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0054★異世界の住人1
しおりを挟むそう、五感のすべてを共有したまま味わった、性交時の生の快楽と感触のすべてを‥‥‥‥。
逃れる術の一切ないまま、男に抱かれる感覚を、聖樹はすべて思い出してしまったのだ。
襲いくる身の毛もよだつような、おぞましい感触をやり過ごすために、聖樹は自分を抱き締めて、その場でうずくまる。
それと同時に、明宏に強制的に、排泄させられた時にあじわった羞恥と屈辱。
なにひとつ抵抗出来ないまま、性器や肛門をもてあそばれ続けた時にあじわった慟哭と、無力感がまざまざとよみがえる。
記憶という名のパンドラの箱の奥深くに、その都度、無理やり沈めたはずの記憶と感覚のすべてが、今、ここに引き摺り出され、たえきれなくなった聖樹は、うずくまったまま、うめく。
‥‥ぐぅぅっ‥‥くっ‥っう‥ぅ‥‥ぃ‥やだっ‥いやだぁぁぁぁ‥‥‥
聖樹は、ラオスがロン・パルディーアに《精》を求められ、それに応えて、その全身を丁寧に愛撫された感覚を思い出し、総毛立つ。
そう、女の秘華を、オスの楔で深く貫かれた時にあじわった、身の毛もよだつようなおぞましい感覚までが、鮮明に思い出される。
同時に、明宏が聖樹の躯におこなった数々の恥辱の行為までが、押し寄せる波のごとく、次々と聖樹を襲う。
「‥っ‥‥くっそぉ‥‥ぁぁ‥思い出すなっっ‥あんなこと‥忘れるんだっ
‥‥‥あんな男のことなんて、忘れるんだっ‥あの男がやったこともっ‥‥
‥‥‥ぜんぶ‥‥‥記憶から‥消去するんだっ‥クッ‥‥‥‥
ぃやだっ‥‥ぁあぁぁぁ‥‥イヤだぁ‥‥だ‥れ‥か‥‥‥助けてっ‥‥‥」
全身に、男の手のひらや舌が、淫猥にはいまわり、躯の奥をオスの楔で拓かれ、貫かれ、抽挿を繰り返された時の全身が総気立つような嫌悪感がよみがえる。
その感覚と同時に、ロン・パルディーアがあじわった、歓喜のすべてまでが、リアルによみがえる。
双方の忌まわしい記憶が、素肌に染み着けられた感触が、聖樹を苦しめる。
躯に残る感触と記憶や精神をかき乱された聖樹は、うずくまったまま無意識に助けを求めた。
精神的な鍛錬というモノをしたことのない聖樹は、たやすく衝動や感情に振り回され、父・聖から言われた言葉を忘れてしまう。
その乞い願うという行為が、危険であると認識していても‥‥‥‥。
聖樹は、足元からはいのぼり、全身を締め付けるような、おぞましさに耐え切れず、狂気に陥り掛けながらも、自分を救ってくれる者を強く望んだ。
そんな聖樹に、悪戯好きの【運命の女神】が用意したモノが、もう直ぐソコまで迫っていたりする。
そんな、かなりデンジャラスな救済が用意されているとは知らない聖樹は、躯のうえをはう男の手のひらや唇の感触というリアルな幻影に悩まされ。
精神まで侵食する感覚に、聖樹は、悲痛に心から叫ぶ。
‥‥グゥ‥‥‥ウッ‥‥‥‥気が‥狂いそうだ‥‥
あの感覚が‥全然‥消えないっ‥‥‥誰でも良い‥‥助けてくれっ‥‥‥
この感覚に呑まれたら‥‥‥おかしくなっちまいそうだ‥‥‥‥
聖樹は、双眸をきつく閉じて、血が滲むほど唇をかみ締めて、その感覚に耐える。
「‥うっ‥っ‥‥くっ‥‥ぅ‥‥ぃ‥やだっ‥思い出すなっ‥‥くっ‥‥」
忌まわしい、記憶という名の水底に引きずられ、まさに狂気に溺れる寸前という状態の聖樹に、人ならざる者の声が掛かる。
『‥‥ドウシタ? 少年ヨ ナニヲ呻イテイル 気分デモ悪イノカ?
