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第10章 レギオン・カイドールの苦悩 レギオン視点

112★そして、私も先例に倣う

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 もっとも、護衛を兼ねて付き合わされた私は、めっきり疲れた。
 でも、1番疲労したのは、師匠のイグナシオ様だったなぁ~………。
 それでも唯一の皇太子を冒険者にした伯父上の為に、師匠はぶつぶつ言いながらも我々のクエストに付き合ってくれたなぁ~………。

 足手まといを連れてのクエストは、本当に良い経験だった。
 ブランデルがいなくなり、師匠もいなくなった後のダンジョン探索は楽しかったなぁ。
 シルビアーナも、今はその冒険を楽しんでいるのだろうか?

 ああ、こんな茶番はさっさと終えてお前を探しに行きたいよ、シルビアーナ。
 ディアと一緒に、シルビアーナを捕獲して、親子3人で………。
 勿論、ラインハルトハは次期皇太子としてお勉強だ。

 嗚呼、それでもなんかむかっとするな………。
 ここは、ちょっと嫌がらせしてやるか?
 私は、冷たく嗤って答える。

 「ここには、魔物のスタンピートの引き金になる《難攻不落の深淵の絶望のダンジョン》と《永遠の牢獄ダンジョン》の2つがあるコトをお忘れかなぁ? ひ弱な者がシルビアーナの夫候補に名乗りを上げるなど、話しにもならぬわ。心身ともに強健な者こそ相応しい。アーダベルト、そう思うだろう?」

 私が話しを振ると、ルトは人の悪い笑顔を浮かべて答える。

 「陛下の仰る通りです。陛下と私達も先帝ブランデル様と一緒に、彼のダンジョンに潜り、冒険者として魔物を狩りましたから……あの時は、ご迷惑を掛けましたね師匠」

 くすくす人の悪いコトを言うなぁ~……ルトにしては、旨い言い方だ。
 無能とは言わないが、皇帝として統治能力があった伯父上と違うと扱われていたブランデルが、ダンジョンに挑戦していたとここで言うか……くっくく。
 しかも、前回のスタンピートの英雄イグナシオ師匠に話しを振るか……。

 師匠は、戦神アーレイス神殿の大神官長だったから………。
 常々師匠は………。

 『例え、皇帝や皇太子であろうと、己自身で戦えなければ敬うに値しない。
  勿論、皇子や皇女であろうと足手まといにならない程度の力は身に付けるものだ』

 と、公言する人だから………。

 私も言われたなぁ~………。

 『帝国の盾であり剣であるカイドール侯爵の嫡子レギオン殿、
  貴方は現皇帝アレクサンデルの妹君を母に持つ、第2位皇位継承権保持者です。
 そして、皇太子ブランデル殿下は凡庸な男です。

 いつ何時に、失敗を犯し帝位を追われるかも知れない御仁です。
 その時に慌てないように、貴方は何事においても、修行するべきなのですよ』

 そう、何かにつけて、私は言われていた………。
 まっ…その通りになってしまったけど。
 今にして思えば、予言ぽかったなぁ………伯母上の差し金かな?

 帝王教育も受けたし、冒険者として魔物を倒すクエストに何度も行かせられた。
 それに付き合って、私達の安全を確保してくれた師匠は、面倒くさいし気苦労は多いしで疲労したろうなぁ~って、今ならわかる。

 いや、ブランデルと一緒に冒険者をやる前に、散々訓練させられて良かったと実感したよ、あの時も………。
 足手まといが居るとい無いでは、自由頻度がどれだけ違うか実感した。

 だから、護衛の近衛騎士達、将軍に仕える騎士達、彼らが私を護るという一仕事をしないで、自由に動けるだけの戦闘能力は必要だと実感した。
 始祖も師匠も、正しいと思う。

 さて、アルビナ帝国の皇太子は、師匠の嫌味にどう反応する?

 などと取り留めの無いコトを考えていた私の前で、師匠が黒く笑う。

 「アルビナ帝国の皇太子殿下、魔物のスタンピートを超えて、魔王が出現し暴れ周り世界が魔物に蹂躙された時、この世界を護る為に召喚された勇者と聖女がこの帝国の始祖なのです。魔王を倒した始祖達は、皇帝及び皇太子や皇子や皇女達に『我が子孫達よ、冒険者となり魔物と戦う経験を積め、皇族とは、国民を護る贄なのだから………』と言い残したのですよ。皇位継承権を持つならば、魔物と戦う能力を持つものなのです。裏を返すと、戦えない皇子や皇女に王位継承権は無いということなのですよ」

 「えっ? ………でも、それでは、継承者が死に絶える危険性があるのでは?」

 「だから、王位継承権は、成人した者の方が上だと言ったでしょう。生き残って初めて、皇位継承権が意味を成すのです」

 「そんな…では、シルビアーナ姫は?」

 「コリウスという小僧に、《難攻不落の深淵の絶望のダンジョン》に送られたでしょう? そして、神獣を従えて、こちらに連絡を寄越し、自由を求めて逃げました」

 「何故?」







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