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0081★蒼珠が滑り落ちた先は‥‥‥
しおりを挟む再び、異世界に堕ちた蒼珠は、自分がロン・パルディーアという人物と、意識が重なっていることに気付いた。
その一番の理由は、状況を認識し、肌で感じることは出来るけど、蒼珠の自由意志では躯が自由に動かないことであった。
だぁぁぁぁ‥‥‥やっぱり‥‥こっちに堕ちたのか‥‥‥‥
いや‥あの男に淫虐されている現世界よりはイイけどさ‥‥はぁ~
じゃなくて、もう、あの紅い砂塵の舞う砂漠は抜けたのかなぁ?
意識の変調が起こる前に、抜けれてラッキーかも‥‥‥‥
流石に、赤一色はちょっと‥‥黄色い砂漠もなんだけど‥‥‥
延々と赤い砂漠が続くのは、焦燥感ってヤツをあおられるよなぁ
お陰で、何かとぉ~っても追いつめられているようで厭だ
蒼珠の杞憂は取り越し苦労だった。
とりあえず、鮮血のような赤い砂塵の舞う砂漠は抜け出してしまったらしい。
その代わりに広がる眼前の景色は、まるで中国大陸の奥地の寒村のようであった。
そして、人間族?だか、人族?だかはよ判よくらないが、見た目的には、人間らしい物達が武器を手に手に、2人をを追っていた。
えっ‥‥あんなモンに追われてるのぉ‥‥‥
この2人ってば、一応は、魔族なんだよなぁ‥‥‥
ラオスは《魔力》があまり使えないって言ってたけど
彼女は、どうなのかなぁ? ‥‥はて? うぅ~ん‥‥
やっぱり妊娠してるから《魔力》使えないのかなぁ?
‥‥人間に追われてるなんて‥‥‥あっ‥‥‥
もしかして、ここって‥‥‥‥
朱螺が説明してくれた〈封土〉なのかも‥‥‥
それだったら、使えなくても当然か‥‥‥
って、やっぱりアレは人間なわけだ‥‥‥
亜人みたいな姿のもいるし‥‥‥
手に剣や槍、斧等の武器を待ち、2人を追い掛ける異形の男達の集団に、蒼珠は戦(おのの)く。
追い掛ける人々が何を言っているか認識出来なかったが、そこが人間の住む領域であり、身に秘めた《魔力》が重荷になる場所なのは認識出来た。
『コノママ コノ村ヲ走り抜ケマス
コノ村ヲ南ニ抜ケシバ 南陽マデハ アト少シデス
南陽カラ ロウヤノ洞窟マデハ ソウ遠クナイハズデス
アト少シノ辛抱デス』
ロン・パルディーアを腕に、人間の村を走り抜けるラオスは、最短距離でロウヤの洞窟へと向かっていた。
ラオスは一瞬だけ、背後の上空を睨み、唇を噛み締める。
それは、額の《魔石》を抉られた代わりに得た、超感覚がラオスに迫り来る危険を知らせていたからであった。
人間に追われても一切相手にせず、ラオスは、ただひたすらロウヤの洞窟へと向かう。
ロン・パルディーアは、ラオスの呟きを聞き逃したが、傍観者でしかない蒼珠は、その呟きを聞いてしまった。
えっとぉぉ‥‥今の‥間に合うか? ‥ってなに?
なにが間に合うかなんだ?
‥‥‥すっごく厭な感じがするんだけど‥‥‥
ロウヤの洞窟にたどり着けるかってことなのかなぁ?
なんか、追われているみたいだし‥‥‥‥
この2人の敵って、どんなのかな?
そう蒼珠が内心で首を傾けていると、ラオス達を、武器を手に追い掛けていた人間達が、ラクダのような生き物を引き出し、それに乗ってあとを追い掛けて来る。
そんな人間達の姿に、蒼珠は怖気を感じた。
追いつかれたりしないよなぁ‥‥‥‥
ラオスの脚の方が早いし‥‥‥じゃなくて‥‥‥
あの人間達、なんで追い掛けて来るんだ?
村の側を通っただけなのに?
もしかして、マジで、朱螺が言ったように
魔族の血肉を貧り食って《魔力》を手に入れる為?
捕まえて食べる為に、追いかけて来てるのかなぁ?
もしそうだったら‥‥‥マジで厭だなぁ‥‥‥‥
ロン・パルディーアを腕に、ひたすら走るラオスの前の砂が、突然大きく割れた。
ズザザザァァァァ
その次の瞬間、割れたそこから、ズワッとサンドワームが姿を現す。
途端に、武器を手に背後から追いかけて来ていた人間達が、まるでクモの子を散らすかのように、村へと一目散に、逃け帰る。
また‥サンドワームかよ‥‥砂漠だからなぁ‥‥‥
でも、朱螺と一緒に見たヤツよりずっと小さいし‥‥‥
なにより、一匹だけだもん‥‥ラオスの腕なら一撃だろうな‥‥
蒼珠が楽観した通り、ラオスは大剣を抜き放ち、片手で軽々と分断する。
切り裂いた瞬間に飛び散った体液を浴びないように避けながら、ラオスは後方を振り返りもせずに走り続ける。
が、ラオスの腕の中にいたロン・パルディーアと、その身の内に堕ちた蒼珠は、一撃のもとに分断されたサンドワームの姿を無意識に確認していた。
その視線の先では、ラオスの大剣に分断されたサンドワームが、モゾモゾと蠢き、復活して行くさまをとらえていた。
えっ‥‥サンドワームって‥あんな風に復活するの?
分断された分だけ‥‥数が増えてるし‥‥‥‥
マジで、サンドワームってヤバイ生き物なんだ‥‥
そう言えば、襲われたの撃退した時
朱螺も俺がいるから、なんとかなったって言ってたっけ‥‥‥
そう言えば、朱螺はどうしてるだろう‥‥‥
俺って‥‥俺の躯は‥‥朱螺の側に居るのかなぁ‥‥‥‥
それとも、現実の世界で、相変わらず、あの男の下にあって
いまも、もてあそばれているのかなぁ‥‥‥‥
疑問が脳裏を掠めるのとほぼ同時に、蒼珠は自分の意識が、再び霞みはじめたことに気づく。
なにかに‥【運命】と言う名の激流に押し流され、強大な《力》が渦巻く滝壺へと滑り堕ちる。
そして【運命】という名の奈落の暗闇へと、再び飲み込まれるのを感じた。
意識が飲まれる瞬間、蒼珠は心底祈った。
再び、朱螺の下に、側に在れるように‥‥‥‥と。
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