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0112★蒼珠錯乱

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 朱螺は、蒼珠の放つ濃厚な《情波》を味わいながら、髪先を蒼珠の肛門へ潜り込ませ、窄まる為にある括約筋の輪を広けて《精》を注ぐ入り口の大きさを確保する。

 「‥ぅん‥ぁあ‥ひぃ‥なに? 朱螺? なに?」

 脅える蒼珠に、朱螺が優しい声で囁く。

 『大丈夫だ 蒼珠 ‥お前の意思を無視して‥‥‥
 侵入したりしない‥‥‥お前を傷付けない為と‥‥‥

 出来るだけ 躯の奥深くに《精》を入れる為に
 髪先で綻んだ肛門を広げたまま固定しただけだ‥‥

 ほら‥そろそろ‥《精》を出すぞ‥‥私を受け入れよ‥‥』

 朱螺がそう言い放った瞬間、蒼珠の窄まりは一際強く朱螺の怒張した男根に圧し拡げられ、直腸に濃厚な《精》を注がれた。

 蒼珠は朱螺にしがみつき、男としての性を否定される嫌悪感に嘆きながらも、朱螺の性行為と《精》を心から受け入れた‥‥‥はずだった。

 そして、腹腔に撒き散らされた朱螺の熱い《精》を直腸壁に感じた瞬間、蒼珠はあまりの衝撃に絶叫を上げた。

 「‥ヴっ‥‥ぎゃぁあぁぁ‥‥‥うわぁぁあ‥‥‥
 あついっ‥熱いっ‥腹ン中が灼けるっっ‥‥助けて‥

 しゆらぁぁっ‥‥助けて‥‥腹ン中が灼け熔けるぅっ
 うわぁぁあぁぁあ‥‥‥ぃやぁぁぁぁぁぁ‥‥‥‥」

 予測していなかったいえば嘘になるが、そこまで過剰に反応するとは思っていなかった。
 朱螺は、蒼珠の全身を髪で絡め捕り、無意識の自殺を封じる。

 時に生き物の大半は、受けた苦痛から逃れる為に、衝動的に自殺へと向かうことがあるからだ。

 激痛に悶え、苦痛を叫んだあと、あまりの衝撃に耐えられず、呼吸のしかたすら忘れ果ててしまった蒼珠に、朱螺は名の呪縛を使って言う。

 『蒼珠 蒼珠 聖樹っ 私の声が判るか?
 判るならば 息を吸うんだ そうだ 聖樹
 そしたら‥ゆっくりと‥吐くんだ‥‥‥‥』

 朱螺の《精》を腹腔に受けた衝撃で硬直していた聖樹が、名の呪縛に従って、息を吸い、ゆっくりと吐き出すが、あまりの苦しさに戦慄く。

 まるで、煌々と灼熱色に熔かしたドロドロの鉛や、地底から吹き上げたばかりの熔けた溶岩を、直接腹腔の中に流し込まれたような炎熱の苦痛に、蒼珠は身悶えて啼く。

 異質な異物が細胞の1つ1つにジワリと侵食し、細胞の奥へと割り込んで行く。

 まるで、青々とした瑞々しい草原を、灼熱の業火で焼き払い、すべてを灰燼と化すかのように、蒼珠の躯を内側から怒涛のように侵食する。



 《精》の‥‥いや、その《精》に含まれた、朱螺の膨大で濃厚な《魔力》が、聖樹の躯へとじわじわと浸透していく。
 初めて味わう《魔力》という名の異質な衝撃の前に、蒼珠の精神は風前の灯火と化していた。

