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0151★もしかして、朱螺の《魔石》?

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 そこに集(つど)った異形の男達は、狂乱の宴を中断し、いっせいに跪く。
 勿論、ロン・パルディーアに《精》を注いでいた者達も、自身を抜き出し、手早く見苦しくない程度の身繕いをして、跪いていた。

 そんな中で、ロン・パルディーアの腹の中の胎児の成長を確認し、異形の男達に命令していた美しい男・蛾宵(がよい)が進み出て挨拶する。

 「我等が盟主 邪闇(じゃみ)様
 貴方様の来訪を お待ちしておりました

 〈契約の子〉を宿した羽鱗族の女は
 無傷で捕縛いたしました

 捕らえてすぐに確認いたしましたが
 あの女は《魔力》無しの男1人しか
 連れておりませんでしたので………

 逃亡期間中《魔力》を含む
 《精》を得ていなかったようで………

 〈契約の子〉の成長が滞(どどこお)り
 発育状態があまり良くありません

 あれほど未熟では〈契約の子〉として役に立つか
 疑わしいほどでした

 本当に 大地を支配できる《帝王の資格》を
 有しているかもあやしいほど
 弱々しい存在と成り果てておりましたので

 当初の予定を早め 我が配下でも精鋭の者達に
 腹の子を育てる為の糧として
 《精》を注がせていました

 その甲斐あって あの女の腹に宿った
 〈契約の子〉は 与えられた《精》を吸収し

 その《魔力》と《生命力》を吸い取って
 停滞していた成長を始めました

 そこでです 邪闇(じゃみ)様へ
 《魔力》と《生命力》を奉げる良い機会として

 御側近としてお連れの方々にも
 《精》を注がせては如何でしょうか?」

 その言葉に、邪闇(じゃみ)と呼ばれた異形の男は、邪悪な嗤いを浮かべた。

 「クックククク そうだな
 《命》と《生命力》を増やした
 〈契約の子〉を喰らってやろう

 なぁー 鬼蛇(きだ)鬼蝎(きかつ)
 我が精鋭 夜襲(やしゅう)達と共に
 お前達の《精》をたんと注いでやれ

 喰らう我が〈契約の子〉に《精》を注いでも
 我の《力》にはならんからな

 クックククク 腹の子が充分に育ったら
 断ち割って抉り出してやろう」

 楽しそうにそう命令して言う邪闇(じゃみ)に、異形の男達に命令していた美しい男・蛾宵(がよい)が提案する。

 「邪闇(じゃみ)様 いかがでしょう
 腹から〈契約の子〉を抉り出したのち

 その躯に《魔石》を埋め込んでみては?
 完全に取り込めるやもしれませんよ」

 その提案に、邪闇(じゃみ)はニタリッと嗤う。

 「それは 面白そうだな
 確かに〈契約の子〉の躯に植えた《魔石》なら
 完全に取り込める可能性はあるな」

 「はい なんでしたら
 邪闇(じゃみ)様の
 特別に眼をかけている お気に入りから
 《魔石》を差し出させるのも良いかと……」

 言外に、謀反を起こしそうな者から、これを機会に奪っては如何か?と蛾宵(がよい)は言ったのだ。
 その蛾宵(がよい)に向かって、邪闇(じゃみ)が言う。

 「では そなたからも1つもらおうか?」

 言葉遊びだと理解(わか)っているので、蛾宵(がよい)はその懐(ふところ)から1つの《魔石》を取り出す。

 「では コレは如何でしょう?」

 「なんだ お前自身のは差し出さぬのか?
 で その《魔石》を出すということは
 何か 面白い逸話でもあるのか?」

 その《魔石》に、自分が興味を引くような、面白そうな話しでもあるのかと言う邪闇(じゃみ)に、蛾宵(がよい)は双眸を細めて嗤って言う。

 「はい この《魔石》は
 天魔族の者の《魔石》です」

 蛾宵(がよい)の言葉に、邪闇(じゃみ)も興味を引かれる。

 「ほぉ~…あの天魔族のか……」

 「ええ それも とても珍しいモノで
 あの水龍族の血筋を引く者の《魔石》なんですよ
 天魔族にあって 銀鱗持ちですらねぇ………」

 クツクツと楽しそうに嗤う2人の遣り取りを聞いていた蒼珠は、えっと思った。

 〔それって…もしかして…朱螺の《魔石》?
 朱螺の…あの言い方だと…自分以外の天魔族に
 銀鱗持ちは居ないみたいな言い方だったし

 朱螺のお祖母さんは生粋の天魔族で
 お祖父さんが、水龍族でって言ってたよな

 つーことは、朱螺の両親のどちらかが
 天魔族と水龍族のハーフってことだよな
 朱螺の両親のこと、聞いておけばよかったな

 ……じゃなくて…蛾宵(がよい)とか言う男が
 邪闇(じゃみ)とかいう男に差し出した《魔石》

 朱螺から抉り盗られたモノなら、欲しいっっ
 どうにかして……手に入れられないか?
 つっても…今は躯が無い精神だけの状態………

 この時ほど…精神体だけってことを
 口惜しいって思ったことはないな……くそっ…

 今は…《魔石》の行方が、判っただけでもマシと
 思うしかないのかっ………〕

 目の前に、朱螺から抉り盗られた《魔石》かも知れないモノが存在するのに、何も出来ない口惜しさに、蒼珠は唇を噛み締めた。






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