妖魔戦輝

ブラックベリィ

文字の大きさ
上 下
2 / 17

002★秘められた神託

しおりを挟む


 地球という一つの大きな生命が保有している、障壁と言う名の保護膜は、第三次大戦によって、あちこちに傷を負い、幾つもの綻びを作っていた。

 その大きすぎる衝撃によって、不可視の空間を隔てている保護膜のような障壁に、幾つもの裂傷を作ってしまったのだった。
 大半の傷口は、さほどの大きさもなく、時間さえ経てば、傷口が癒えるように自然と修復されるモノだった。

 ただ、そんな小さな傷口だとしても、異空間に棲む不定形の妖物や魔物などには忍び込む絶好の入り口となっていた。
 勿論、その障壁と言う名の保護膜の外には、あまりにも悪辣過ぎてその魂が穢れ落ちたモノも数多存在していた。

 地球と言う惑星が保有する障壁によって、多くの生命にとって害悪となるモノから隔離されていたのだが、その障壁が傷付いたコトで、容易に侵入することができるようになってしまったのだ。

 そして、今もまた、その小さな傷口から、水が滲むように現実世界へと忍び込むモノがいた。
 侵入を試みるモノは、侵入の障害となる質量のある肉体と呼ばれる器を持たないモノも多くいた。

 いわゆる、霊魂のようなモノだ。
 ただし、その性質は大半が邪悪なモノだった。

 知能が有る生き物に憑りつき、争いを起こして怨嗟や悲哀を糧とするのだ。
 名付けるならば、ゴーストやスピリッツ、スペクターと呼ばれるモノに分類されるだろう。
 最初に、保護膜の小さな傷口から侵入して来たモノは、そういうモノだった。

 突然の第三次世界大戦によって、安穏とした日常を奪われ、荒んだ精神に陥っている者など、かっこうの餌食となったのは言うまでもない。
 化学兵器による戦争被害が直接ない地域でも、食料不足などがあちこちで起こっていた。

 勿論、日本と呼ばれる国も、政府制作によって食料自給率が最低値を低空飛行しつづけ、海外からの輸入食料に頼っていただけに、それは顕著に現われていた。
 何故なら、化学兵器によって、海が減少し、乾き切った陸地が増えたコトによる弊害だった。

 第三次世界大戦は、多くの穀倉地帯を消滅させていたのだ。
 勿論、ガソリンなどの元となる原油採掘所など真っ先に破壊した為、延々と消えることの無い火炎が産まれ、いまだにきえるコトなく燃え続けているのだ。

 当然のこととして、そう言う場所は乾き切り、大地から水が失われ、自然と植物が消滅して行った。
 戦争によって、海外の物資や情報を得られなくなったが、それでも、まだ、日本という国の国土の大半は、何故かほとんど破壊されることなく残った。

 第三次世界大戦が始まる十数年前、他国の血に穢されずに済んだ血統から産まれた巫女姫が、神降ろしによる神託を賜っていたのだ。

 肥大した欲望から、遠からず第三次世界大戦が引き起こされるだろう
 現在の言いなり外交では、その未来は避けられないだろう
 残念なコトに、欲望に塗れて自国を裏切る者達は増え続けるだろう

 海は穢れ激減し、乾いた大地が増大し、多くの人々は餓え渇くだろう
 穢れを撒き散らす兵器によって、星を覆う保護膜は無残に傷付けられるだろう
 無数の傷口から、多くの妖物や魔物など、異なった世界のモノが侵入するだろう

 異世界のモノが多く混じり、醜い争いがとどめもなく激化するだろう
 人類も環境適応し【異能】を発現する者が次々と現われるだろう
 だが、選民意識と主義主張が合わず、争いは消えないだろう

 同時期に、異世界の肉体を伴ったモノが増えるだろう
 人類には抗いようの無い、強大な【力】を持つモノが次々と降臨するだろう
 そして、人類は本当の意味での絶望を知るだろう

 もはや絶望しか残されていないような神託の最後に、巫女姫に降りた神はパンドラの箱の底にあるモノを告げる。

 暗黒の時代が訪れる時、穢れ無き血筋の者が数多く生き残っていたならば
 強大な【力】を有するモノを、魅了する者が現われるだろう
 その時を創る為に、八人のこころ清き者を集めよ

 さすれば、我が【力】を降ろし、大八島を覆う災禍を退けようぞ
 我を産みし者達が創造せし大地と、妹が子孫の末裔ならば守ろうぞ

 その姫巫女が存在したがゆえに、日本と言う国は本当の意味での第三次世界大戦の戦争被害と言うモノは、第二次世界大戦の半分も無い程度ですんだのだった。

 ちなみに、追記するならば、国産みの夫婦が産んだ第一子は、おっとりでのんびりで穏やかな性格をしていた為、第一次&第二次世界大戦時には、深い眠りの底にいたのは内緒の話しである。
 





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...