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0084★朱螺の気遣いと蒼珠の打算?
しおりを挟む蒼珠は、嬉々として、朱螺の腕に無意識に縋りながら言う。
「うん‥‥水浴びしたい‥ずっと裸のままだし‥‥‥
汗くらい流したい‥‥‥砂塵もけっこう被ったしさ‥‥‥
朱螺は、水浴びとかしないの? もしかして 水嫌い?」
喜々として、どっちに行けば湖が在るの?と聞きながら、蒼珠は更に朱螺に問う。
〔さて どこまで 私のことを 話したら良いのか?
蒼珠には あまり嘘は言いたくない だが 私の本来の姿は
他人に好まれるような姿では無い〕
朱螺は、切ない思いを押し殺し、穏やかな口調で蒼珠の質問に答える。
『いや 私も水浴びはするぞ
私は純粋な 天魔族ではないのでな
母か水龍族の血筋の者だったので 水は好きだな
人族は あまり水浴びしないと聞いていたので
ちょっとびっくりしただけだ』
朱螺の言葉に、蒼珠は無意識に眉をひそめる。
ふ~ん、こっちの人族って、あまり水浴びしないんだ
うわぁ~‥やだなぁ‥‥かなり不潔かも‥‥‥‥
マジで、世界や種族違うって感じるなぁ‥‥俺‥‥‥
もしも、あっちの世界に帰れなくて‥‥‥‥
このままこっちで暮らすことになったら‥‥‥
こっちの人族に紛れて生活するの大変そうだな
「朱螺‥‥俺は、違う世界から来たんだぜ
俺達は、水が好きな種族なんだ
朝シャン‥‥え~と‥‥シャワー‥‥‥‥
温水で、細かく水が出るヤツな‥‥‥
それで、毎朝・毎晩入ってるんだせ
時間があれば、昼にだって入るし‥‥‥
第一、俺が生まれ育った国は、
すべて海に囲まれている島国で‥‥‥‥
海洋民族って呼ばれているくらいだぜ」
蒼珠の答えに、朱螺は肩を竦める。
「そうだったな 蒼珠は人族と言っても
まるっきり違う場所から来た者だったな
つい失念してしまう
それじゃ 湖に案内してやろう
こっちだ‥‥おいで‥‥‥‥‥』
朱螺に、おいでと手招きされた蒼珠は、なにを疑うこともなく、現在最も一番安全な場所である朱螺の腕に縋りつきなおす。
砂漠の中のオアシスに、危険は付きモノ。
水を求めて集まる草食獣と、それを狙う肉食獣は、どの世界でもきっと共通だろう。
辺りに、どのようなモノが潜んでいるか判らない、今。
現在の蒼珠は、この異世界で生きる為の基礎的な知識のひとつもなく、自らの身を守るための武器すら持っていなかった。
身を護る術すら待たない、無力な蒼珠が出来ることと言ったら‥‥‥。
《契約》と言う名の下に‥‥‥自分を護ってくれる、朱螺に縋り付くことぐらいであった。
「こうやって、右腕に抱き着くのは不味い?
行動に支障でる? 右腕より、左腕の方が良い?
それとも、腕に縋り付くのは不味い?
やっぱり‥とっさの時に、行動に支障が出るかな?
あっ‥‥朱螺って、どっちが利き腕なんだ?」
蒼珠からの問いに、朱螺はクスクスと微笑(わら)って、蒼珠を自分の方に抱き寄せ、ひょいっと抱き上げる。
『そんな心配をする必要はない
ここは 制約の空白地帯だからな
自由に《魔力》が使える
それと 私は両手利きだから‥‥‥‥
どちらに縋られても支障はないぞ
クスクス‥‥だが やはり コレの方が良い
お前を抱き締めていると 一番実感出来るからな
しかし‥‥流石に 血を吸い過ぎたセイで
まだまだ顔色が悪いな
私も もう少し加減を覚えないとな‥‥
もっとも そうそうお前の血を啜るような
窮地に 陥るとは思いたくはないがな‥‥‥
吸血は お前の負担になる‥‥‥
私は ひどくお前を気に入ってる‥‥
たぶん 恋愛とは違うだろうけど‥‥
蒼珠を大事にしたいと思うぞ』
朱螺に抱き上げられた蒼珠は、その首に両腕を回して、躯を安定させる為に縋り付きながら、そのいたわりある言葉と行動に、つい比べてしまう。
はぁぁぁ~‥‥‥‥朱螺みたいに、こうやって
あの男も、俺をこうやっていたわってくれるならば
少しは‥情らしきモノを‥持てるかもしれないけど‥‥‥
あれじゃ‥‥‥情も‥なにもあったモンじゃねぇもんなぁ‥‥
俺のこと人間扱いしてくれないし‥‥‥‥
マジで、少しは朱螺の気遣いを見習って欲しもんだぜ‥‥‥
あ~あ‥いっそ、このまま‥ずっとここで朱螺と旅したいなぁ
母さんのことは心配だけど‥‥俺なんて、居ないほうが‥‥‥
このまま、ここで生活するのも悪くないよなぁ‥‥‥‥
腕の中で急におとなしくなってしまった蒼珠に、朱螺は問いかける。
『どうした? 蒼珠 やはりつらいか?
そうそう失った血液は戻らないからな‥‥‥
やはり 今しばらくは
私と情を交わすことは 出来なさそうだな‥‥‥
少し残念だが しかたがないか‥‥‥‥』
心配そうに言う朱螺に、蒼珠はちょっと打算が働いてしまう。
あぅ~‥‥朱螺が‥俺の躯を心配してくれてるの
すっごく理解(わか)るし‥‥
優しくしてくれるのは嬉しい‥けど‥‥けどぉ‥‥‥
やっぱり‥肛門を使ってする、セックスは怖い‥‥
朱螺と《契約》‥‥でも、あと少しだけイイよね‥‥
アナルセックスを先延ばしにしても‥‥‥‥
心配そうな朱螺に、蒼珠は内心を隠し、大丈夫だとでも言うように縋りなおす。
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