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0099★蒼珠の憂鬱

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 本音を口にしたことで、自分が朱螺に対して淡い恋情らしきモノを持ち始めたことを自覚した蒼珠は、つい、先刻の行為の感想を唇から零れ落とす。

 「手や口以上に‥‥濃厚な愛撫を‥‥まさか‥
 あの真紅の長い髪を使って、全身を愛撫して
 来るなんて思わなかったからなぁ‥‥‥

 俺が知っている性交渉と、朱螺がする性交渉には
 ギャップがあるんだよなぁ~‥‥‥

 だから、次ぎに何をされるか予測出来ないし‥‥
 かりに予測出来ても‥‥抵抗なんて無理だし‥‥」

 朱螺に与えられた快楽の絶頂を思い出し、蒼珠は躯をブルッと震わせる。

 でも‥‥まさか‥‥にょ‥尿道に、あんな‥‥‥
 ‥‥って‥‥そう言えば、どうやって?

 実際に、何をされたか‥全然理解(わか)らないけど
 そう、確かな事実はひとつ‥何かが‥そう何か‥‥‥

 ヌルリッとしてるのに‥‥どこかザラついたモノが‥
 ‥尿道の‥奥にまで‥ズルズルと侵入して来て‥‥‥
 うっ‥‥あんな射精感‥‥初めてだ‥‥‥

 蒼珠は、その時の強烈な快楽を思い出して、躯をブルッと震わせてから、ハッとして首を振る。

 でも、あの明宏って男がした行為とは、全然違う‥‥
 確かに‥思いもよらない場所に侵入される未知の感触

 ‥‥尿道を‥‥何か弾力ある細長いモノで‥‥
 奥まで割り妬かれるような嫌悪感はあったけど
 ‥痛みじたいは‥‥‥苦痛はなかった‥‥‥‥

 朱螺は、ただ、俺を‥正確には、俺の躯に‥‥‥
 快楽を与えて喜ばせようとしていただけで‥‥‥

 あの明宏って男みたいに、俺に羞恥心や屈辱感を
 舐めさせるような‥‥非道なことはしなかった‥‥‥
 ちょっと‥びっくりしたし‥恥ずかしかったけど‥」

 苦痛は、なかった‥‥躯を拓かれる屈辱感も‥‥‥‥
 朱螺に、あんなことされたのに‥‥‥思ったよりも‥
 ‥あまり羞恥心とかも感じなかったな‥‥‥‥

 ‥‥それでも‥流石に、全身が総毛だったな‥‥‥
 尿道の中で、何かがズルズルと蠕動して‥‥‥

 深くまで潜り込んで来て‥‥‥背筋に悪寒が
 這い上がるほど、目茶苦茶気持ち悪いのに‥‥   
 
 股間に、痺れるような甘い射精感がグワッと‥‥‥
 ‥広がって‥‥‥俺‥朱螺に‥許してって‥‥‥
 何度も言ったのに‥‥‥朱螺ってば‥‥‥

 そこまで、回想してしまった蒼珠は、朱螺に執拗に胸をいじりまわされたことを思い出し、左胸に無意識の視線を落とす。
 蒼珠は、朱螺の愛撫を受けた乳首を見詰めて視線を伏せる。

 この〈入れ墨〉を彫られた乳首を、指で摘まんで
 指の腹で、押し潰すようにしながらグリグリするし

 ココは‥‥〈入れ墨〉を彫られたセイで‥‥‥
 神経が、剥き出しになってるみたいだ‥‥‥‥

 朱螺にいじられたら‥‥耐えられなかった‥‥‥
 声を出したくないのに‥‥‥朱螺にいじられて‥‥
 何度も‥何度も‥朱螺に啼いて‥縋った‥‥‥

 嫌悪と紙一重の、未知の快楽を味わってしまった蒼珠は、無意識に首を振る。
 今一度、朱螺に愛撫の指先で摘み取られた乳首を見て、蒼珠は蒼醒める。

 「‥‥えっ‥‥嘘だろぉっ‥‥朱螺と遭遇した時‥
 ココは‥‥この胸の〈入れ墨〉は、墨彫りだけだった‥‥
 ‥‥はずだろ‥‥‥どうなっているんだ?」

 叫ぶように言う蒼珠の乳首には、墨で彫られた乳首や乳輪を彩るように、一際色鮮やかな黄金色のシべが彫り込まれていたのだ。

 そして気付く‥‥‥乳首や乳輪の黄金色のシべ(=華芯)の他にも、花弁が青みを帯びた白い色で彫られていることに‥‥‥‥。

 墨一色で、彫られていたはずの〈入れ墨〉に‥‥‥
 色が付いたこと
 朱螺に、気付かれてるかもしれない‥‥‥‥

 それとも、この〈入れ墨〉の色彩は、今現れたのか?
 どちらにしても、言い逃れようのない現象だ‥‥‥

 どういう風に、朱螺に説明したら良いんだろう‥‥‥
 いや、それだけじゃない‥‥‥
 根本的なことを忘れるな、蒼珠

 この躯に、彫られた〈入れ墨〉の変化で判る
 俺の躯は、まだあの男の元に在るんだ

 この躯は、俺が本来帰属している、生まれ育った
 世界に繋がれているということだ

 どういう条件かは理解(わか)らないけど‥‥‥‥
 精神だけ堕ちたりするのも、きっとその影響だろう

 だけど、今ココに在る躯と、帰属する世界に在る躯
 どっちが、俺の躯なんだろう?

 それに、俺自身は見れないけど、背中一面に彫られた
 〈入れ墨〉にも、鮮やかな彩りが入っているのかなぁ?
 ああ‥‥‥マジで‥どうしよう‥‥‥クッ‥‥‥‥

 陰鬱(いんうつ)になりそうな精神も、無意識に触れた乳首から走る鋭い刺激に邪魔される。

 蒼珠は、自分の中で消化しきれない疑問と感覚に振り回される。
 同時に、いまだに躯の奥で燻(くす)ぶる熱と、思考の中で渦巻く疑問を追い払うかのように、頭を軽く振る。

 頭を振って、陰鬱(いんうつ)さと体内に燻(くす)ぶる熱を振り払った蒼珠は、思い切って立ち上がる。

 「俺は、全裸なんだから、考えても始まらないな‥‥‥
 この〈入れ墨〉を隠す方法なんてないんだから‥‥‥‥

 〈入れ墨〉の色について、朱螺に何か言われたら‥‥‥‥
 そん時に考えれば良いさ‥‥‥それよりも、水浴び水浴び」

 気分を変える為に、蒼珠はグイッと思いっきり伸びをした。
 が、薄い水色の《結界》は、蒼珠の行動を封じるモノではなく、ただ護る為にだけに張られているらしく、行動を一切邪魔しなかった。

 「‥ん~‥とぉ‥‥」

 蒼珠は、湿った砂地に残る足跡で、朱螺が先に湖の中に入ったことを理解する。

 「起こしてくれれば良いのに‥まぁ‥いっかぁ~
 潜って追いかければイイだけだし‥‥‥」

 蒼珠は、ためらうことなく、湖へと足を踏み出した。




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