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0077★蒼珠の価値

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 口籠もる蒼珠に、朱螺は首を傾げる。

 〔なんか どこかで聞いたことはあるな
 あれは 何時で どこの種族だったか?
 いや その前に 蒼珠の誤解をとかねばならんな〕

 『フム‥‥‥たしか 邪鬼属の数部族に
 そんな習性や能力を待つのが居たな

 銀製で出来たモノが苦手とは聞いたことはないが‥‥‥
 吸血の習性があるのは 確かに居るぞ』

 「えっ‥‥マジで‥‥そんなモンいるの?」

 『マジ?』

 「本気でって、意味」

 言葉の違いと、ひとつの単語に対して持つ多重の意味に、朱螺は自分達の種族や、この世界の人間族や人族の者とは全然違う、蒼珠に改めて興味を持つ。

 『ふむ‥‥面白い‥な‥‥‥‥‥っと‥‥‥‥』

 《結界》が、再び激しく揺れる。

 朱螺と蒼珠は、ほぼ同時に《結界》の外を見る。

 『げっ』

 「げろぉ‥」

 ほとんど同じような言葉を吐いた朱螺と蒼珠は、顔を見合わせる。

 なぜなら《結界》の外では、先刻現れた巨大なサンドワームよりも、更に超巨大なモノが、群れで‥‥‥。
 団体様ご案内とばかりに、誰かに先導されたかのように出現し、蠢いていたからだ。

 どれくらいいるか判らないほど、更に増えたサンドワームに、朱螺は舌打ちする。

 〔これは まずいな 予想外の大きさだ
 このままでは 《結界》が持たないかも知れない〕

 苛立つ朱螺に、蒼珠は背筋を這い上がった嫌悪感と、心をどす黒く染める不安に、再び朱螺の首筋にギュッとしがみ付く。

 「しゅ‥朱螺‥‥怖いっ‥‥‥」

 超巨大なサンドワームの襲来に、流右に怖がることを恥ずかしいと思う余裕もなく、蒼珠は朱螺に恐怖をか細く訴える。

 蒼珠に縋られた朱螺も、現在の状況を苦々しく思っていた。
 この黄封砂漠は、ただ渡るだけでも、魔族の体力や《魔力》を激しく消耗するのだ。

 その上で、異世界の人族である蒼珠を護っているので、消耗する《魔力》の量も半端じゃない。
 朱螺は一瞬のためらいを見せたあと、蒼珠に言う。

 『蒼珠 このままでは 私達は生き残れない』

 冷静な口調で、淡々と言う言葉に、蒼珠ははっとして朱螺の顔を見あげる。

 「‥‥‥えっ‥‥やっぱり‥‥‥あんなに居たら
 朱螺でも逃け切れないの?」

 蒼珠の言葉に、朱螺は言葉で飾ることなく、ただ頷いて、正しい認識を口にする。

 『通常の砂漠で出会ったサンドワームなら 
 多少骨は折れるが 撃退するのは そう難しくない

 だが ここは〈封土〉の中に在る 黄封砂漠だ
 その身に保有する《魔力》が強ければ強いほど
 強い制約を受ける

 その上で 体力も《魔力》も通常の砂漠より
 遥かに消耗する量が多いのだ
 だが 私達にも利点はある』

 「利点?」

 『ああ ここが 黄封砂漠の中に点在する
 制約の空白地帯ということと‥‥‥‥
 蒼珠 お前が私の腕の中にいることだ』

 朱螺の言葉に、首を傾ける。

 「俺がいること?」

 『そうだ 人族の お前がいることだ』

 「どんな意味が有るの?」

 『消耗した体力も《魔力》も お前が補充出来るからだ』

 「補充?」

 『ああ 人族のお前の体液ならば‥‥‥
 私にとっては なんでも滋養になるな

 特に お前の《精》などは
 消耗した体力や《魔力》を補うことの出来る

 《精》が 一番理想的な滋養となる体液なのだが‥‥‥
 今は 蒼珠を楽しませてやる余裕がないからな‥‥‥
 お前は 性的なことが怖いのであろう』

 「うっ‥うん‥‥怖い‥‥シたことないし‥‥
 その《精》以外で‥有効な手段はないのか?」

 蒼珠の言葉に、朱螺は双眸を細めてから、その首筋を無意識にみつめながら言う。

 『《精》以外で 一番の滋養となる体液は 鮮血だ
 もちろん 唾液も涙も滋養にはなるが‥‥足りない

 今 一番理想的な量を 簡単に手に出来る体液は 鮮血だ
 お前の体液を‥‥ 鮮血を 私に与えてくれるか? 蒼珠』

 やっぱり‥《精》はちょっと無理だからなぁ‥‥鮮血かぁ‥‥‥
 神無月の血って 少しは一般的な人達より役に立つかなぁ?

 そんなことを考えながら、蒼珠はこくっと頷く。

 「朱螺が望むなら‥‥‥でも、どこから採るの?」

 蒼珠の素朴な質問に、朱螺は無意識な求めから、その首筋を指先で撫でる

 『やはり 首筋から欲しいのだが 厭か?
 首を咬まれるのは 嫌悪するか?』

 先刻の会話で、蒼珠がこだわっていたので、朱螺も少しだけためらう。
 蒼珠は、今の危機から脱出する方法と、朱螺の心情と行為の危険性を考えてしまう。







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