異世界に引っ越しする予定じゃなかったのに

ブラックベリィ

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002★現実逃避していたら、大地震アラームが………

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 私の二つ下の弟は、父さんそっくりの顔立ちだったから………。
 元父さんや叔母さん、お祖母さんやお祖父さんに可愛がられていたわねぇ………私とは雲泥の差。

 でも、私は曾祖母ちゃんには、可愛がってもらったから、そこまでは辛くなかったわ。

 それに、曾祖母ちゃんの持っていたアクセサリーは………。

 『あのね、舞ちゃん、このアクセサリーは、私が持っているって、誰も知らないから、あげるわね。内緒よ』

 って、にこにこ笑って、その宝石箱ごと貰ったから………もちろん、誰にも内緒のまま。

 子供心にも、曾祖母ちゃんに貰ったアクセサリーを、絶対に取り上げられないようにって、必死で隠したのよねぇ~………。
 悩みに悩んで、結局は曾祖母ちゃんの住んでいた離れの縁の下に…………。

 でも、それから、たった数か月で、逝っちゃって………。
 曾祖母ちゃんが逝っちゃったコトが悲しくて、寂しかったわ。

 お葬式の後に、お祖父さんやお祖母さん、父さんと叔母さん、お祖父さんの妹の大叔母さん達の家族が家にやって来て、財産相続でちょっと揉めていたようだった。

 曾祖母ちゃんは、弁護士さんに遺言状を預けていたらしく、みんなブツブツ言いながらも納得したようだった。
 私や母さんにも、現金を残してくれたから、有りがたく相続した。

 下の弟や従兄弟姉妹、大叔母さんの親族の子供達は、何も残されなかった。
 ただ、私が曾祖母ちゃんの子供の頃にそっくりだったので、財産を残されるのも有りだろうというコトで、すんなりと貰えた。

 これは、大叔母さんが、賛成してくれたからだと、後で母さんから教えてもらった。
 ちなみに、大叔母さんは、お祖父さんより多額の現金を残されていたので、私や母に寛大だったのだろうと思う。

 それに月に一度は、曾祖母ちゃんに会いに来る大叔母さんは、私にやさしかったしね。

 『離れに母さんを閉じ込めるようにしているなんて、兄さんってば相変わらず、義姉さんの言いなりなのね』

 『嫁と姑の関係を拗らせない為には、有る程度離れた方が良いのよ。それにね、今は、舞が、何時も、傍に居るから寂しくないわ』

 『そうね、母さんは、言い争うコトが苦手だったものね。舞ちゃんは、良い子ね。これからも、母さんの傍にいてね』

 私の頭を撫でて、お小遣いやお土産、誕生日やクリスマスのプレゼントまでもってきてくれたのは、嬉かったなぁ~。
 大叔母さんは、弟には何ももってこない人だったから、それもうれしかったんだと思う。

 誰だって誰かの特別になりたいから……。

 それと、母さんは私の半額も無かったので、誰も文句を言わなかったらしい。
 
 確かに財産というモノを貰ったコトは嬉しい。
 それだけ私を大事に思っていてくれたから………。

 でも、庇ってくれる曾祖母ちゃんが居なくなった。
 月に一度は、顔を出していた大叔母さんは来なくなった。

 その結果、人目を気にする必要がなくなって、私に対する小言が苛めに、苛めが虐めに代わって、このままじゃ虐待されるって………。
 びくびくしていたら、母さんが、父さんに離婚を申し出ていたんだよねぇ。

 あっという間に、離婚が成立したんで、子供心にも驚いたコトを覚えているわ。
 後で母さんに聞いたら、父さんが不倫していたから、それなりの慰謝料は貰えたけど、子供を分けたんだからって、養育費は貰えなかったって……。

 『でも、さっさと離婚したかったから、ごねたりしなかったのよ。離婚調停が長引いたら、舞が虐待されそうで、怖かったから……』

 それを聞いたとき、母さんは私をあんまり庇ってくれなかったけど、見守ってくれていたんだってほっとして泣いたのよね。
 恋愛結婚だったけど、色々とあったんだろうなぁ~って思って、自分からは何も聞かなかったけどね。

 なんて、現実逃避するのはやめて、この荷物をどうするか考えるしか無いわね。
 通学路にあったから、毎日空気の入れ替えとかできたけど、これからは、それができなくなっちゃう。

 モノによっては痛むってわかっているけど、空調の利いたトランクルームって高いんだよねぇ。
 それに、曾祖母ちゃんや妙子さん、法子さんから貰ったアクセサリーや宝石をどうしよう……。

 なんて思っていたら、独特なヴィーヴィーってスマホが鳴り響き始める。
 これって、大きな地震のアラームじゃない……ヤバイ。

 私は、慌てて、トランクルーム(コンテナ1個丸ごと借りていた)のドアを開けた。
 閉じ込められたら、大変なコトになっちゃうからね。

 そして、飛び出したそこには、あり得ない光景が見えた。

 えっとぉ…なんで、草原が見えるの?

 思わず後ろを振り返ると、そこには、トランクルームがあった。

 が、しかし、その後ろには、こんもりと茂った森が見える。
 これって、あり得ないでしょう?









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