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0078★吸血と快楽

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 蒼珠は、改めて朱螺を見あげて聞く。

 「あのさぁ‥‥‥さっきも聞いたけどぉ‥‥‥‥
 吸血鬼の眷属になったりしないか?」

 『眷属か? それは どんな状態のことをそう言うのだ?
 私に理解(わか)るように説明してくれ』

 朱螺の言葉に、小首を傾げた蒼珠は‥‥‥。

 「えぇーとぉ‥‥疑似吸血鬼って言えばイイのかな?
 吸血鬼と同じように、元同族の人族を襲って血を啜るんだ
 そんな風になったりしない?」

 蒼珠の不安に、朱螺はなんだそんなことかと、くすっと笑う。

 『私が吸血して そんな状態になったりはしない
 ただ 私もそういう吸血行為には 慣れてないから
 牙を食い込ませる時に 少し痛みをともなうかもしれん』

 朱螺の答えに、蒼珠は首筋をくいっと晒して言う。

 「あっ‥じゃ、良いよ‥‥‥半死人状態になって‥‥‥
 人族を襲う存在にならないなら‥‥‥
 少しくらいの痛みなら平気だ‥‥‥
 俺の血が朱螺の役に立つなら、啜れば良い
 朱螺と俺は《契約》している、運命共同体なんだから‥‥』

 自分に首筋を晒した蒼珠に、朱螺は双眸を再び細める。
 蒼珠が自分にしめした信頼に、朱螺は歓喜しながら、その白い首筋から鮮血を啜る為に、牙を食い込ませる場所を指先で選び、少しきつく口付け、目印を付ける。

 蒼珠は、指先で撫でられ、チュッと口付けられて、俗に言うキスマークを付けられたことに気づき、独り赤面する。

 うわぁ~‥‥そういう場合じゃないって‥わかっていても‥‥‥
 なんか、すっげぇー赤面モノな感じ‥‥‥でも‥‥‥‥
 朱螺に首筋に口付けを受けても、怖い感じは無いな

 軽い口付けによる反応を見て、朱螺は安心する。

 〔ふむ この反応なら 大丈夫そうだな〕

 『では ここからもらうぞ 覚悟は良いか?』

 朱螺の問いに、蒼珠はコクッと微かに頷く。
 蒼珠は覚悟を決めて双眸を閉じ、朱螺が飲みやすいようにと、更に喉を反らした。

 その受諾の姿勢を確認した朱螺は、口付けで印しを付けたソコに、一切ためらうことなく、長く伸びた管牙(かんが)をズブリッと食い込ませた。
 管牙(かんが)を食い込ませるのを少しでもためらうと、蒼珠に余分な痛みを与えてしまうことから、朱螺は一切ためらわなかった。

 その瞬間、蒼珠は、どこかでぷつんっという皮膚の破れる音が聞こえたが、朱螺が言うほどには、首筋に痛みを感じていなかった。
 朱螺の喉が、口腔に溢れ返った鮮血を嚥下する為に、ゴクリと鳴る。

 蒼珠の首筋から《生命力》が満ちている新鮮な血液を啜り、朱螺は喉を鳴らして飲み込む。

 朱螺に血を啜られ、一度に大量の血液を失ったことにより、蒼珠はスゥーっと意識が遠のく。
 同時に、蒼珠は首筋から全身へ、えもいわれない快楽がジンワリと広がるのを感じた。

 ‥えっ‥‥うっそぉ‥‥‥なんか‥すげぇ~‥‥
 気持ちイイ‥‥たまんねぇ‥‥‥‥

 首筋から全身へと広がった快楽が指先まで訪れた時、蒼珠は歓喜の波に飲まれ、自覚することなく絶頂を味わい、腰を大きく震わせて射精していた。

 蒼珠が吸血の副産物である快楽を感じて、射精することを予測していた朱螺は、牙を食い込ませる寸前に、蒼珠のモノをやんわりと包み込んでいた。

 蒼珠が吐き出した《精》を手のひらで受け止めた朱螺は、そのまま手のひらで《精》を吸収する。

 手のひらで味わった《精》が持つ純枠な《生命力》に、内心で舌舐めずりしながら、口腔に溢れ返った鮮血が持つ《生命力》を舌先で堪能する。

 至極美味な美酒‥‥鮮血と《精》の2つの体液‥‥を、飲み干した朱螺は、これまでに、黄封砂漠を渡るために消耗した《魔力》が、急速に満たされ行くのを感じた。

 必要な分の鮮血を吸った朱螺は、蒼珠の首筋から管牙を抜きき、陶然とした面持ちで呟く。

 『これで《結界》を補強出来るな‥‥‥
 砂嵐が止めば あのサンドワームの群れも散る
 ‥‥‥が 少し飲み過ぎたか?

 加減が判らぬのは 我ながら困ったもんだ‥‥‥‥
 流石に 初めての行為は勝手が判らんな
 蒼珠、大丈夫か?』

 心配そうに自分をみつめる朱螺に、蒼珠は薄目を開けて頷く。
 全身の骨が快楽に溶けてしまったかのように気だるく、力が入らないのだ。

 「なんか‥躯がだるい‥‥それに‥‥‥‥‥
 さっき血を吸われた時、すげぇ~気持ち良かった」

 半分陶酔の口調で答えていた蒼珠は、朱螺の背後に蠢く《結界》の外に集まった超巨大なサンドワームの群れを見てしまう。
 そこに集まった超巨大なサンドワーム達が《結界》に向かって、次々と口を開き襲いかかって来るのを見て、小さく叫ぶ。

 「‥‥ヒッ‥アッ‥ウッ‥‥‥」

 蒼珠は、蒼白になってジタジタともがき、その恐怖心から、無意識に朱螺の腕の中から逃けようと足掻く。
 蒼珠の様子に、背後を振り返った朱螺は、好戦的に嗤う。

 『フン 素直に 砂嵐と共に消えれば良いものをっ‥‥‥‥
 良かろう 我が《魔力》によりて 結晶化させてくれるわっ」

 蒼珠を腕に抱いたまま、蒼珠を抱えていない方の腕が上がり、2本に揃えられた指の先が淡く銀色に輝き始める。
 同時に、蒼珠達を包んでいた《結界》が音もなく解かれる。

 《結界》が消失した瞬間、いっせいに襲い来る超巨大なサンドワームに向かって、朱螺の指先から溢れて、淡い銀紫の珠を作っていたソレが弾ける。

 その刹那、キラキラとしたモノが、まるで霧雨のように超巨大なサンドワームの群れに静かに降り注ぐ。

 金粉とも銀粉ともつかない、不可思議なキラキラした輝きの粉が触れた場所から、超巨大なサンドワームが、次々と水晶で出来た彫像のように結晶化して行く。

 すべてのサンドワームが結晶化し終わった頃、何時の間にか、吹き荒れていた砂嵐は再び治まり、辺りに静寂が戻っていた。






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