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第10章 レギオン・カイドールの苦悩 レギオン視点
102★シルビアーナの自由を護る為に私の出来ることは?
しおりを挟む「そうだな。お前は、シルビアーナを愛し守れる男だと私は思っている」
「ありがとうごさいます」
「そこで、今は亡き伯母上セレナーデ皇太后の先見を真実とさせない為に、ここで誓いを立ててもらう」
「はい。私は、シルビアーナを監禁したり拘束したりする気持ちなどひとかけらもありません。あの呪具と廃皇太子の為に不自由な生活をしていたのだから、自由に生きていけるように手を添えたいと思います」
「さすがは、愛妻家ルトの息子、私は、お前に契約の女神ソルトアーナに誓って欲しいのだ。我が娘シルビアーナの意に染まない行為をしないと」
「わかりました。制約いたします。その代わり、私との婚約をここで正式に宣言して頂きたいのですが………」
おやおや、しっかりしている。
せめて、私からの言質が欲しいというところだろうな。
まぁ…本来なら、アルディーンが婚約者だったのだから、認めるのはやぶさかではないしな。
うむうむと良い気分でアルディーンからの言葉を聞いている私に、他国者の皇太子が口を挟んで来る。
「カイドール侯爵レギオン殿、私とシルビアーナ姫の婚姻は………」
私は、それが誰かを認識し、ふっと笑ってばっさりと言い放つ。
「アルビナ帝国の皇太子殿とシルビアーナの婚姻は不可能です」
断言した私に、一瞬絶句してから、それでも食い下がる。
「どうして?」
その問いかけを幸いと思い、私はシルビアーナが他国者との婚姻をしない理由を突き付けることにした。
「我がハイオシス帝国皇室の皇位継承権者は少ないのですよ。先代皇帝の皇后であり、現皇帝の母でもあるセレナーデ伯母上の告発により、親殺しの嫌疑がかったブランデルは皇帝の座から降ります。そして、次の帝位につくのは、私、レギオン・カイドールしかいないのです」
堂々と言い放つ私に、それはおかしいという表情で言う。
「第2皇子がいるのにですか?」
その不躾な質問に、私は嗤って答えてやる。
「第2皇子は、側室の皇子です。その側室には、皇室の血が流れていません。故に、継承権は、先代皇帝の皇妹の息子である私、その次にシルビアーナ、ラインハルト、レオンハルトの順位になります。我が国では、成人している皇位継承者が優先されるんですよ。まして、皇太后セレナーデ様の遺言もありますから………」
「まさか、シルビアーナ姫が………」
「ええ、本人が望むなら女帝になれます。そんな者を他国に嫁がせることはできません。シルビアーナの夫は、国内の貴族のみに絞られます」
そう断言しても、諦めきれないのか食い下がってくる。
「では、皇太子では無い私ならば………」
私は、余分なゴミを排除する為に、国内の上位貴族の間での不文律を口にする。
「ハイオシス帝国の皇帝には、皇位継承者に不文律の約定があります。2代続けて他国の姫が生んだ皇子を、皇帝にしてはならないってね。ただし、皇位継承権を持つ姫が皇后となるならば、皇位継承を許されるともある。ちなみに、セレナーデ伯母上は、他国から嫁した姫でした。だから、ルドルフが皇太子として認められていたのは、シルビアーナの皇位継承権のお陰だったんだ。故に婚約破棄と同時に、廃皇太子となった。これは当然の処置なんですよ。不文律を護れない者は皇位に着けない」
「うっ」
「わかっていただけたようですね。ですから、王配は、この国の人間でなければならないんですよ。シルビアーナの母ディアーナは、ソレントの王女でしたから……」
そう私が言えば、まだ、シルビアーナを諦められないらしいアルビナ帝国の皇太子殿は、1つの可能性として聞いてくる。
「しかし、レギオン殿の子息、ラインハルト殿が、皇太子となれば、シルビアーナ姫は自由になるでしょう?」
「カイドール侯爵家を継ぐ必要があるので……辺境伯爵家と侯爵家と公爵家の爵位を持つということは、皇室と同じ不文律を持つんです。ですから、他国者との婚姻はありえません」
ばっさりと言い切った、現皇帝の私に、アルビナ帝国の皇太子殿はまだ食い下がる。
「なぜ? そんな不文律に従っているんですか?」
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