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0155★閑話・聖と聖子の怒りと焦燥感

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 それは、神楽聖樹がクラスメイトに騙されて、デモニアンの手でオークションにかけられ、藤原明宏と言う男に売られて1週間もした頃に遡る。

 それまで、確かに感じていた聖樹の波動が途切れたことから判ったことだった。
 病院の特別室で、父親・聖と今後を話していた聖子は、ハッと顔を上げて、震える声で言う。

 「お父様……聖樹お兄様の波動が……」

 聖も、蒼珠から感じていた波動が途切れたことに頷く。

 「聖樹の身に、何かあったようだな
 あれほど、無闇に祈るなと言い含め
 約束させたのに………

 何か、約束事を破るような衝撃的なことが
 聖樹の身に、あったようだな

 神無月の血に覚醒(めざ)めた意味を
 まだ、充分に理解していなかったか……」

 〔聖樹は、まだ神無月の血に覚醒して間もない
 本当の意味で神無月の血筋が持つ《力》を
 何も知らない

 なのに、何故か…聖樹には私以上の素質がある
 巫覡(シャーマン)としての《力》が強すぎる

 依坐(よりまし)として、その《力》で 
 神と呼ばれるモノを降ろすだけなら良いが……

 いや、私のように、肉体を邪神などに
 乗っ取られてしまうのはよくはないが
 それでも………

 異なった世界へと跳躍(とん)んでしまっては
 私達も助けようが無い………

 なら、せめて精神が抜けてしまった肉体だけでも
 私達の手に、確保しておかなければ

 もしもの時には、我等の《力》を結集させて
 呼び戻しするという手段が使えない

 よしんば、その精神が跳躍(とん)でしまい
 こちらに帰還できずとも、聖樹の肉体があれば……
 あの子の血統を残すこともできる

 いや、それは最終手段だが……

 はぁ~…まさか……聖樹が
 神無月の血に覚醒(めざ)めて直ぐに
 こういう展開(精神の行方不明)だと
 狙われたとしか思えんな 

 しかし、まさか………
 聖樹の波動が、こうもキレイに途絶えるとは
 今、聖樹の精神はこの世界に無いということ

 神無月の古い古い何時のモノかわからない記述に
 《力》が強すぎて、異界に渡った者がいると
 書いているモノがあった

 聖樹が、界を渡る《力》あるモノとは………

 神無月の血が、そこまで濃いはずがないのに…
 あの子は……聖樹は…とんでもない《力》を
 内包していた…会ってみて判った

 だから、危惧していたのだが………〕

 自分の腕に刺さる点滴を見詰め、聖は深い溜め息を吐いて言う。

 「聖子、見ての通り、病身の私は、残念ながら
 今思うように動けない
 私の代わりに、聖樹を探してくれないか?」

 聖樹を、兄としてひと目で気に入っていた聖子は、嬉しそうに頷く。

 「はい、お父様
 かならず、この聖子が聖樹お兄様を
 お父様のところに連れて来ますわ」

 聖子が席を立ち病室を出る、その背に聖は言う。

 「聖子…あいつらを連れて行け………
 武力行使してもかまわん

 神無月の血筋の者に手を出せばどうなるか
 思い知らせてやるがいい

 ついでだから、見せしめとして
 お前の好きなだけ破壊してかまわない
 その《力》でな

 聖子は、占術や神降ろしなどより
 物理的な攻撃が得意だろう
 好きなだけ行使してかまわない

 なに、後は、なんとしてでもやる
 あいつらは、神無月を手放せないのだから……」

 聖の言葉に頷き、聖子は常に待機している、聖の側近達に、その伝言と共に、連絡を入れるのだった。
 そしそて、ほんの数分で集まった者達に、聖子は聖の言葉と共に、聖樹を大至急探すように命令するのだった。






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