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0049★三度目の精神だけ異世界へ‥受け入れがたい感覚2
しおりを挟む彼女は、自分の身に降りかかった様々な事柄を、自分の都合の良いように解釈し、その意識を、そのつど自分の居る環境に合わせて、変換させて生きて来たのだ。
ただ、すべて、自己保身のために、その精神を正気に保つために、必要ないと判断された記憶は、そのつど、綺麗に消去されていた‥‥‥。
が、それすら、ロン・パルディーアの意識にはカケラも残らないのだ。
聖樹は、歓喜するロン・パルディーアの追想から流れて来る情報に晒される。
彼女の躯に堕ち、すべての感覚を共有している状態で、聖樹は、今までの彼女の人生も追体験させられる。
‥‥うえぇぇぇぇ~ん‥‥ラオスの手のひらの感触が気持ち悪いよぉ‥‥‥
あうぅ~‥‥マジ気色わるぅ~‥‥‥うげぇぇ~ぞわぞわするぅぅ‥‥‥
聖樹は、あまりの気色悪さに、意識を流れてくる記憶へと無理矢理向ける。
‥でも‥‥ふ~ん、こいつが‥‥この女性の結婚相手なのかぁ?
皮膜タイプの翼を持った‥‥見た感じ‥‥筋肉自慢みたいなゴツイ男‥‥‥
彼女の感性では、こんなのが格好良い男なのかなぁ?
‥‥よく理解ンないけど‥‥‥‥
と、記憶の中に浮かぶ男をもっと観察しようと、意識を向けようとした瞬間に、いじられる感覚が、いきなり聖樹の中へと入ってくる。
あうぅぅぅ~‥‥‥っ‥‥気持ち悪いよぉぉぉ~‥‥‥
‥‥‥‥なんでっっ‥俺がこんな目に‥‥いやだっ‥‥くそっ‥‥‥
なんか‥‥な‥んでも‥イイ‥‥‥意識を‥これから離すんだっっ
躯をリアルにいじられる感覚に身もだえながら、聖樹はロン・パルディーアが追想した記憶に縋るしか無かった。
魔に属する龍種族といっても、形態は様々である。
そして、普通は他の龍種族との婚姻は、あまり歓迎されないモノである。
だが、この時、2つの龍種族は、とても長い間、何世代も、その広大な地域を巡って争っている関係にあったのだ。
そのため、長き争いをここで終結させる意味も含めて、両龍種族の長達は、この2人の婚姻を奨励したのだ。
争っていた地域に、2人の住処を用意し、両種族を統合し、その地域を受け継ぐ資格を有した者、大地との〈契約の子〉の誕生を待っていた。
‥‥‥っ‥うん? 〈契約の子〉って なんだ? ‥‥あっ‥もしかして
これって重要? ‥この女性の腹の子が〈契約の子〉ってことか?
それを面白くないと思う者がいても不思議はなかったのに、どちらの龍種族も、2つの種族の間の子の受胎に、狂喜乱舞して警戒を怠ってしまったのだ。
それは、あっと言う間の出来事だった。
ロン・パルディーアの番である飛竜王ロン・ウルグーリアが敵に捕らわれ、2つの龍種族は、敵となった妖魔族に、根絶やしを宣告されたのだ。
襲われた二つの龍種族は、千々に逃け惑った。
その中で、まだ妖魔族に捕らわれていないロン・パルディーアと御腹に宿った御子を、命をとして護ろうと、我が身を犠牲にした者達はたくさんいた。
その長大な身を大きく引き裂かれ、半身という半死半生にされたロン・ウルグーリアの無残な姿に、身籠もっている彼女は、声を押し殺して耐えた。
自分の腹に宿った、我が子の為に‥‥‥‥。
創始以来、交わったことのない2つの龍種族の【運命】を握って産まれて来る我が子のためなら、ロン・パルディーアは、他の男に身をまかせることも厭わなかった。
そして、傷だらけになりながら、その身すべてで護ってくれているラオスを愛しいとも思った。
だから、ためらうことなく、ロン・パルディーアはラオスのモノに手を伸ばす。
自分と我が子に《精》を与えてくれる器官に‥‥‥‥。
聖樹は、ロン・パルディーアの回想に引きずられ、今までの人生を追体験し続ける。
それは、まるで映画か何かを臨場感たっぷりで、手に汗しながら見ているようだった。
そこでは‥‥‥‥厳しくて優しい両親に見守られて育つ‥‥自分?
