上 下
156 / 183

0155★閑話・聖と聖子の怒りと焦燥感

しおりを挟む



 それは、神楽聖樹がクラスメイトに騙されて、デモニアンの手でオークションにかけられ、藤原明宏と言う男に売られて1週間もした頃に遡る。

 それまで、確かに感じていた聖樹の波動が途切れたことから判ったことだった。
 病院の特別室で、父親・聖と今後を話していた聖子は、ハッと顔を上げて、震える声で言う。

 「お父様……聖樹お兄様の波動が……」

 聖も、蒼珠から感じていた波動が途切れたことに頷く。

 「聖樹の身に、何かあったようだな
 あれほど、無闇に祈るなと言い含め
 約束させたのに………

 何か、約束事を破るような衝撃的なことが
 聖樹の身に、あったようだな

 神無月の血に覚醒(めざ)めた意味を
 まだ、充分に理解していなかったか……」

 〔聖樹は、まだ神無月の血に覚醒して間もない
 本当の意味で神無月の血筋が持つ《力》を
 何も知らない

 なのに、何故か…聖樹には私以上の素質がある
 巫覡(シャーマン)としての《力》が強すぎる

 依坐(よりまし)として、その《力》で 
 神と呼ばれるモノを降ろすだけなら良いが……

 いや、私のように、肉体を邪神などに
 乗っ取られてしまうのはよくはないが
 それでも………

 異なった世界へと跳躍(とん)んでしまっては
 私達も助けようが無い………

 なら、せめて精神が抜けてしまった肉体だけでも
 私達の手に、確保しておかなければ

 もしもの時には、我等の《力》を結集させて
 呼び戻しするという手段が使えない

 よしんば、その精神が跳躍(とん)でしまい
 こちらに帰還できずとも、聖樹の肉体があれば……
 あの子の血統を残すこともできる

 いや、それは最終手段だが……

 はぁ~…まさか……聖樹が
 神無月の血に覚醒(めざ)めて直ぐに
 こういう展開(精神の行方不明)だと
 狙われたとしか思えんな 

 しかし、まさか………
 聖樹の波動が、こうもキレイに途絶えるとは
 今、聖樹の精神はこの世界に無いということ

 神無月の古い古い何時のモノかわからない記述に
 《力》が強すぎて、異界に渡った者がいると
 書いているモノがあった

 聖樹が、界を渡る《力》あるモノとは………

 神無月の血が、そこまで濃いはずがないのに…
 あの子は……聖樹は…とんでもない《力》を
 内包していた…会ってみて判った

 だから、危惧していたのだが………〕

 自分の腕に刺さる点滴を見詰め、聖は深い溜め息を吐いて言う。

 「聖子、見ての通り、病身の私は、残念ながら
 今思うように動けない
 私の代わりに、聖樹を探してくれないか?」

 聖樹を、兄としてひと目で気に入っていた聖子は、嬉しそうに頷く。

 「はい、お父様
 かならず、この聖子が聖樹お兄様を
 お父様のところに連れて来ますわ」

 聖子が席を立ち病室を出る、その背に聖は言う。

 「聖子…あいつらを連れて行け………
 武力行使してもかまわん

 神無月の血筋の者に手を出せばどうなるか
 思い知らせてやるがいい

 ついでだから、見せしめとして
 お前の好きなだけ破壊してかまわない
 その《力》でな

 聖子は、占術や神降ろしなどより
 物理的な攻撃が得意だろう
 好きなだけ行使してかまわない

 なに、後は、なんとしてでもやる
 あいつらは、神無月を手放せないのだから……」

 聖の言葉に頷き、聖子は常に待機している、聖の側近達に、その伝言と共に、連絡を入れるのだった。
 そしそて、ほんの数分で集まった者達に、聖子は聖の言葉と共に、聖樹を大至急探すように命令するのだった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

処理中です...