  その後、心神喪失に陥っている間に
  祖父の手で全てが終わっていました

  貴女や聖樹の存在を知ったのは
  実は去年だったのです
  もうこの命が長くないと悟った私に
  聖子が探してれました

  貴女や聖樹に逢いたいと思いました
  ただ、私の直接の被害者である貴女に
  情けないですが、逢う勇気が無かった

  それでも、せめてと……
  聖子が聖樹を私の元に連れて来てくれました
  聖樹を見て、貴女に逢いたいという思いと
  逢いになど行ってはいけないと苦悩しました

  こうして、手を伸ばせば貴女が居る
  私を救ってくれた貴女が………
  私は、貴女を欲しても良いですか?

  悠美さん…残り僅かな時ですが
  私と一緒に生きて欲しい」

 本音で、隣りに座った悠美の手を取り、本気交際を申し込む聖に、悠美はとても嬉しそうに微笑む。

 〔私が本当に欲しいもの
  確かに受け取ったわ
  双頭蛇の姿した異界人さん
  ありがとう〕

 こころの中でそう呟いた悠美は、はっきりとした言葉で言う。

 「こちらこそ、よろしく
  神無月聖さんて言うのね

  ずっと貴方の名前が
  知りたかったのよ」

 というような、ラブラブに突入する悠美と聖だった。
 そして、そんなやりとりを、聖子は聖樹の為にちゃんとスマホで撮影していたのは内緒の話しである。








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