たしかに、龍種族だけど‥‥‥種族の違う男に恋して‥‥‥‥。
気も狂わんばかりの恋情に振り回される‥‥‥。
愛しい男との〈情交〉‥‥両種族の間の子を受胎するという幸せの絶頂‥‥。
‥‥‥‥初めての妊娠‥‥‥それによる歓喜の波‥‥‥‥。
‥‥一転して‥‥‥受胎の祝儀の最中に‥‥‥妖魔族の襲撃‥‥‥。
‥‥‥‥愛しい男を‥突然‥‥力で奪われ‥‥‥晒された無残な姿‥‥‥‥。
‥‥‥我が身を引き裂かれるような、驚愕‥‥‥‥。
そして‥‥‥‥正気を失うことも出来ないような、現実。
‥‥‥‥心胆からの慟哭‥‥‥‥。
短時間のうちに味わったロン・パルディーアの人生に、聖樹は身震いする。
信じらんねぇ‥けど‥‥そんだけ好きな男の子供なら産みたいよなぁ‥‥‥
それに、これは‥‥不倫って、言葉は当てはまらないよなぁ‥‥‥
腹の中の子供を育てるのに《精》が必要なのも理解(わか)ったし‥‥‥‥
妊娠出来る期間が、極端に少ないうえに‥産める数も決まってるし‥‥‥‥
‥‥‥‥別の龍種族の男かぁ‥‥‥‥
この婚姻だって、無理を押して道理を無理矢理引っ込めたって感じだしなぁ
‥‥‥でも‥‥なんだろう? ‥何かスゲェ~違和感があるんだよなぁ‥‥
違う種族の男っに恋愛してるってところは、全然違和感ないんだけどさぁ‥
‥‥‥そのあとが、目茶苦茶‥‥変な気がするんだけどぉ‥‥‥
そう、なんかどこかツギハギだらけのような物語りを観てるような感じが
するんだよなぁ‥‥‥‥
ロン・パルディーアの回想に、どうとは言葉で言い表せない違和感を感じる中で、聖樹は雄大に空中を泳ぐ龍の姿に、どこかで似たような姿を見たのを思い出す。
あぁ‥そ‥うだ‥‥‥どこかで見たことがあると思ったら‥‥‥あの龍‥‥‥
俺の躯に‥‥彫られている刺青に似てるんだ‥‥‥‥
‥‥あの明宏と名乗った男の、所有の烙印‥‥に‥‥‥っ‥‥
ようやく思い当たった聖樹が納得するのとほぼ同時に、聖樹は躯の奥を太く堅いモノで割り拓かれる感触を味わう。
それはロン・パルディーアが感じているラオスの熱い楔の感触であった。
‥‥グゥ‥‥ぃっ‥‥いやだぁぁぁぁ‥‥‥ぃや‥‥やめろぉぉぉぉ‥‥‥
細い香木で、悪戯程度にしか躯の奥を拓かれたことのない聖樹には、それは衝撃だった。
やめろぉ‥‥いやだ‥助けて‥‥‥ひぃ‥あ‥ラオスの‥‥ぅあぁぁ‥‥‥
‥‥‥‥モノが‥‥躯の中に‥入って‥くるぅ‥‥‥あぁぁぁ‥‥‥
こんなの‥‥いやだぁぁぁ‥‥‥‥ぐぅ‥‥‥た‥えらんねぇ‥‥‥
ロン・パルディーアの内に精神だけ堕ちた聖樹は、躯の感覚を共有している状態なので、彼女が受ける刺激すべてを、唯々ともに享受するしかなかった。
‥‥うわぁぁぁ‥‥助け‥て‥‥誰か‥止め‥‥ンなモン‥‥‥
うえぇぇぇ‥‥ひっ‥‥んなの‥気持ち悪いだけだっ‥‥助けて‥‥誰か‥
感覚をさえぎる術のない聖樹は、男に躯を侵される嫌悪感に身震いする。
が、聖樹の壮絶な嫌悪感をよそに、ロン・パルディーアは躯の最奥を灼熱の喫で拓かれ、深く銜え込む充実感にうっとりとする。
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