妖魔戦輝

ブラックベリィ

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002★秘められた神託

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 地球という一つの大きな生命が保有している、障壁と言う名の保護膜は、第三次大戦によって、あちこちに傷を負い、幾つもの綻びを作っていた。

 その大きすぎる衝撃によって、不可視の空間を隔てている保護膜のような障壁に、幾つもの裂傷を作ってしまったのだった。
 大半の傷口は、さほどの大きさもなく、時間さえ経てば、傷口が癒えるように自然と修復されるモノだった。

 ただ、そんな小さな傷口だとしても、異空間に棲む不定形の妖物や魔物などには忍び込む絶好の入り口となっていた。
 勿論、その障壁と言う名の保護膜の外には、あまりにも悪辣過ぎてその魂が穢れ落ちたモノも数多存在していた。

 地球と言う惑星が保有する障壁によって、多くの生命にとって害悪となるモノから隔離されていたのだが、その障壁が傷付いたコトで、容易に侵入することができるようになってしまったのだ。

 そして、今もまた、その小さな傷口から、水が滲むように現実世界へと忍び込むモノがいた。
 侵入を試みるモノは、侵入の障害となる質量のある肉体と呼ばれる器を持たないモノも多くいた。

 いわゆる、霊魂のようなモノだ。
 ただし、その性質は大半が邪悪なモノだった。

 知能が有る生き物に憑りつき、争いを起こして怨嗟や悲哀を糧とするのだ。
 名付けるならば、ゴーストやスピリッツ、スペクターと呼ばれるモノに分類されるだろう。
 最初に、保護膜の小さな傷口から侵入して来たモノは、そういうモノだった。

 突然の第三次世界大戦によって、安穏とした日常を奪われ、荒んだ精神に陥っている者など、かっこうの餌食となったのは言うまでもない。
 化学兵器による戦争被害が直接ない地域でも、食料不足などがあちこちで起こっていた。

 勿論、日本と呼ばれる国も、政府制作によって食料自給率が最低値を低空飛行しつづけ、海外からの輸入食料に頼っていただけに、それは顕著に現われていた。
 何故なら、化学兵器によって、海が減少し、乾き切った陸地が増えたコトによる弊害だった。

 第三次世界大戦は、多くの穀倉地帯を消滅させていたのだ。
 勿論、ガソリンなどの元となる原油採掘所など真っ先に破壊した為、延々と消えることの無い火炎が産まれ、いまだにきえるコトなく燃え続けているのだ。

 当然のこととして、そう言う場所は乾き切り、大地から水が失われ、自然と植物が消滅して行った。
 戦争によって、海外の物資や情報を得られなくなったが、それでも、まだ、日本という国の国土の大半は、何故かほとんど破壊されることなく残った。

 第三次世界大戦が始まる十数年前、他国の血に穢されずに済んだ血統から産まれた巫女姫が、神降ろしによる神託を賜っていたのだ。

 肥大した欲望から、遠からず第三次世界大戦が引き起こされるだろう
 現在の言いなり外交では、その未来は避けられないだろう
 残念なコトに、欲望に塗れて自国を裏切る者達は増え続けるだろう

 海は穢れ激減し、乾いた大地が増大し、多くの人々は餓え渇くだろう
 穢れを撒き散らす兵器によって、星を覆う保護膜は無残に傷付けられるだろう
 無数の傷口から、多くの妖物や魔物など、異なった世界のモノが侵入するだろう

 異世界のモノが多く混じり、醜い争いがとどめもなく激化するだろう
 人類も環境適応し【異能】を発現する者が次々と現われるだろう
 だが、選民意識と主義主張が合わず、争いは消えないだろう

 同時期に、異世界の肉体を伴ったモノが増えるだろう
 人類には抗いようの無い、強大な【力】を持つモノが次々と降臨するだろう
 そして、人類は本当の意味での絶望を知るだろう

 もはや絶望しか残されていないような神託の最後に、巫女姫に降りた神はパンドラの箱の底にあるモノを告げる。

 暗黒の時代が訪れる時、穢れ無き血筋の者が数多く生き残っていたならば
 強大な【力】を有するモノを、魅了する者が現われるだろう
 その時を創る為に、八人のこころ清き者を集めよ

 さすれば、我が【力】を降ろし、大八島を覆う災禍を退けようぞ
 我を産みし者達が創造せし大地と、妹が子孫の末裔ならば守ろうぞ

 その姫巫女が存在したがゆえに、日本と言う国は本当の意味での第三次世界大戦の戦争被害と言うモノは、第二次世界大戦の半分も無い程度ですんだのだった。

 ちなみに、追記するならば、国産みの夫婦が産んだ第一子は、おっとりでのんびりで穏やかな性格をしていた為、第一次&第二次世界大戦時には、深い眠りの底にいたのは内緒の話しである。
 





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