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0119★朱螺の独り言

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 朱螺は、自分の傍らで健やかな眠りにつく愛しい蒼珠を見詰めながら、これまで乗り越えて来た数々の苦難と、過酷な旅路に思いを馳せる。

 『しばらく この空白地帯で休養するのもいいだろう
 しばし 骨休めも兼ねて 英気を養うとしようか‥‥

 それに 次の空白地帯を探す前に もう少し 蒼珠の
 躯に《精》を注いで 私の《魔力》を馴染ませたいし

 《魔力》に対する 耐久力もあげておきたいし‥‥‥
 いざという時の為の 簡単な呪文の1つや2つは
 教えておきたい‥‥

 攻撃に 防御に 治癒も教えておくかな?
 そうすれば もう少し旅も楽になるだろう‥‥‥

 少し時間は掛かるだろうが 蒼珠の躯に私の《魔力》を
 たっぷりと注いで 馴染ませて 操る術を教える必要が
 あるからな‥‥‥‥

 フッ‥‥‥やることは いっぱいあるが 今は 愛しい
 蒼珠の寝顔を酒の肴に 少し飲むか‥‥‥‥』

 そう呟きながら、朱螺はバサリッと今まで纏っていた衣装をすべてを脱ぎ捨てた。

 そして、躯に一枚布のようなモノをバサッと簡単に纏い、全裸で眠る蒼珠の隣りに音もなく滑り込んで、暖かい蒼珠の躯を横抱きに膝の上に抱き込む。

 抱き込んだ蒼珠が、膝の間で居心地の良い場所を求めてモゾモゾと動き廻る。

 ようやく気に入った場所が見つかったのか、蒼珠は、ぴたりと動きを止めた。

 居心地の良い場所を見つけた蒼珠は、自分の躯の上に這うように降りている朱螺の髪をひと房握り、再び深い眠りの淵に降り立つ。

 起きている時より格段に幼い表情で、口端に笑みを浮かべたまま‥‥‥‥。

 自分の真紅の髪を握る蒼珠に、朱螺はしょうのないヤツだという表情で、その前髪を梳きあげながら、地の妖精族が造っただろう〈妖酒〉をグラスに注ぐ。

 朱螺が現在口にしている濃い緑色の〈妖酒〉は、偶然手に入れた物だった。

 この黄封砂漠に入るかなり前、別の砂漠を渡っている時に、妖精狩りを行っている一団から庇ってやった地の妖精族の少女から、餞別にもらったモノだった。

 妖精族は、人間族にも、多くの魔族にも、好まれる姿の者が多いので、需要が幾らでもある故に、色々な種族から狙われているのだ。

 まして、妖精族は使い方によっては貴重な薬や、呪具の元にもなるのだ。

 一攫千金の種族故に、何時でも色々な種族のハンターに狙われているのだ。

 黒褐色の肌に緑色の髪を持った、いかにも大地の妖精と判る姿の少女は、偶然通り掛かった朱螺に、ハンターに追われている自分を逃がしてくれと、泣いて縋ったのだ。

 あまり興味のなかった朱螺も、目的の成就の為の縁起担ぎも良いかということで、追われている地の妖精族の少女をゾルディに乗せて、その場から逃がしてやったのだ。

 望んだ場所で、ゾルディから降ろしてやると、その地の妖精族の少女は大地に手を着けて何かを唱え、朱螺に壷に入った〈妖酒〉をくれたのだ。

 妖精族にさして興味のなかった朱螺は、少女が差し出した〈妖酒〉を有り難く受け取り、その地の妖精族の少女とあっさりと別れたのだ。

 地の妖精族が造る珍しい〈妖酒〉を味わいながら、朱螺はクスクスと微笑(わら)って呟く。

 『縁起担ぎが効いたかな?
 ‥‥途中 少しばかりきつかったが‥‥‥‥
 無事 ここまでたどり着いた‥‥

 運の良いことに 最大の危険生物であるサンドワームは
 人族の蒼珠を 偶然手に入れたことで 退けるどころか

 結晶化することが出来たからな
 同時に《生命石》と《魂魄石》を 錬成できたのは
 幸いだったな‥‥‥‥

 だが《地蛇族》は 外界の者を ことのほか嫌うと
 聞くから‥人族の蒼珠は‥連れて行くのは不味いか?

 ‥‥だが 今更 手放せない この心地良さは
 捨て難いものがある‥‥‥

 中途半端な姿の私自身を そのまま認めてくれる
 相手など そうはいない‥‥‥‥

 ならば 私の《精》に含まれる《魔力》を 蒼珠の
 躯に馴染ませればイイだけだ

 そして 蒼珠が 私に隷属していることを 証明する
 しかないだろうな

 それでも《地蛇族》の村に入ることを拒否されたら‥‥
 諦めて同じような 生体武器を 躯に移植する

 特殊技術を持った 他の種族を探すしかないな‥‥‥
 そういう種族が他にいるとは聞いたことはないが‥‥‥

 他の種族と一切交流しない 未確認の種族も
 まだまだいるはずだ‥‥‥

 もし 拒絶されたら 新たな種族を探せば良いさ‥‥

 今更 私の銀鱗姿を美しいと言って こだわり無く
 受け入れてくれる蒼珠を 手放せないのだから‥‥』

 フッと言葉を切ってから、朱螺はあることを思い出して呟く。

 『‥‥そうなると やはり‥ あの人族の老廃物を
 殊のほか好む小動物 《淫獣》を手に入れなければ
 ならないな

 性交渉の時には《淫獣》を使用した方が 私を
 受け入れる立場の 蒼珠の負担も少ないだろう

 ‥‥しかし《淫獣》は どこで手に入るのだ?

 よく市場などで 人族と共と一緒に売られて
 いるのを見かけたが?

 この辺で手に入るだろうか?

 とにかく 明日にでも 野生の《淫獣》を
 見つけなければな‥

 私は 蒼珠の躯を抱きたい‥‥‥

 この私のモノで 蒼珠の躯を味わいたい‥‥‥
 何時まで 私はこの欲望に耐えられるかな?』

 妖精族が造る酒独特の風味がある〈妖酒〉を、舌の上でゆったりと転がすように味わいながら、朱螺は先刻少しばかり味わった蒼珠の躯の感触を反芻する。





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