悪戯な運命の女神は、無慈悲な【運命の糸】を紡ぐ

0139★《淫獣》と呼ばれる生き物の用途５ 蒼珠と朱螺の攻防？

　朱螺の説明に、全身の毛が逆立つほどのおぞましさを感じた。
　それでも、蒼珠は《淫獣》も朱螺も嫌いにはなれなかった。

　なるほどね‥‥そういう用途の小動物なわけか
　だから、人族にも、魔族にも共通で    
  この小動物は《淫獣》って呼ばれてるのかよ

　でも、用途や意味や気遣いが理解（わか）っても
　絶対に、使われたくないぞ

　蒼珠は朱螺の優しい気持ちを理解しつつも、一応は頑張って自己主張の言葉を口にする。

　「しゅ‥‥朱螺‥‥俺‥その‥‥‥
　《淫獣》を使われるのイヤだっ‥‥‥
　やっぱり、最初は朱螺のモノでしてくれよ

　初めて受け入れるのが‥‥
　ソレ（《淫獣》）じゃあんまりだよ

　つらくても‥‥きつくても‥‥イイから
　朱螺ので、してくれよ

　なんでも、朱螺の言うこと聞くから‥‥
　屈辱も汚辱も耐えるから‥‥‥

　初めての前に‥‥‥その《淫獣》で
　肛門を拓かれるのはいやだっ
　お願いだから‥‥‥朱螺のでしてくれよっ」

　半泣きで訴える蒼珠に、朱螺は首を傾げる。

　『そんなに厭か？
　初めてなのに　この《淫獣》の助けなしに
　私と性交渉するのは　かなりきついぞ』

　その、心配から出ているだろう朱螺の言葉も、明宏によって散々精神を痛めつけられた蒼珠には、許容できなかった。
　この時の蒼珠は、自分を愛しいと言うなら、初めてだけは、おぞましい玩具（《淫獣》も含む）や薬品の類いを使っては欲しくなかったのだ。
　だから、本心から朱螺に訴えた。

　「だから、俺は、きつくてもイイんだってば
　最初に、その《淫獣》を使われるのは
　絶対に厭だっ

　あの男（明宏）に、肛門性交の為の訓練だって
　香木って呼ばれるモノで作られた‥‥‥
　男の性器を模した玩具で‥‥‥

　肛門をいじくり回され続けたことを‥‥
　思い出すから‥‥イヤだっ‥

　射精できなくなってからも‥‥‥
　絶頂感引き摺ったまま‥‥‥‥

　延々と‥‥それこそ‥‥何度も何度も
　イかされ続けたことがあるんだよっっ‥‥‥

　だから‥‥‥性交渉の前に‥‥‥
　《淫獣》を使って肛門を拓くなんて‥‥
　玩具にされているようで厭だっ

　許してくれよ‥‥つらくてもイイから‥‥
　初めては、朱螺のモノでしてくれよ‥‥‥」

　蒼珠の懇願に、朱螺は困ったような顔をして言う。

　『この《淫獣》の舌で　蒼珠の腸内を綺麗にして
　毛先から分泌する〈淫油液〉で
　窄まりと直腸を濡らされた状態の方が

　私を受け入れるのは楽だぞ
　ほんの少しだけ　我慢してくれ』

　どこまでも、平行線の会話に、蒼珠は絶望を感じながらも、更に言い募る。

　
　「だから‥‥苦しくても構わないンだよ‥俺は
　初めては、朱螺のモノで‥躯を拓かれたいって
　言ってるんだよ

　女の子みたいな拘（こだわ）りかもしれないけど
　もてあそばれているようで厭なんだ

　少しでも‥俺のことを‥好きだと思うなら‥‥
　情けをくれよ‥朱螺‥‥‥」

　男としてのプライドなどにかまっていられない蒼珠は、瞳に涙を溜めながらも、朱螺に再度哀願する。

　《淫獣》で、もてあそぶようなことをしてくれるな‥‥‥と。

　朱螺は、蒼珠の懇願に、少し嘆息して言う。

　『このまま蒼珠を抱いて
　そのあとに《淫獣》を使用するとなると‥‥‥‥

　まるっきり　他の魔族の者達がする
　《契約》の代価として性奴にした者と
　同じ扱いになってしまうんだが‥‥‥‥

　私は　蒼珠と性奴隷としての《契約》は
　したくない

　最初の《契約》が変更できなくても‥‥‥
　私は　蒼珠を恋人として扱いたいんだ』

　朱螺の苦悩と本心を聞いた蒼珠は、妙な甘さを含む苦さを感じつつ考える。

　あうぅぅ～‥‥‥他の魔族の《契約》と
　同じになるのが厭だって‥‥

　いや、朱螺の拘（こだわ）りも判るけど
　俺の方が切実なんだ‥‥折れてくれよ‥‥‥

　いくらその方が躯には楽だって言われたって
　その《淫獣》で、肛門を拓かれるのは厭だ

　情けをかけて欲しい‥‥‥
　終わったあとに使われてもイイから‥‥‥

　最初の肛門性交には
　絶対に、使われたくない

　蒼珠としても、朱螺の拘（こだわ）りを理解することは出来た。
　が、だからと言って《淫獣》を先触れとして、肛門に使われてから、性交渉を行うことは避けたかった。