コンナトコロデ 独リデ 衣服ノヒトツモ身ニ着ケズニ
観タトコロ ナンノ装備モナイヨウダナ 驢馬モ居ナイヨウデハナイカ?
‥盗賊ニデモ襲ワレタカ? ‥‥ゥン? ‥‥‥‥ソレトモ 入浴中ニ
〈妖精ノ悪戯〉ニデモ 引ッ掛カッタカ? ‥‥? 少年ヨ?』
ひどく耳触りの良い声音の問い掛けに、おぞましい感覚に意識のすべてを呑み込まれる寸前だった聖樹は、閉じていた双眸を無理矢理こじ開けるように開く。
そこには、足首まで隠れるような長いフード付きのマントを被った男?が立っていた。
自分に掛けられた声から、聖樹は、相手が男だと判断した。
途端に、聖樹は自分の中の孤独感が、潮が引くようにすぅ~と引いて行くのを感じた。
えっ? とぉ~‥‥今‥なんて言ったんだぁ? 〈妖精の悪戯〉?
‥‥‥じゃなくてぇ‥‥‥誰だ? 男だよな‥‥たぶん‥‥‥‥
それにしても、すっげぇ~‥‥メッチャ‥良い声って言うんだろうなぁ~
すっげぇ~‥‥耳触りの良い声‥‥‥くっそぉ~‥‥気色悪いよぉ‥‥‥
躯のうえをはう‥‥手のひらや舌の感触が、全然消えねぇ‥‥‥‥
‥‥っ‥もう‥‥あぁ‥‥たえらんねぇ‥‥ダメだぁぁ~‥‥うぐっ‥‥
自分を見上げながらも、全裸でうずくまるようにして、ガタガタと震えている聖樹に、彼はフードを外して、再度問い掛ける。
『震エテイルヨウダガ 気分デモ悪イノカ?』
フードを外した、とぉ~っても見目麗しいが、どう見ても、人間とは思えない存在が、乗り物らしき不思議な生き物の背中からストッと砂漠に降り立つ。
うわぁ~‥‥すげぇ~‥‥真紅色の髪‥‥マジで、鮮血のような真紅‥‥‥
綺麗だなぁ~‥逆光で、瞳の色は判らないけど‥‥体格もかなりイイよなぁ
‥‥見るからに、スピード重視のスレンダーでしなやかそうな体型‥‥‥
う‥うらやましいかも‥‥俺‥筋肉‥薄くしか付かないからなぁ‥‥はぁ~‥
きっとこういうのが、女が喜ぶ究極の理想体型なのかも?
‥‥‥連れている生き物は、なんだろう? ‥‥角がある馬? 一角獣?
ユニコーン? ‥じゃないよなぁ‥‥さすがに‥‥無理があるよな‥‥‥‥
それに、どう見ても、乗り手‥‥‥乙女じゃ無いし‥‥‥‥
‥‥額の中央に、1本角だけだったら、変異型のユニコーンで通るけど‥‥
耳の外に、湾曲した双角まで有るモン‥‥それに、足は馬の蹄じゃないし‥‥
足のカタチって、猛獣のモノだよなぁ‥‥猫科じゃないよなぁ?
どっちかって言うと、犬科の四肢だよなぁ‥‥‥‥ああ‥そうだっ‥‥‥
ボルゾイって言う犬種の‥ロシア犬に、こいつ良く似ているんだ‥‥‥‥
身体を大きくして、角を3本生やしたような姿って言うのが一番近いかな?
もしかして、コレがこっちの馬なのかな? 騎獣とでも呼べばイイのかな?
そのまま男は、不思議な生き物の手綱を引いて、自分を見上げるだけで、ひと言も喋らないで、震えながらうずくまる聖樹の側に寄る。
聖樹が、男を人間じゃない者だと思ったことに理由はない。
単純に、髪の色合いと雰囲気から、そう思っただけである。
いわゆる、本能から来る直感が、そう聖樹に告げていたのだ。
が、その本能が、同時に、生き残る術が間近に現れたことを、聖樹に教えていた。
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