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0170★聖子ぶち切れする
しおりを挟む見かけは普通のマンションだが、中身は最新のテクノロジーの粋を集めた、現代の要塞のような明宏の居城は、聖子の怒りの前に砂上の楼閣のように崩壊して行く。
当然、明宏もそこに居て、泰然と聖子と対峙し、聖子達の破壊と侵入行為がどれだけ常識ハズレかと正論をブチかます。
が、そんなモノはなっから聞く気の無い聖子には無意味だった。
「私の聖樹お兄様を返して頂くわ
勿論、対価はお前達の破滅よっっ
絶対に、許さないんだからっ
せっかく、せっかく、お兄様と……
遊ぶ予定がパーですわっ」
自分は聖樹の妹だと言う聖子に、明宏は聖樹を正統にオークションで買ったから自分のモノで、聖樹の全てを自由にする権利があると真っ向から言い放った。
その瞬間、聖子の中の何かがブッツリと切れた。
「どの口で、そんなことを言うかっ
このおぞましい外道がっ
自分がしたことがわからないというなら
お前が大事というモノ全てを
我が、神無月聖子の名において
全て破壊してやるわっ
当然、お前の弟も…ね……
聖樹お兄様と同じ目に……いいえ……
それ以上の地獄をあじわせてやるわ
このわたくしに、ケンカを売ったのだから
たかぁ~く買ってあげるわ
奪われる苦しみ…味わうとイイ
お前達、藤原明仁を捕らえなさいっ
多少の傷は構わないわ
生きて、地獄へと叩き堕としとてやるっ
そうして欲しかったんでしょう
藤原明宏……お前の罪に対する罰は……
お前の最愛の弟が…負うのよ…くすくす……
お前の手の届かないところに監禁されて
色々な男や獣に陵辱されるのよ
楽しいでしょうねぇ~……
私達の苦痛を、思い知るがイイわ……」
その宣言と同時に、マンションのあちらこちらに設置されているコンピューターというコンピューターが、スマホに至るまで火を噴いた。
常日頃、能力が低いとされる聖子だが、激高した感情のセイで、リミッターが振り切れての暴走である。
神無月の血筋としての占術や神降ろしなどは苦手とする聖子だが、物理的な念動力はかなり強かった。
聖子は、普段から冷静沈着を心がけ、能力を極力抑制している為、感情によって触れ幅の大きい念動力は、激高した今、最高潮に強力な破壊力を発揮していた。
聖子と共に藤原明宏が所有するマンションに乗り込んだ灰茨を筆頭とした男達は、その指示に従って、半分の人数が明仁を探し始める。
勿論、メインは聖樹の探索だが、そのついでに明仁を探す為に、聖子の側を離れて、マンションの中へと散って行く。
残りの半分は、念動力を行使する聖子の護衛として付かず離れずの位置で、護っていた。
あまりに近いと、聖子の念動力に弾き飛ばされる可能性があるので、少し距離をとっているのだ。
勿論、乗り込む前に、このマンションに出入りしている人間は確認していた。
当然、明宏の腹違いの義弟・明仁のことも詳細に調べていた。
そう、そういう(近親相姦)関係があることも、調べ上げていた。
先の発言は、明宏の動揺を誘う為のセリフだった。
そんな中、聖子はカツカツと靴音を響かせながら、聖樹の放つ波動を捕らえて、嬉しそうに笑う。
「ああ、よかった…聖樹兄様の気配がする
はっきりとした波動が…感じられる……」
うっとりとそう言って、聖子は自分の前に立ち塞がり、聖樹を買ったとほざいた藤原明宏を念動力でもって吹き飛ばし、その奥へと進む。
勿論、吹き飛ばした明宏へなど一瞥も与えず、冷たい声で………。
「奪われる苦しみを知ると良いわ」
そう、言い放って、壁に叩き付けた明宏の横を堂々と通り抜けて行く。
一方、聖子の念動力で廊下の壁へと吹き飛ばされた明宏は、酷く焦っていた。
自分が、踏んではいけない地雷……いや、怒れる龍の【逆鱗】に、無造作に悪意の爪を立て、掻き毟ったという事実を、その身で味わったが為に………。
〔まずっ…た……こんな…バケモノ…を…
くそっ…怒らせた…ま…ずい…うぐっ……
明仁が…標的に……くぅぅ…躯が…動かない〕
壁に叩き付けられ、息が止まりかけた明宏は、背中から走る痛みにもがきながら、愛しい弟・明仁のことを気にかけ、躯を起こそうとする。
が、聖子の怒りの念動力を直接その躯に受けた明宏は、その意思に反して、身動きひとつ出来なかった。
慌てて明宏の部下が走り寄ろうとするが、聖子の側に残った灰茨達がそれを邪魔する。
勿論、灰茨を筆頭とした聖の側近達は、大事な主の息子への暴虐を許すほど寛容な性格はしていない。
明宏の部下達をことごとく叩き伏せながら、灰茨達は聖子の後へと続く。
真っ直ぐに、兄・聖樹の元へと進む聖子は、何度目かの角を曲がったところで、自分の方に向かって逃げて来る明仁を見て、眉を顰めた。
次の瞬間、聖子は明仁に念動力を放っていた。
目の前で、廊下の壁に叩き付けられた明仁を、灰茨は速やかに捕らえ、拘束して部下の椎名に渡す。
「大事な、生贄だ…絶対に逃がすな」
「はい」
頷いた椎名は、拘束状態で手渡された明仁の口に猿轡を噛ませる。
怒り狂っている聖子を宥める為の大事な生贄なのだ。
〔聖樹様がどういう状態で見付かるか……
場合によっちゃー…いや、確実に……
あいつ等同様、この坊やは…生き地獄行きだな〕
椎名は、明仁を肩に荷物のように背負い、聖子と灰茨の後を追う。
聖子は聖樹の波動を辿って歩いている為、まだそんなに距離は離れていなかった。
直ぐに聖子達に追い付いた椎名は、聖子が開いた扉の前で立ちすくんでいるのを見て、首を傾げた。
その瞬間…………。
「酷いっ…聖樹お兄様っ…」
そう、聖子は悲鳴のような声で叫んだ。
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