 蒼珠を構成する躯を、根本から変換するように、朱螺の《精》に含まれていた《魔力》が、細胞の隅々まで染み渡る。

 腹腔に直接注がれた《精》が含む、濃厚な《魔力》が与える侵食に耐えられず、蒼珠は朱螺に啼きながら、ワラをも掴む思いでしがみつく。

 『良い子だ 聖樹 そのまま 私の《精》を‥‥
 《魔力》を受け入れろ 私の姿を受け入れたように

 ‥‥抵抗すれば‥ 抵抗しただけ つらくなる‥‥
 今ひと時 私に抱かれる者として‥‥ 私の行為を
          
  ‥‥私の《魔力》を 受け入れよ 聖樹 いや‥‥‥ 
 私が朱螺の名と対を成す 蒼珠よ 私の《魔力》を

 その躯に受け入れよ‥‥‥さすれば 苦痛は去るぞ‥‥
 心を開いて 私の《魔力》を受け取ってくれ 蒼珠』

 悲鳴を上げながら、それでも蒼珠は朱螺に縋り付く。
 そんな蒼珠に、朱螺は少しでも《魔力》の浸透に戦慄く躯と精神の苦しみを和らけようと、全身に濃厚な愛撫を施しながら囁く。

 たとえ、その言葉や思いを認識されなくても構わないと思っている朱螺は、睦言のように、蒼珠の耳孔に甘やかな声音で囁き続ける。

 だが、生半可な愛撫では、今の《精》に含まれていた《魔力》の侵食に身悶える蒼珠を懐柔することは出来なかった。
 地獄の業火でも飲み込んだような、強烈な激痛に蒼珠は、朱螺の名を呼びながら啼き続ける。

 「た‥すけてぇ‥‥‥腹ン中が‥灼け爛れちまうっ‥‥‥
 熱い‥熱いよぉ‥しゅらぁ‥‥腹ン中が‥痛いよぉ‥‥‥

 朱螺ぁ‥‥‥しゅらぁ‥苦しいよぉ‥‥‥ゆるしてぇ‥‥‥
 熔けちまうよぉ‥‥‥もう‥いやだぁぁ‥‥‥助けて‥朱螺っ」

 煮え滾る鉛と同じような焼け爛れるような苦痛を伴なう《精》を、腹腔に突っ込まれた状態の蒼珠は、双眸を見開き、その瞳から滂沱の涙を零れ落とす。

 《魔力》の浸透に、その意思は、儚く熔け崩れる寸前で、どうにかこうにか、やっとの思いで、そこに留まっているような状態だった。
 そう、わずかな衝撃で、2度と戻らない深遠の底にある虚無へと堕ちるような、ギリギリのところに蒼珠の精神はいた。

 生存本能に導かれた蒼珠は、自分を救ってくれると認識している朱螺に、甘え縋る。
 朱螺は、自分に甘えるように、苦痛を訴える蒼珠の躯に、とにかく熱心に愛撫を施していた。
 少しでも、自分の《魔力》と馴染むように、錯乱寸前の蒼珠に、さとすように囁く。

 『蒼珠 腹の中が 私の《精》 いや 《魔力》で
 灼け熔けるように感じるのは その激しい苦痛は‥‥‥

 蒼珠 蒼珠 お前の無意識の抵抗が生み出す痛みだ 
 私の注いだ《魔力》に抵抗せず 身を任せるんだ
 大丈夫だ その《力》に浸り 素直に心を解放しろ

 お前を侵食するのは 私の《精》に含まれる《魔力》だ
 抵抗の意思を捨てて 私の《魔力》を受け入れるんだ‥‥

 私の異形の姿を受け入れた時のように 綺麗だと言った
 あの時の‥‥‥ 心から あの姿を好んでくれたように‥‥‥
 お前の無意識の拒絶が その苦痛を生んでいるんだ‥‥‥

 私の言葉に従い 私の《魔力》を受け入れるんだ 蒼珠
 慣れれば 気持ち良くなれる 慣れるまでの辛抱だ
 そうすれば、躯が蕩けるような快楽を味わえる

 少しでも好いてくれるなら 私の《魔力》を受け入れろ‥‥
 拒否するな 私の《魔力》は 蒼珠を傷付けたりしない‥‥

 私を 心から受け入れてくれ お前を 愛してる‥‥
 私の《魔力》を その身に 受け入れてくれ 蒼珠』

 蒼珠が、躯の最奥、華芯に放った《魔力》を受け入れるまで、朱螺は根気よく愛撫を施し続け、優しい声音で甘言を囁く。
 が、とうの蒼珠は、双眸を見開き、朱螺の放った《精》に含まれる重く濃密な《魔力》に耐えられず、狂気の淵へと陥り、堕ちはじめる。






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