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0138★《淫獣》と呼ばれる生き物の用途4

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 朱螺の説明に、蒼珠は何を言っているか、よく理解(わか)らないと言う顔で応える。

 「屈辱の性交渉を受けた象徴?
 別に‥恥ずかしいし‥怖いけど‥‥
 朱螺に‥‥代価を取れって言ったの俺だぜ」

 蒼珠の疑問顔に、まだ状況を完全には理解していないことを感じて、朱螺は言葉を噛み砕いて、蒼珠に理解(わか)りやすいように言う。

 『だから 恋愛関係で許容した以外は
 そういう風に使われるんだ

 本人の許容なしに 力尽くで性交渉をすれば
 強引に犯された分 精神も肉体も深く傷付く』

 朱螺の言葉に、蒼珠はただただ素直に頷く。

 「うん‥‥強要されて‥拒否も抵抗も出来ずに
 ただ受け入れるしかない状態は、すごくつらい
 思い出したくないくらいには‥‥‥‥」

 そう呟いた蒼珠は、自分を買ったと言って、好き勝手に自分を虐げる明宏を思い出して身震いする。

 虐げられた時に味わったおぞましさを思い出し、うなだれるように頷いた蒼珠に、朱螺は〈咒印(じゅいん)〉を施した《淫獣》を今一度 《檻珠(かんしゅ)》に放り込みながら、更に残酷な言葉を続ける。

 『その精神や肉体の傷口に
 更に 塩を塗り込めるように

 傷付いた場所を治療するという名目で
 この《淫獣》を秘窟に潜り込ませて

 二度と逆らう気が起きないように
 最後の自尊心まで粉々に砕くんだ

 双方(基本、飼い主と性奴隷)の体液で
 〈咒印(じゅいん)〉を施された《淫獣》は
 そのエサとして与えられた

 人族の体内に潜り込んで
 体内の傷痕を癒したあとに
 躯の一部に巻き付く性質を持っている』

 首筋や手首、足首などを撫でながらのセリフに、蒼珠はそれになんと答えて良いか判らず、ただ全身に施される髪先の愛撫に、躯を震わせているだけだった。
 蒼珠は、どこまでも甘くいたわる、優しい愛撫行為の心地よさに、うっとりしながら訊き返す。

 「‥はぁ~‥ぅんん‥‥手‥くび‥や‥‥‥っ‥
 あ‥し首に‥まき付くんだ‥‥‥」

 蒼珠の乱れた甘い息に、拒絶を感じない朱螺は、柔らかな声で答える。

 『そう この首筋や 手首や 足首に
 巻き付くんだ

 大概の《淫獣》は 何故か 誰から見ても
 判るような場所を定位置にすることが多い

 それが 誰かの所有物であるという
 性奴の烙印になる

 恋愛関係で 《淫獣》の全てを享受する者以外は
 それを身に着けさせられるということは
 それこそ 屈辱以外のなにものでもないだろう』

 朱螺の言葉に、優しく甘い愛撫に酔いながら、蒼珠は首を傾げて問い掛ける。

 「?‥‥ぅん‥‥それじゃ‥‥はぁ~‥ぁぁ‥‥
 朱螺は‥‥俺を‥1人の対等な‥‥ぅんぅぅ‥
 恋愛関係の相手としてじゃなく‥っ‥あ‥‥
 性奴として‥‥所有したいのか?」

 朱螺の説明の意図が理解(わからない蒼珠は、シュンとうなだれる。
 そんな蒼珠に、朱螺はクスクスと微笑(わら)って、蒼珠の髪を優しく撫でて言う。

 『いや 私は蒼珠が愛しい
 確かに 支配も楽しいかもしれない
 それで味わえる《情波》も たまらないだろう

 だが 私は それ以上のモノを既に知っている
 蒼珠が 私の全てを許容して抱きついてくれる
 その甘美な美酒に比べれば‥‥‥‥
 支配し 隷属させる行為など つまらないモノ

 私が 蒼珠との性交渉に《淫獣》を用いるのは
 なにも お前の自尊心を粉々に砕く為じゃない

 最初に言っただろう 私は蒼珠に愛されたいと

 だが 蒼珠は お前を買ったという男に
 肛門を 性交渉の訓練の一環として
 悪戯されたことがあるだけで‥‥‥‥

 男のモノ本体を銜え込んだことがないと言う

 それは 蒼珠の躯が この柔らく綻んだ蕾みが
 男のモノを受け入れることを 知らない
 と言うことだからな

 ならば お前の躯が私のモノを受け入れるには
 かなりの苦痛を伴うだろう

 それゆえに《淫獣》が持つ特性を重規して
 用意したんだ

 この《淫獣》は 人族の腸内に潜り込む時
 その最初の入り口である硬く引き締まった

 肛門の窄まりを 容易く潜り抜ける為に
 全身の皮毛の先端から〈淫油液〉と呼ばれる

 ヌルヌルとした特殊な油分を含んだ分泌液を
 大量に出すのだ

 どんなに肛門に力を込めて侵入を強固に拒もうと
 この〈淫油液〉を塗り込めば

 蕾みを構成する筋肉の輪を傷付けることなく
 ツルリと 硬い窄まりをあっさりと通過して
 直腸内に容易く潜り込むことが出来るんだ

 その上で 《淫獣》が出す分泌液は
 傷痕を治癒する効果も含んでいるのだ

 その〈淫油液〉の極上のヌメリが潤滑液となり
 蒼珠と性交渉する時の助けになる

 そして 多少の傷痕は分泌液と《淫獣》の舌が
 癒してくれるんだ

 コレ(《淫獣》)を使うのは
 お前を傷付けない為だ

 蒼珠 理解(わか)ってくれ
 私は お前を傷付けたくないんだ』





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